幼稚園の頃から人見知りで引っ込み思案だった。親としか話したくないし話せない。
小さな返事をする以外は喋らずに、相手が諦めるのを黙って待つ。クラスメイトにも先生に対してもそれで何とかなってた。
しかし4年生になったくらいから少しずつ状況が変わってきた。
人と対面すると緊張で真っ赤になって喋れない僕を、クスクスと笑う奴らが出現。
先生にさされた時は最悪で、立ったまま硬直してる僕はクラス中の笑い者になった。
そのうち、わざと話し掛けてきて笑いを取ろうとする奴。それを周りで嘲笑するギャラリーたちという状況が完成。
注意する女子もいたが、顔は笑っていて本気で助ける気なんて微塵も感じられなかった。
背が低くてガリ、そして内気。勉強はソコソコだったが超運動音痴の僕は、イジメの標的に丁度良いタイプだったんだと思う。
暴力的なイジメは無かったが、机やノートに落書きをされたり笑い者にされたりと、精神的なイジメを受けるようになった。
そして小学5年生。
クラス替えをして1学期の最初こそ平穏だったものの、またすぐにイジメが始まった。
クラスが替わったところで僕は何も変わってないし、たかが3クラスを混ぜただけなんだから当然と言えば当然の結果。
しかもイジメはエスカレートして、軽く蹴られたり叩かれたりもするようになった。
そんな状況の中、父親に強制的に連れられて訪れたのは1駅離れた空手道場。
まだ我慢可能な範囲内だったので、イジメられていることは親に黙ってた。
しかし薄々気がついていたのか、それとも単に内気な僕を心配してかは分からない。とにかく問答無用で入会させられた。
そこは顔面パンチと金的以外の攻撃は全てアリのフルコンタクト空手。
プロテクターを装着してるとはいえ、どう見ても自分より学年下の男女が本気で打ち合ってる姿にマジでビビった。
でも同時に、これを習ったらイジメてくる奴らに勝てるんじゃないかとも思えた。
それは沸き起こる闘志なんて格好の良いものじゃなく、僅かに感じた希望の光。
最初の頃は母親に付き添ってもらい、しばらくしてから1人で通えるようになった。
師範に怒鳴られながら何度も何度もやり直しさせられた挨拶も、気が付けば当たり前に声を出せるようになってた。
ー1年が経過して6年生ー
真剣に空手を習い続けた僕は、イジメっ子をやっつけてクラスの奴らを見返してやった。
・・・と、そんなことは無い。
家でも自主トレをして、かなり真面目にやってるんだが全く強くならない僕がいた。
4年生の男子といい勝負で、試しに出場した試合もボコボコの1回戦負け。
最初から分かっていたことだけど、僕には絶対に向いてないよなぁなんて改めて悟った。
でもね、それでも楽しかったんだよ空手。
内気な僕は師範から怒鳴られまくり。運動音痴な僕は皆から殴られまくり。
けど、そんな僕を誰1人として笑わない。
それどころか、アドバイスをくれたり応援したりしてくれる。
学校でイジメられ、道場では怒鳴られ殴られる日々だったが、自分の居場所と仲間を見つけられて本当に嬉しかった。
ただ結局は嬉しい気持ちだけで、性格も運動能力も改善されないまま小学校を卒業した。
僕が住んでた学区は、転校したり私立に行かない限りは同じ公立中学に入学。
近隣の2つの小学校が合わさって1つの中学校になる感じだった。
ほとんど小学校と同じ顔ぶれに、新しい奴らがプラスされた中学校。
つまりイジメる奴、イジメられる奴も当然ながら変わらない。そして学校における僕のポジションにも変化は無かった。
暴走族や不良という時代じゃないが、中学校で素行が悪くなる生徒がクラスに3~4人。
そのお陰で、イジメは小学校の頃より露骨で精神的にも肉体的にもキツくなった。
八つ当たりのように机を蹴り倒してくる奴がいれば、チョークを投げてくる奴。背後から本気の飛び蹴りを入れてくる奴もいた。
そいつらは男女の仲良しグループになっているので、面と向かって逆らえる奴なんていない。下手をすれば明日は我が身ってヤツ。
どうして空手で対抗しなかったのか、さすがに少しは強くなったと思うだろ?
