先日、彼女と車でデートに行ったら、帰りの道が渋滞になっていた。
急ぎの用もなかったので、車の中で過ごしていたのだけれど、しばらくすると、僕は小がしたくなってきてしまったので、積んであった携帯用トイレに用を足すことにした。
「もう。デート中に車でするとか、ありえないんだけど。汚いから見えないようにしてよ。」
「しょうがないだろ。我慢できないんだから。お前は大丈夫なの」
「私は帰る前にちゃんとトイレ行ったから大丈夫。水も飲んでないし。この道いつも混むんだから、もっとちゃんと考えて行動しないと」
彼女に文句は言われたけど、とりあえず僕は難を逃れた。
しかし渋滞は全く動く気配がなかった。話も尽きてきたので、ラジオをつけて、ぼーっとしながら聞いていたのだが、急に彼女の好きなグループの曲が流れてきた。
「これ、このあいだ言ってた新曲でしょ」
「…」
「ねぇ」
「えっ、あぁ、うん」
いつも喜んで話題にするグループなのに、この時はなぜか無反応だった。それ以降、僕が話しかけても、彼女は一言二言返事をするだけで、話に乗ってこなくなった。
僕は彼女が渋滞で疲れたのだろうと思っていた。しかし、しばらくすると
「ねぇ、この辺にトイレないの」
と彼女が静かに尋ねてきたのだ。見ると、苦しそうな顔をしている。
「なんだよ。さっき、僕のことバカにしてたのに、自分もトイレ行きたくなったのか」
「うるさいな。ねぇ、どこかないの」
「見た感じだとなさそう。携帯トイレまだあるから、我慢できないならそれにしなよ」
「それはやだ」
「だって、まだ車動かなそうだし」
「絶対いや」
しかし、少し時間がたつと、彼女は青ざめた顔で、口を真一文字にして下を向いてしまった。
「やっぱり、携帯トイレ使いなよ。我慢したら良くないし」
「…」
「こんな時はお互い様だから」
「違うの…」
彼女は消え入りそうな声で、僕に答えた。
「…ちしたいの」
「何?」
「私、おしっこじゃなくて、うんちがしたいの」
この時初めて分かったのだが、彼女は大の方をもよおしていたのだ。携帯トイレをかたくなに拒んだのも、それが理由だった。
「ねぇ、どこか抜け道とかないの」
「いや、どう見てもないよ」
「私、ちょっと車降りて、歩いてトイレないか探してくる」
「ダメだよ。もう暗いし、それに何もないよ。ここでしなよ」
「やだそれは… それなら、我慢する…」
と泣きそうになりながら、彼女は我慢する方を選択したのだった。
しかし、もう彼女に耐える力はなかったらしい。それからすぐ、目を閉じてじっとしていた彼女の体がブルブルと震えだした。
「…」
「大丈夫?」
「…」
「ねぇ」
「お願い… ちょっと黙ってて…」
それが彼女の最期の言葉だった。
「ブビビビー」
車の中にものすごい音が響き渡ったかと思うと
「ブバッ、ブリュリュリュリュー」
と何か柔らかそうなものが、勢いよく出てくる音が、彼女のズボンのお尻のところから聞こえてきた。
彼女は現実が受け入れられないらしく、ブルブルと震えたまま下を向いていた。しかし、すぐに「うぅぅ」と声を出し涙を流し始めた。
僕はなんて声をかければいいか分からなかった。しかも、彼女が漏らした直後に渋滞が動き出し、数分走ったところにコンビニがあったのだ。
それを見た瞬間、彼女は突然「うぁーん」と大声で泣き始めた。僕はコンビニで下着やタオルを買って、彼女の後始末を手伝った。
本人には言わなかったが、いつも強気な彼女が、泣きじゃくりながら汚れたお尻を拭いている姿を見ていると、あろうことか僕はドキドキしてしまった。