私は今は都内で小さなデザイン事務所をやっています。
昔から美に対する意識が強くて地元の大学進学を進める両親の反対を押し切って上京し、デザイナーの専門学校に進学しました。
専門学校を卒業してからは巣鴨にある大きなデザイナー事務所に就職をして5年ほど下積み生活を送っていました。
本当は洋服のデザインを担当したかったのですが、絵コンテをうまく描くための経験も必要と所長に言いくるめられ、文庫本の挿し絵を担当しました。
文庫本の挿し絵は、殺人ものであればシリアスな絵を、ファンタジーものであれば夢のある絵を描くのですが、それはそれなりに楽しんで仕事が出来ていました。
仕事をしているうちに、私を指名で出版社から依頼が来るようになり、小説の挿絵の仕事が取れるようになってきたのでした。
ある日、私に突然聞き覚えのない出版社からの仕事の依頼が来たのです。
その男性いわく、私の噂を聞いてとの事でした。
当然仕事が来るわけですから悪い噂ではないと思い、心から喜んだのを覚えています。
私は早速アポイントを取り、打合せの為に意気揚々とその出版社に出向きました。
事務所はマンションの一室でした。
ドアの前で一度深呼吸をして呼び鈴を押すと、中から40代半ばの中肉中背の男性が出て来ました。
顎には無精髭が汚らしく伸びています。
『あぁ松長朋子さん?入って』
ぶっきらぼうな挨拶で、室内に招かれました。
正直、不潔で生理的に受け付けない男性でした。
『Aデザイン事務所から参りました松長朋子です。この度はお声掛けいただき…』
『あぁいいから座って』
自己紹介もさせてもらえず、異様な雰囲気を醸し出す男性でした。
指示通りに椅子に座って改めて部屋を見回すと、デスクの上は書類が山積みでしたが、床は案外綺麗にされていました。
『どうぞ』
お茶がとても客人に振る舞うとは思えないほど乱暴に応接机(?)に置かれました。
そして目の前にその男性がドカリと座ります。
『早速なんだけどね』
『は、はい』
慌てて私は返事をしました。
(やっぱりこの雰囲気好きになれない…)
私は仕事と割り切って男性の話に耳を傾けました。
『うちで扱ってるのは官能小説なんだけど大丈夫?』
私は戸惑いました。
私は性に対しては無頓着でした。
そんな私によりによって官能小説の挿し絵の依頼だったのです。
『官能小説ってわかる?』
男が私の顔を下から覗き込み、見透かすように痛いところをついて来ました。
『…エッチな…小説…?』
私は顔が真っ赤になる程恥ずかったです。
男が急に怒りだしました。
『なに?官能小説をバカにしてんの?』
私はすぐに否定しました。
『い、いえ。申し訳ございません…』
今はこの不潔な男はお客様。
事務所の威信にかけても、私の噂話をしてくれた人のためにも怒らせるわけにはいきませんでした。
『チッ!で?出来るの?出来ないの?』
私は胸がドキドキしながらも答えました。
『で、出来ます!頑張ります。』
男は手を伸ばして後ろのデスクにある書類を取りました。
『じゃあこれが報酬額だから確認して』
私は男の差し出した書類に目を通しました。
『?!』
私は驚きました。
一般的にもらえる報酬額なんかよりはるかに高かったのです。
ザッと単価3倍といったところでした。
私は足元を見られないように冷静に務めました。
『内容確認してよかったら下にサインして。ただ、その前にひとつ言っておくよ。官能小説は挿し絵が全てだ。挿し絵が読み手の心を掴むものでないと売れ行きは極端に悪くなるんだ。だから何枚でも描き直してもらうし、必要だったら指導もする。ここにそれもちゃんと書いてある。いい?』
男は契約書の文面を差しながら言いました。
私は文面などろくに読まず、プロ意識だけは高かったので、それは当然だと思って聞いていました。
私は書類にサインをしようとボールペンを手に取りました。
男が構わず話します。
『ただなぁ反対に挿し絵がばっちりハマると売上げは倍増じゃ効かないくらい増える。そこをやりがいと思ってくれたら有難い。もし、今回うまくいけば今後の単価はもっと上げてもいいと思ってる。』
私のプロ意識にフツフツと火がともり、力強く書類にサインをしました。
『じゃあ契約成立だな。よろしく頼むよ。』
男が握手を求めて来ました。
プロ意識に火をつけられた私は、生理的に受け付けないはずの男と固い握手をしました。
握手が終わると私の前にドサっと原稿のコピーが置かれました。
『これ読んで、シーンごとに思い浮かぶ情景を描いてきてくれ。ポイントはその時の女の感情が滲み出る表情だ。よろしく頼む。期限は2週間だ。』
『はい。』