・・・いや、とにかく怖かったんだ。
イジメっ子に対して怖がってるんじゃない。突き付けられる現実に恐怖してた。
全く歯が立たずに負けてしまったら、この数年の空手稽古が否定されてしまう。
それは、唯一の拠り所を無くしてしまうという意味に他ならない気がしてた。
頭にきて思わず拳を握ることもあったが、ハッと我に返って力を抜く。
イジメが終わるまで堪えてから、空手で相手を叩きのめす自分を想像して脳内勝利。それだけが僕に出来る対抗手段だった。
そしてまた、何も変えることは出来ずに1年が経過して中学2年生。
この頃になると、そこまで露骨なイジメは減ってきてた。遊びや恋愛に夢中で僕になんて構ってる暇は無いという感じ。
誰が誰を好きだとか、あの2人は付き合ってるだとか、クラスの空気になってる僕の耳にもそんな噂が聞こえてきてた。
八つ当たりで蹴られたり、時には金を取られたりもしたが、それでも気にされない時間が増えたので苦痛は軽減した。
もうこのままでいい、これ以上もこれ以下も望まない。高校に行けば終わる。そう思いながら学校生活を送ってた。
そんな状況の中、事件が起きたのは2学期始め。これが僕の中学校生活を色んな意味で激変させる出来事になった。
数学の授業中、ペチャクチャと喋ってた男子が教師に立たされて質問をされた。
そいつは僕をイジメてくる奴らの1人でクラスの人気者。夏休み明けから茶髪になってて更に調子に乗ってる感じだった。
「いやぁ、わかりましぇ~ん。」
薄ら笑いを浮かべてヘラヘラと答えた茶髪男子と、それをクスクス笑う生徒たち。
それに対して先生は、いきなりブチ切れて怒鳴り声を上げた。
「そんなウンコみてぇな頭してっから分かんねーんだろうがっ!アホが!」
一瞬で静まり返ったクラスと、真っ赤な顔をしてプルプル震える茶髪男子の姿。
授業が終わって先生が教室から出て行った直後、茶髪男子は勢い良く立ち上がった。
「マジあったーきた!ぶっ殺すぞアイツ!」
虚勢を張るようにそう言って歩き出すと、座ってる僕を見るや否や椅子ごと思い切り蹴り飛ばしてきた。
横に倒れそうになった僕は、隣の席に座ってる女子の肩を反射的に掴んでしまった。
いきなり僕の手が触れ、小さな驚きの声を発した女子は中村優香。
イジメられてはいないが、僕と似たタイプの無口で内気なメガネ女子。この時が初となる彼女との会話だった。
「ご、ごめん。」
学校で自分から女子に話し掛けたのは数年振り。その言葉は謝罪の一言。
かなり焦って謝った僕を、茶髪男子はニヤニヤと笑いながら茶化してきた。
「おいおい、わざと触ったクセに事故っぽく演技してんじゃねーよ。」
もちろんそんなことは無いし、それは茶髪男子もクラスの奴らも気付いてる。
しかし茶髪男子のその発言に、周りからも冷やかしの言葉と笑い声が上がった。
焦りと恥ずかしさから、弁解しようと振り向いて彼女を見た。
「そ、そうじゃないから、ほ、ほんとに。」
焦りまくりの噛みまくりでそう言いながら、メガネ越しに見えた中村優香の目。
・・・涙が溜まってた。
彼女も僕と同じで内気な性格。
僕に触れられたのが嫌だったんじゃなく、巻き添えで好奇の目にさらされているのが耐えられないんだと直感した。
何か熱いモノが沸き起こる感覚。
この場から彼女を助けたいとか、泣きそうな彼女を見て怒りが込み上げたとか、そういった類いのモノじゃない。
怯えた表情、溜まった涙、そして無力さ。
それはまるで自分自身を見ているような感覚で、周囲の声が聞こえなくなってた。
「まぁあれだな、お前と中村は似合ってるからアリなんじゃね?告っちゃえよ。」
ただ唯一、背後から耳に入ってきたのは、この茶髪男子のふざけた言葉と、その後の馬鹿にするような耳障りな笑い声だけ。
振り返ったその瞬間、茶髪男子の腹部に僕の拳が深々とめり込んだ。
そして2発目を打とうとした僕の目に映ったのは、教師曰くのウンコ頭の上部分。
そう、たった1発で茶髪男子は撃沈。腹を押さえて膝から崩れ落ちてた。
シーンと静まり返ったギャラリーと、拍子抜けして驚いてる僕。……そのまま瞬き数回。
「てめぇーっ!!」
どこからか聞こえた怒鳴り声、それと同時に僕は背後から掴まれて倒された。
机や椅子が激しく動く音、男子の怒声と女子の悲鳴、そして複数人による打撃の衝撃。
不思議とそこまで痛みは感じなかった。それよりも、嗚咽して膝まづいた茶髪男子の姿に驚きと興奮で心臓がバクバクしてた。
……何秒?1分くらい?
止めに入った誰かに抱き起こされた僕が目にしたのは、同じく抱き起こされた茶髪男子。苦痛に顔を歪め、泣いて腹を押さえてた。
その瞬間、それまでの人生の中で1番の大声を張り上げてる僕がいた。
「いいか!次は殺すからなっ!!」
その場にいた全員が僕に注目。ほんの数秒間、誰も一言も発しなかった。
すぐにざわめきが戻った教室と、教科書や文具を散乱させて倒れた机や椅子。鼻血で血まみれになった僕を囲むクラスメイト。
こんな状態が収まるハズもなく、数分後、次の授業でやってきた先生に見つかった。
茶髪男子と一部始終を見て知ってる奴ら数人は生徒指導室に連行。僕は保健室に連れて行かれて先生から話を聞かれた。
結果から言うと、この事件は学校と生徒という意味では大事にならなかった。
顔にアザを作って鼻血が出ていた僕は、見た目だけなら被害者。しかも先に手を出されているし、複数人にやられているという状況。
しかしどこから聞いたのか、僕が空手をやっている事を先生は知っていて、それを使ったことについては厳しく怒られた。
この機会に以前から続くイジメの事実を話そうとも思ったが、それだと対抗手段として空手を習ったと思われるので言えなかった。
そして茶髪男子やクラスの奴らが自分からイジメを告白するわけもなく、この件は生徒同士の普通の喧嘩として処理された。
結局、何も変わらない日常・・・じゃない。
それからの日常は劇的に変化した。
まず、あからさまなイジメが無くなった。
どこから漏れたのか、僕が空手を習っているのが知れわたったらしい。その結果、ちょっかいを出してくる奴がいなくなった。
これは推測だが、万が一にも僕なんかに負けてしまったらって怖さがあったんだと思う。
茶髪男子がまさにそれで、余程のショックと恥ずかしさがあったのか、この事件から3年生になるまで学校に来なかった。
そして喧嘩を知った親と道場。
家には連絡がいってるし、道場に行けば顔のアザから喧嘩がバレるのは明白だった。
まずは父親の反応。
「お前が喧嘩するなんて驚いたな。祝いに寿司でも食いに行くか?」
祝いの意味は分からないが、微塵も怒らず嬉しそうに笑ってた。そんな父親の対応に、涙を堪えながら心の中で礼を言った。
続いて道場の反応。
腫れが引くまで休むことも可能だったが、唯一の自分の居場所から逃げるのは嫌だった。
青アザの顔を見た師範は、いつも通りに稽古を開始。何も変わらない稽古だった。
しかし終了後の帰り際。
「おい!・・・で?勝ったんだろうな?」
そう聞いて僕を睨み付ける師範に、息が止まるほど驚いた。
「……お、押忍、1人に勝って、そ、その後で数人にやられました。」
ビクビクしながら答えた僕。すると父親と同じで予想外の言葉が返ってきた。
「バカ野郎!ヤルならヤルで全員ぶっ倒してこいやっ!次からの稽古は覚悟しとけよ。」
これも推測になるが、父が師範に連絡を入れてたんじゃないかと思う。
もしかすると僕がイジメられている事を父は知っていて、それを師範に・・・。
とにかく、この師範の言葉に感じた隠された優しさに、涙を堪えるのは無理だった。
「押忍!もっと稽古に励みます!」
泣きながら深々と頭を下げた。そして、二度と喧嘩に空手を使わないと心に誓った。
こうして学校生活には平穏が訪れ、空手の稽古にも一層の熱が入ることとなった。
最後まで読んでくれてありが・・・って、ここで終わりじゃない。むしろここからが本題。
過去を懐かしみながら書いていたら予想以上に長くなってしまった。(笑)
この事件で1番の劇的な変化は、イジメじゃなくて僕と中村優香の関係だった。
それは事件の翌日のこと。
帰りのホームルームが終わった直後、隣に座ってる中村優香から手紙を貰った。
手紙と言っても1枚の小さなメモ用紙を折り畳んだ簡易的なもの。
たまに不幸の手紙のようなのが回ってくることもあったが、隠すような彼女の渡し方から違う類いだと判断。
誰にも見つからないようにポケットにしまって帰宅。変な緊張をしながら部屋で開いた手紙にはこう書いてあった。
「昨日はありがとう。カッコ良かったよ。」
女子の可愛い文字。そしてこの文面。
現実と夢の狭間にいるような感覚で、フワッと体が宙に浮いた気がした。
この短文を、その日だけで何度読み返したか分からない。大袈裟じゃなく100回以上。
読んでは笑みを浮かべて部屋の中をゴロゴロと転がり回った。それほどの嬉しさ。
そして返事を書かなくてはと思い、悩みに悩んだ末に書いたのは一言だけ。
「気にしなくていいよ。」
余裕ある男らしさを演出したつもりだったが、書いてみてすぐに思った。
・・・いや違う、気にして欲しい!
これだと終わってしまうんじゃないかと、もう返事は来ないんじゃないかと考えた。
当たり前に友達がいて、普通に女子と話せた人には理解不能な心理だと思う。
そう、この手紙だけで中村優香を好きになっちゃってる僕がいた。
それから悩むこと数時間。書いてはボツを繰り返し、やっと完成したのがコレ。
「中村が泣いてたからキレちゃった。」
とんでもない勇気を振り絞り、こう書いた手紙を朝イチで彼女にソッと渡した。
授業など全く耳に入らない。
もう読んだのか、それともまだなのか、そればかり気になって落ち着かなかった。
期待と不安の中、彼女から返事を貰ったのは昼休み。家に持ち帰って手紙を開くまで、緊張で心臓が破裂しそうだった。
「泣いてたの見られて恥ずかしいよぉ。でも嬉しい。ちょっと照れちゃうけど。」
・・・喜びで心臓が破裂した。
またもや何度も読み返しては、笑みを浮かべながら部屋中を転がる僕。
昨夜よりも勇気が湧いて書いたその返事は、内気なコミュ障が変に強気になるとこうなるという見本のような代物。