私はふたつ返事をして帰ってきました。
事務所で官能小説を読む勇気のなかった私はひとり暮らしの家に帰ってから読む事にしました。
家に帰り、食事を済ませてから早速自宅のデスクの前に座り、ブツブツと独り言を言いながら読み始めました。
『小説のタイトルはと「団地妻監禁陵辱遊戯」…』
仮タイトルを読んだだけで恥ずかしくなり独り言をやめ、黙々と読みました。
最初は、あまりに淫らで女性を蔑む表現に不快感を示しつつも、途中から男に陵辱され続けて快楽を得ていく主人公の感情に憑依してしまいました。
あまりに艶かしい文章も手伝って読み終わる頃には私の股間がしっとりとしていました。
こんなこと誰にも言えませんが、私はM気質を持っているんだなぁと気付かされました…。
私は挿し絵を数十枚描いて期日ギリギリでしたが、男の元へ持っていきました。
『いかがでしょうか?』
男はパラパラと挿し絵候補を見て言いました。
『これ本当にあなたが描いたの?』
私は即答しました。
『もちろんです。お気に召しましたでしょうか。』
男はニヤッといやらしい目で笑いました。
おそらく初めて見たこの男の笑顔でした。
『初めてにしては上出来だ。これは主人公に自分を重ねたね?俺には分かっちまうんだよ。長いことやってると、その絵を描く人の感情が手に取るようにわかる。』
私はドキッとしましたが、思わず否定しました。
『い、いえ。そんな事ありません!私はプロの仕事をしただけで…』
男はフッと鼻で笑って私の言い訳を一蹴しました。
そして今度は丁寧に一枚一枚を真剣な眼差しでじっくり見ていきました。
仕事をする男の真剣な目にドキッとしました。
『うん。やっぱりなかなかの出来だ。ただ少し女の表情が弱い。特に初めて犯される時から陵辱前半までの心から嫌がる表情がな』
私は何が悪いのかを聞きました。
『どんな表情だと良いですか?』
男は真顔で私を見つめました。
『大方、前半は女性にとって不愉快な感情だけに、ノリ気がせずにただ文章を読んだろ?違うか?』
図星でした。
確かに私は最初、不快な表現を嫌い、ただ文を読んでいたのでした。
『わかりました。もう一度読んで描き直してきます。時間はいつまでに?』
男は冷たく言いました。
『だから今日だって。2週間て言ったろ?あなたは2週間たっぷり時間を使ってしまった。本来プロならもう少し早くこの時間を設定して、2週間後には完成してなきゃいけないだろ?』
返す言葉がありませんでした。
『では…今回不採用ということでしょうか?』
男はイラっとした口調で言いました。
『だから今から他をあたって描いてもらう時間もないんだよ。
』
私は謝りました。
『じゃあどうしたら…』
男が言います。
『今この場で描け。幸い気に入らないのはこの2枚だ。出来るだろ?』
私は追い詰められました。
『わかりました。ではもう一度読み直し…』
『そんな時間もないんだ。主人公の女の感情を俺が教えてやる。』
男は淡々と話し、私の腕を取ると隣の部屋に私を引っ張りました。
『ここに座れ』
訳もわからず、言われるがままに殺風景な部屋の真ん中に置かれた椅子に私は座りました。
私はハッとしました。
今回の官能小説に出てくる主人公である人妻佐知子(主人公)が陵辱された部屋のイメージにピッタリだと気付いたのです。
『フッ。さすがだな気付いたか。そうだ。あの物語はここの部屋をイメージして描かれている。ペンネームだから気づかないのも無理ないが、作者は俺だ。あんたには悪いが佐知子と同じ境遇を味わってもらう。』
私は立ち上がり、当然拒否しました。
『お断りします!こんなことされなくてもちゃんと描きます。』
男が涼しい顔で淡々と答えます。
『契約書読んだのか?今日挿し絵が出来なければ、ペナルティが発生するんだぞ?ん百万も。俺は親切心で言ってやってるんだ。』
私はペナルティについては何も読んでいませんでした。
『読んでねぇのか?だから悠長に今日持ってきたんだな?まぁあんたは何百万も払えないだろうから、俺が納期が遅れたペナルティを印刷会社とかに払うんだけどよ。その代わり、1年無償でうちの労働力になってもらう。』
男に契約書を見せられました。
(本当だ。書いてある…)
『こんな契約ありえないです』
『あり得なかろうが何だろうが、あなたは署名捺印してるんだよ。俺はちゃんと内容大丈夫か聞いたからな。こちらに落ち度はない。』
私は何も言えなくなってしまいました。
『大丈夫だ。ちゃんと描かせてやる。お前の絵の才能に本気の感情が入ったら絶対いい挿し絵になる。過去にひとりだけだ描けなかったのは』