「ぜんぜん恥ずかしくないよ。中村の涙があったから勝てた。ありがとう。」
当時は超カッコいい文章だと大満足。しかし今になって振り返ると、何か勘違いしてヒーローを気取ってる恥ずかしい文章に赤面。
それでもだ。何が良かったのかは不明だが、彼女との手紙のやり取りは日常になった。
1日に3通ほどの往復。楽しくて嬉しくて、そしてドキドキしながら読んで書いた。
早く学校に行きたいと思うなんて、それまでの僕からは考えられない毎日が訪れた。
しかしそんな夢みたいな楽しさは、まだまだ序の口のスタートライン。
手紙の往復を繰り返すこと約1ヶ月、人生初となるデートが決まった。
いや、デートと言っても普通に買い物。偶然同じマンガが好きで、そのグッズを売ってるショップに一緒に行こうってなっただけ。
でも僕の緊張は半端じゃなかった。片想いしてるんだから当然と言えば当然なんだが、普通の人とはレベルが違う。
そもそもだ、女子と買い物どころか男子とも行ったことが無い状態。例えるなら、初めてのおつかいで家を購入するレベル。
今まで1段も上がってなかった階段を、いきなり何段も飛ばすことになった大イベント。
それを成功させるためには、買い物に行くための買い物が必要だった。
「服と靴を買いたんだけど・・・。」
こう母親に告げると、笑っちゃうくらい目をまん丸くさせて驚いてた。
この時まで僕の服は全て母が用意。ファッションなど興味も無ければ気にする理由も無かったので特に問題は無かった。
しかし今回は違う。母が選んだ小学生の様な服装というわけにはいかない。
母から1万円を貰い、店員さんに勧められたスニーカーと、お洒落だと感じた薄手のパーカーとTシャツを購入。
あまりにもピカピカな靴だと、いかにも用意した感があるので少し汚して準備完了。週末の初デートを緊張しながら待ちわびた。
そして待ちに待った日曜日。
誰にも見つからないようにと、待ち合わせ場所は2つ先の駅だった。
その駅に到着したのは待ち合わせ時間40分前。時計を見ては、改札とトイレを行き来しながら何度も髪型をチェックしてた。
待ち合わせ10分前。背後から声を掛けられた瞬間、気絶しそうなほど驚いた。…いや、半分くらい気絶してた。
学校では1つに縛ってる髪をほどき、綺麗な黒髪のセミロング。野暮ったい制服と仰々しい鞄とは違い、少しだけ柄の入った薄グレーのワンピースに小さな可愛い肩掛けバッグ。
小柄で細身な彼女には、その全てが似合っててビックリするくらい可愛いかった。
でも1番の驚きと可愛いポイントはソコじゃない。学校とは別人の中村が目の前にいた。
「・・・今日はコンタクトにしてみたの。えっとその……変じゃないかなぁ。」
モジモジと照れて小さな声。下唇をキュッとして上目づかい。その僕を見る眼鏡を外した彼女の瞳は、ちょっと垂れた大きな目。
もちろん脳内補正があったとは思う。でも本当に、そんな彼女の容姿はどんな女性アイドルよりも可愛いと感じた。
「・・・す、すっごく可愛いよ。」
言った瞬間にハッと気付いて赤面。そして言われた中村は恥ずかしそうに下を向いた。
似合ってるとだけ言えば良かったものが、焦った結果、思ったまま口にしてしまった。
「…あ、ありがと。」
いきなり失敗、いきなり気まずい雰囲気。心の中で馬鹿だ馬鹿だと頭を殴りまくった。
内気なタイプ同士がこのスタート。電車の中と店に着くまでの会話はほぼ皆無で、やっとまともに話せたのは店内に入ってから。
互いに好きなマンガのグッズを見て、緊張が和らいで少し打ち解けることが出来た。
商品を見ながら2人で手に取ったのは揃いのキーホルダーで、目を合わせて照れ笑い。心から楽しくて幸せな時間だった。
店から出た僕たちはファミレスで食事。女子を喜ばせるような気の利いた会話なんて出来なかったが、もう心に決めてた。
人生最大の勇気を振り絞ったのは別れ際。
「あの……中村のことを好きになった。」
必死さが1周して棒読みの告白。なぜだか泣きそうな感情をグッと我慢してた。
「・・・私も好きになっちゃった。」
そう答えた中村の目には涙。それを見た僕も、堪えてた涙が溢れて零れ落ちた。
繰り返しになるが、1段も上がってなかった階段を一気に飛び越えて最上段に到達。
全く現実味が無かった僕は、彼女が出来たという事実に嬉しさよりも困惑が勝ってた。
どうしたら良いか分からないまま手紙のやり取りを続け、デートを重ねること数回。先に勇気を出したのは彼女のほうだった。
隣同士で歩いていた中村の手が僕の手に触れた。偶然かと思いきや、それは何度も続く。
ふと彼女を見ると目を逸らされた。
まさかとは思ったが、確証を得られなくて緊張しながら歩き続けるしかなかった。
すると彼女からの視線。隣を見ると、ムスッと不機嫌そうな表情を作ってる。
「・・・鈍感。」
そう呟いて握ってきた中村の手の感触は、小さくて薄べったくて女子の手というのを体感。…超緊張して手汗がヤバかった。
そのまま歩き続けること数分。
ずっとこうして繋いでいたいが、いよいよ手汗が気になってしまう。もう本当は離したいと思ってるんじゃないかと不安が過る。
「……て、手汗が凄くてゴメン。なんかその…嬉しいんだけど緊張しちゃってさ。」
苦笑いして謝まると、握っている彼女の手に力が入るのを感じた。
「私だって…そ、その…ヒロ君と同じで手汗すっごいもん。でも、ずっと繋いでたい。」
何に驚き嬉しかったかと言うと、中村が僕を名前で呼んだくれたこと。それまでは互いに名字で呼び合ってた。
見ると彼女の顔は真っ赤。手を握った時よりもずっと赤く染まってた。
「俺も…ゆ、優香と手を繋いでたい。」
呼ばれるよりも呼ぶほうが何倍も恥ずかしいと感じた。その最初の1歩を踏み出したのも、手を握ってきたのも彼女が先。
嬉しさを感じつつ、自分は男子なのに弱気で勇気が無くてダメダメだと自己嫌悪。
しかしこの日、僕の勇気を見せる場面がやってきた。場所は帰宅前に訪れた公園。
そこは優香が住んでるマンションの裏にある小さな公園で、最後は必ずソコで少し話してからバイバイしてた。
マンションの裏なので人目につかず、敷地内なので住人以外は入ってこないという穴場。
季節は12月、時刻は夕方5時くらい。もう辺りは真っ暗で、かなり冷え込んでた。
いつもはベンチに座って他愛もない話をするんだが、この日は無言。でも、だからと言って喧嘩してるという意味じゃない。
互いに何も言わず、ギュッと手を強く握り合って肩を寄せ合ってた。
いくら恋愛に鈍感な僕だって、カップルの次のステップくらいは知ってたし、それを互いに意識してるのも気付いてた。
しかしそれは僕の思い過ごしって可能性もある。もし拒否されたらというのが頭を過り、凄まじい恐怖と緊張に襲われてた。
何気なく隣に座る優香を見た。すると彼女は何も言わずに僕を見てきた。
「・・・ゆ、優香。」
先に僕が口を開けたのは勇気。そしてその後の言葉は当然のように続いてた。
「……好きだよ。」
震えながら顔を近付けていくと、少しアゴを上げて目を閉じた優香。目指す先にあるのはピンク色の薄い唇。
「…ヒロ君、私も大好き。」
ポツリと呟いた彼女の言葉を聞いたと同時に2人の唇が触れ合った。
すぐに離した軽いキス。それでも唇同士が重なった瞬間、優香の柔らかい唇の感触をしっかりと感じたファーストキスだった。
帰宅した僕は久々に部屋中をゴロゴロ。
キスを経験した嬉しさと、彼女の柔らかい唇を思い出しては転げ回った。もちろんその夜は、大興奮しながら手紙を書いた。
デートの別れ際に照れながらするようになったキス。でもそんなのは最初の数回だけ。
すぐに、学校外で会った時には当たり前にキスをするようになってた。
学校の奴らには隠れて付き合ってる2人。遊びに行く場所も金銭面にも限度がある。
そしてそもそも2人はインドア派。その結果として、どこにも行かずに部屋で一緒にいるのが1番だと、この頃になって気が付いた。
最初、家に呼ぶのは大緊張。それは僕だけじゃなく母も同じだったようで、わざわざケーキまで用意して迎え入れてた。
優香が部屋に入った途端、男臭かった僕の部屋に優しい香りが漂ってクラ~ッとした。
シャンプーの良い香りは常に感じていたが、それにプラスして女子特有の匂いと言うのかな。とにかく甘くてフワッとした匂い。
1階には母がいるものの、人目を気にする必要の無い室内。そしてこの甘い香り。
外でのキスとは全く違った興奮を感じて、何度も何度も唇を重ね合った。
どこにも行かずに僕の部屋で会い、ゲームをしたりアニメを観ながらキスを繰り返す。それが2人の基本のデートになった。
学校では互いに全く喋らず、2人だけになると封印が解かれたかのように仲良く話す。内気な僕らにはそれが本当に幸せだった。
しかし欲求に限りは無い。
性に疎かった僕でも、こんな事を続けていれば次の欲求が湧いてくる。
週刊誌やアニメにある少しエッチな作品。
主人公の男子が転んだ拍子に女子の胸を触ったり、アソコに顔を押し付けたりと、そんなエッチな描写がオナニーのネタだった。
しかし、それまでは別世界の話しだと思っていたシーンが、今は不可能なことじゃない。
そう考え出したら欲求は増幅するばかりで、2次元のエロで満足していたものが、リアルな3次元に興味津々という状態。
その興味はセックスという最終の行為じゃなくて、もっと初期段階。女子の裸、つまりオッパイやマンコに向けられてた。
トイレに向かう優香を目で追って、これから彼女は下半身を露出させるんだよなぁなどと考えて想像してしまう。
女子のアソコはどうなってるんだろうか、優香にも陰毛が生えてるんだろうかと。
そしてトイレに入った優香はオシッコをする。…もしかしたらウンチかもしれない。
アイドルはウンコしないなんて幻想を抱いてるほどアホじゃなかったが、彼女が自分と同じように臭い物体を排出しているなんて、どうにも現実味が湧かなかった。
とにかく女子の体、女性器、優香の全てを見たい知りたい触りたいの思春期全開の僕。
でも、そんな望みは叶わない。
勇気を出して迫ってみようかと何度も考えたが、彼女に嫌われる自分を想像すると怖くて何も出来なかった。