追い詰められると悪い方向に思考がいってしまうのは私の悪い癖です。
『その方はどうなったんですか?』
男は感情なく話しました。
『ここで一年間働いたさ。まぁまともな仕事とは言えないけどな。』
私はその人が気になりだしました。
『どんな仕事なんですか?』
男は呆れ顔で言いました。
『ふぅ。弱気だなぁ。ここでの仕事はただ一つ。俺の小説の題材になってもらう。因みにそのデザイナーの名前は安藤佐知子だ。』
私は全てを悟りました。私が読んだ今回の小説はノンフィクションだったのです。
だから細かい描写がなされ、女の感情の動きもうまく捉えることが出来た。
そしてこの部屋のつくり。
全てが一線状に置かれた気がしました。
いつまでかはわからないけど、この場所で安藤佐知子さんは1年も陵辱され続けていたんだ。
私は佐知子さんのためにもこの作品を完成させなければならないという使命感にかられました。
『あの…今佐知子さんは?』
男が寂しそうに言いました。
『デザイナーをやめてAV…今はセクシー女優って言うのか?になっちまったよ。女の悦びを知っちまったそうだ。誤解がないように言っておくが、俺がその道を進めたんじゃねぇぞ。』
男の寂しそうな表情でそれは伝わりました。
きっとデザイナーとしていいものを持っていた女性だったのです。
きっと専属で自分の小説の挿絵を頼みたかったのではないでしょうか。
私は決心しました。
『私、絶対にいい挿し絵を描きます。この小説がなるべく多くの人に読まれるように…。怖いですけど、とても怖いですけど、ご指導お願いします。』
男が強い目で私を見て黙って頷きました。
私は椅子に座りなおしました。
『いいか。佐知子は嫌いな男に陵辱されるんだ。今のお前の俺に対する感情のようにな。』
男はロープを取り出し、服の上から私を椅子にくくりつけていきました。
ロープが私のDカップの胸の上下にあてられ、やがて締め付けられました。
腕も後ろにまわされて固定されます。
正面の鏡にはロープに縛られた私の姿が写し出されていました。
腕を後ろにまわされたせいか、いつもより胸が大きく見えました。
『どんな気分だ?』
『…怖いです。何をされるのか不安で。』
『そうだ。佐知子もそう言っていた。俺はこれから黙って続けるが、その都度その都度の感情を覚えておいてほしい。』
『はい…』
男は私の背後から爪先で私の乳首あたりをモゾモゾと触りました。
男には乳首が見えているかのように爪先が的確に私の乳首を捉えていました。
やがて男の手は私のロープとロープの間に挟まっているおっぱいをいやらしく揉み始めました。
私は鏡に映った自分の姿を見ました。
性には無頓着だった私の身体が中肉中背の無精髭の男に弄られていました。
とても不愉快な感情でした。
男はしばらく胸を揉んだ後で私の膝にロープをかけ、椅子の背もたれにぐるっと回し、もう片方の膝をくくりました。
鏡の中の私は、両脚を思いっきり開かれていました。
(なんてハレンチな格好…)
男は淡々と続けました。
今度は私のおっぱいあたりのブラウスのボタンを外し、乱暴に左右に開きました。
『ヒァ!』
さすがに私は小さな悲鳴をあげました。
でも縛られている私は隠すことができません
今日つけてきた紫色のブラが男の前に晒されました。
男は私の悲鳴など気にもとめず、私の背後に回りました。
そして鏡を見ながらブラのカップの下に指を入れたのです。
『ちょ、ちょっと待って…心の準備が…』
男は無情にも私のブラを上に捲り上げました。
『いやぁぁぁ』
私の乳首が露出されました。
男は、感情があるのかと疑うくらい何も語らず、無表情のまま私の乳首を中指の指先で下から弾きます。
男は相変わらず鏡を覗いていました。
なんとも言えない感覚が私を襲いました。
私は鏡の中の自分の姿を怖くて見ることができませんでした。
突然、カチャとシャッター音がしました。
私は慌てて鏡の中の男を見ました。
男は無表情に言いました。
『今の顔だ。今の顔の挿し絵が欲しい。心配するな写真はあんたに全部渡す。描く時の参考にしてくれ』
自分の恥ずかしい写真を撮られたにもかかわらず、不思議とショックがありませんでした。
おそらく男の仕事に対する真剣な眼差しの中に良い作品を作り上げようという意思が伝わってきたのだと思います。
つくづく不思議な男の雰囲気でした。
『あんた経験は?』
男が急に質問してきました。
『え?』
私は聞こえていましたが、思わず聞き返してしまいました。
『処女かって聞いてるんだ。』
あまりの唐突でダイレクトな質問に、強がることも忘れ、つい本当のことを言ってしまいました。