女子と付き合ってる奴なんて少数のハズ。それなのにイジメられっ子だった僕には彼女がいて、しかもキスまで経験済み。
それで充分じゃないか、いや、むしろ幸せ過ぎだろう。この幸せを僕のエロい欲求で壊していいわけない。絶対に後悔する。
そう言い聞かせて我慢した。
しかしだ、2人で部屋にいると色々なハプニングエロが起きる。厳密に言うと、それを探してる僕がいるという感じ。
下にある物を取ろうと手を伸ばした時に襟元から見える、ブラジャーに包まれた小さな肌色の2つの膨らみ。
ちょっとした拍子に目に入る、太ももの奥の可愛いらしい下着。そして、いちゃついて触れ合う肌と肌、唇と唇。
会うたびにこんな調子なもんだから、僕の欲求は我慢の限界を迎えてた。
そんな悶々とした状態で迎えた春休み。
「あーもぉ~ヒロ君つよすぎぃ。」
対戦ゲームで負けた彼女は、そう言って仰向けのまま倒れ込んだ。
「じゃあ優香が罰ゲームね。」
負けたらクスグリの刑というルール。
仰向けになってる優香の腰に横から手を当ててクスグリ始めた。
「やァァダメ~っ!もう無理ぃストップぅほんとストップぅ無理ぃ~っ。」
体を捻って悶えながら、僕の手を掴んで必死に止めようとする優香。それでもクスグリ続ける僕の、その目線の先は彼女の下半身。
スカートが捲り上がって水色の下着が露出。それまでのチラッと見えたというレベルじゃなくて完全に見えちゃってる。
しかもそれだけじゃない。彼女がクスグリから逃れようと体を捻るたびに、太ももが開いて股の部分が何度も見え隠れしてた。
中央の内側には、優香のアソコの形を浮かび上がらせた1本線の筋がクッキリ。その部分に僕の目は釘付けになってしまった。
そのまま20秒ぐらい。ササッとスカートを戻されてしまい、もしかして見ていたのがバレたかもと思ってドキドキ。
その後の彼女は普通だったので安心したが、僕の心は普通じゃいられなかった。
あの中身を見たい。優香のアソコを見たい。優香とエッチなことをしたい。
この出来事が、嫌われるかもという恐怖に欲求が勝ることになった大きな要因の1つ。
近いうちに必ずエッチをすると決めた僕は、本屋に言って恋愛マニュアル本を購入。目的はただ1つ、セックス講座。
超緊張しながらコンドームを買い、親が寝静まった後で装着の練習。
コンドームを被せたチンコを見た僕は、いよいよエッチの現実味が湧いてきて大興奮。オナニーで2個ほど消費しといた。(笑)
自分で言うのもアレだが僕は基本的に真面目で、予習、復習をちゃんとするタイプ。
購入した恋愛マニュアル本のセックス講座を暗記レベルで熟読し、その日に備えた。
ちなみに、その本を読んでるうちに興奮してオナニーした回数は半端じゃない。
知識、順序、マナーを覚え、残るは場所の確保だけ。ただ、これが1番の難題だった。
他に選択の余地は無いので当然ながら家ってことになるんだが、基本的に母がいる。
買い物なんかで出掛けることはあっても、長くてせいぜい1時間程度。
経験済みのカップルなら充分な時間かもしれないが、初体験でそれは無理。マニュアル本にも前戯は長くと書いてあったし…。
なかなかチャンスが訪れないまま3年生になり、僕らはクラスが別れてしまった。
もともと学校では話さなかった2人。でも、顔を会わせる機会が減ったのは本当に寂しくて不安になった。
それは優香も同じだったようで、会える日は出来るだけ長く一緒にいたいと言って悲しそうな顔を僕に見せてきた。
そこで僕が提案したのは、土曜日の午前中にある空手の見学。
それまでは稽古が終わってから会っていたんだが、見学に来れば互いに顔が見れるし、終了後すぐに一緒にいられる。
「うん、すっごく見たい!」
この提案に、優香は嬉しそうに微笑んで目を輝かせてた。そんな彼女を見て、僕も幸せな気持ちになって微笑み返した。
しかしだ、幸せの余韻は一瞬で消滅して、残ったのは激しいプレッシャー。優香にカッコいいところを見せなきゃいけない。
優香が道場の見学に来たのはその翌週で、ゴールデンウィーク初日の土曜日。
知り合いが見学に来るとだけ、前もって師範に伝えてあった。それが女子だとも、ましてや彼女だとも伝えていない状況。
そんな中で優香が登場。師範を含め道場生全員の注目が彼女に集まった。
ここで2人の内気コミュ症スキルが発動。
シャドーをやってた僕はガチガチになり、優香は漫画のように両手足を一緒に出して歩きながら椅子に腰かけた。
そんな状態で始まった稽古。この日は中高生の時間帯で、来ていたのは僕を含めて5人。みんな小学生の頃からの長い付き合い。
特盛の緊張をしながらの稽古。そんな中、最初に疑問を感じたのは基本動作の後にやったミット打ちだった。
普段なら一通りの単発打ちをやってコンビネーションになるが、この日は上段回し蹴りが永遠と続く。そしてそれは僕の得意技。
それが終わると続いて組み手。カッコいいところを見せるにはココが1番のポイントだが、この場にいる全員が僕よりも強い。
最初の相手は高校2年の女子高生。その強さは全国レベルで、道場に通う女子の中で最強。
しかし始まった途端に感じたのは、それを確信出来る程の違和感。
手数も少なければ、当たった瞬間に素早く攻撃を引いて体重を乗せてこない。
そうすると、パーン!と威勢の良い音は鳴るものの威力は半減以下になる。
逆に僕の攻撃に対しては苦しそうな表情。本来ならガードされるか耐えられて激しい反撃を食らう場面なのに…。
次の相手も、そして次の相手も同じだった。
格闘技の素人が見たら、強い攻撃を受けているにも関わらず、怯まずに僕が攻撃しているように見えるだろう。
・・・そしてこの時の素人は優香。
稽古が終わり、優香が道場から出たのを見計らってペコリと僕は頭を下げた。
「……ビール3杯な。」
こう言ってきたのは師範。
「ディズニー行きたーい。」
続いて最強の女子高生。
その他に、ブランドのバッグ欲しい、彼女が欲しい…などなど、色々な注文を好き放題に言ってゲラゲラ笑ってた。
空気を読んで察してくれた師範と仲間たち。この皆の優しさが、後の展開にどれだけ影響したのかは分からない。
ただ、そんなのは関係なくて、純粋に大きな感謝をしたのが紛れもない僕の事実。
持ってきてた私服に着替えて、近くの公園のベンチに2人並んで座った。
この日の昼食は、優香が作ってきてくれたお弁当。料理は苦手と言っていた彼女が作ってくれた初めての弁当。
緊張した面持ちの優香に見守られながら、喜びと期待でフタを開けてみた。
1つは白米。そしてもう1つの箱。
・・・山盛りエビフライ。
たしかに、好きな食べ物を聞かれたのでエビフライとは答えたが、これは圧巻。
もう見栄えなどは気にせず…いや、パセリが1つあったので少しは気にしたのかもしれないが、とにかくもうエビフライ。世界中のエビフライ弁当の頂点に位置するレベル。
「プッ、これは…。」
堪え切れずに吹き出した僕。
「な、なんで笑うのよぉ!」
そんな僕をポコポコと殴ってきた優香。後から聞いたら、自信が無いから僕の好き物だけを入れようと決めたらしい。
「ごめん、ごめん、すっごく美味しそう。」
泣きそうになってる彼女を横目に、ソースをかけて食べてみると最高に旨い。
母が作ってくれるのは細いエビフライだが、これは太くて身がしっかりしてる。
きっと高いエビを買ったんだろうなぁなんて思いながら感激して食べた。
隣では優香が自分のために作ってきたオニギリを食べながら、旨い旨いと言って弁当を食べてる僕を嬉しそうに見てる。
初エッチのことなんて頭から消えてしまうくらいの幸せな時間。でも不思議なもんで、そういう日ってのがあるんだと実感した。
初の道場見学。師範も仲間も気を使ってくれただけで、まさか僕が初エッチを目論んでいるなんて気付いてるわけがない。
そしてこの日が初となる手作り弁当も、エッチの野望とは全く関係の無い試み。
それなのに、運気上昇なのか歯車が上手く噛み合ったのかは知らないが、家に着いた僕に母は出掛けて来ると言い出した。
なんでも、婆ちゃんとこのテレビと洗濯機の調子が悪いから、婆ちゃんを連れて電気屋に行って来るとのこと。
近いうちに行って来るとは聞いてたが、それが今日だとは全く知らなかった。
夜までには帰ると言い残して出ていった母。そして2人きりになった僕と優香。
頭から消えていた初エッチの野望が一気に甦り、心臓がバクバクと高鳴った。
婆ちゃんの家に行き、そこから電気屋に行ってテレビと洗濯機を購入。婆ちゃんを家に送るだろうから、母の帰宅までは軽く4時間。
時間は充分にある。しかし2時間も3時間も無駄にするほどの余裕は無い。
そんなことを考えながらゲームの続きを2人でプレイ。もちろんゲームに集中なんて全く出来ず、とにかく切っ掛けを探してた。
・・・何も出来ないまま1時間経過。
このままゲームをしてる場合じゃないのは分かっちゃいるが、タイミングが分からない。
付き合って半年以上。キスは経験済み。部屋には2人きりで母は不在。この状況を優香はどう思ってるんだろう。
「今日のヒロ君てば下手っぴ~。」
嫌われる不安よりも欲求が勝ったハズだったが、ゲームを楽しんでる彼女の横顔を見るたびに、そればかりを考えてしまう。
そんな状況の中、切っ掛けは全く予期しない思わぬところから始まった。
トイレから戻ってきた優香と入れ替わりに部屋から出ようとした僕。1階にお菓子を取りに行くつもりだった。
すると、それを引き留めるように僕のシャツを掴んできた優香。
「ヒロ君どこ行くの?」
何やら焦って必死な表情を浮かべてる。笑ったり泣いたり照れたりと、色んな彼女を見てきたが、これは初めての顔。
「えっと、お菓子持ってこようかなって。」
その表情の意味がまるで分からずに、そう素直に答えたんだが彼女は離してくれない。
「・・・トイレも行く?」
恥ずかしそうな上目使いで僕を見てる。
この時点では、彼女が必死に僕を止めてる理由も、焦って質問してるその意味も全く理解していなかった。
「行かないけど……なんで?」
こう聞くと、彼女は困った顔をしてピョンピョンと小刻みに飛び跳ねて懇願してきた。
「いいからぁ!ね?トイレ行っちゃダメだよ?ね?絶対だからね?ね?お願い!」
・・・あっ、ウンチしてきたってこと?
ここでやっと気が付いた。アイドルだって優香だって出るモノは出る。それを現実として認識した瞬間だった。
「そんなの気にしなくていいのに。」
焦ってる彼女が可愛くて、クスッと微笑んでそう言うと優香は膨れ顔。
「気にするもん!匂いしたら死ぬほど恥ずかしいし、ヒロ君に嫌われるかもって…。」
胸がキュンとなった。なんかもう、自然と彼女の顔に両手を添えてる僕がいた。
「嫌いになるわけないじゃん。優香の全部を愛してるよ。ずっと一緒にいたい。」
初めて使った愛してるって言葉。言った僕自身が信じられない歯の浮くような臭い台詞。
押し付けるような強いキスをして、ゆっくりと舌を入れていった。
「……ぁ……………。」
初めてのディープキス。僕の舌が優香の柔らかい舌に触れた。少し動かすと、彼女の舌も控えめに動いてきた。
チロチロと当たる互いの舌先。
しばらく続けて舌を戻そうとしたら、それを追っ掛けるように彼女の舌が伸びてきてビックリ。まさか優香から求めてくるなんて…。
ハッとした感じで舌を引っ込めた優香は、目を開けて照れた表情で頬を膨らませた。
「も、もう、ヒロ君の意地悪。」
こういうキスを優香も求めてる。
それを確信した僕は、また強く唇を押し付けてキスを始めた。
離しては重ねてを繰り返して長時間のキス。2人とも小さく息を荒げながら、互いの舌をピチャピチャと絡ませ合った。
ネットリして柔らかい舌の感触と2人の唾液が混ざり合う感覚は、愛情とエロさの両方を存分に感じさせてくれキス。
言うまでもなく僕は大興奮でチンコは勃起状態。優香はどうなんだろうと頭を過ったが、こうなったらもう止まるわけがない。
優香の後頭部に手を回して、そのまま座布団に向かってゆっくり押し倒した。
目を開けた優香は驚いて不安そうな顔。そんな彼女に覆い被さるようにしてキスをすると、目を閉じてキスに応えてくれた。
どうなんだろうか、このまま先に進んで良いんだろうか、優香はOKなんだろうか。
キスを続けながら暗記したマニュアル本が頭に浮かぶ。本によると、ゆっくりと首筋や耳を愛撫すると書いてあった。
意を決して緊張しながら恐る恐る首筋に移動。石鹸の優しい香りのする優香の細い首に軽く舌を這わせてみた。
すると口を開いた優香。それはとても小さくて震えるような声だった。
「……わ、わたし、そういう知識ぜんぜん無いよ。ヒロ君は知ってるの?」
そう聞かれても返答に困る。本で勉強したのは知ってるうちに入るのか?
そんなことよりも、不安そうにしてる彼女の気持ちを楽にさせてあげたいと思った。
「・・・実は、優香にカッコ悪いとこ見せられないからコレで予習しといた。」
そう答えて見せたのは例のマニュアル本。
これを知られるのはカッコ悪いが、変に見栄を張るよりも良いんじゃないかと判断。
そして彼女の雰囲気から察する限り、焦らずに少しづつ進んで行こうとも思った。
もちろん残念な気持ちもあるが仕方ない。優香の気持ちを無視して強引には出来ない。
「ヒロ君こんなの読んでたんだ。」
それを手に取ってパラパラとページを見た優香の顔は、みるみるうちに笑顔になって、ついに笑いを吹き出した。
「フフッ、なんかヒロ君らしいな。……じゃあもうヒロ君に全部任せちゃうよ?」
笑ってくれたことによる安堵感と同時に、驚いて耳を疑った彼女の言葉。
「えっと……い、いいの?」
優香はコクリと小さく頷いて、恥ずかしそうにこう言ってくれた。
「わたしもヒロ君としたいもん……。」
とてつもない感動と喜び、そして緊張。
服を脱いだ僕を見て目を閉じた優香。そんな彼女を見てゴクリと唾を飲み込み、ゆっくりとまた覆い被さった。
首筋、耳たぶを愛撫しながら、震える手で上半身の服を脱がせていく。
女子ってこんなに華奢なのかと驚くほどの狭い肩幅と細い二の腕、そしてオッパイを包んだ薄ピンク色のブラジャーが露出。
「……あ、あの、小さくてゴメンね。」
そうポツリと呟いた優香。たしかに小さな胸だけど、そんなのは関係なかった。むしろ小柄な彼女に似合ってて可愛いとさえ思う。
キスをしながらの片手じゃ全く無理で、両手を使ってやっとブラジャーを外した。
「……優香、すっごい綺麗だよ。」
お世辞じゃない。本当に綺麗だと感じた。
ペタンコとは言わないが、優香の膨らみかけの小さなオッパイは、乳輪も乳首も小さくて綺麗な薄ピンク色。
以前に見たことのあるアダルト雑誌のモデルの胸とは大違いの代物だった。
緊張しながら抱き締めてキス。肌と肌、そしてオッパイが密着して興奮は最高潮。
優しく軽く…優しく軽く…優しく軽く…。
オッパイを触る時の注意点を心で唱え、本当に軽~く触れてみた。
・・・や、柔らかい。
プニュッと指が沈んだオッパイの、予想以上の柔らかさにビックリ。
キスをしながら軽く揉むと書いてあったが、揉むほどのサイズがないし力の加減が全く分からない。もし痛がったら困ってしまう。
焦るな落ち着けと自分に言い聞かせ、これは無しにして次のステップに進むことにした。
乳輪の周りから円を描くように舐めて乳首に近付いていく。乳首に到達したら舌先で軽く舐めた後、口に含んで転がすように舐める。
まさにマニュアル本どおりやった。あてに出来るのはコレだけなんだから仕方ない。
「……んっ………ぁ……。」
すると乳首に舌先が触れた瞬間、ピクッと体を反応させて優香から小さな声が漏れた。
しかも書いてあったとおり、乳首がツンと起って大きくなってるのを確認。
半信半疑の僕だったが、ここでマニュアル本様に大感謝。完全に信用した。
ピクッ…ピクッ…と反応する優香に興奮しながらスカートを脱がす。お尻を浮かせてサポートしてくれたのでスムーズにいった。
これで優香は下着1枚。僕もズボンを脱いでパンツだけの姿になった。
痛いくらいに勃起したチンコで膨らんだパンツ。かなり恥ずかしいが、それを気にしてる余裕なんてない。次のステップは下半身。
乳首から口を離して下に舐め進む。この先には夢にまで見た念願のアソコがある。
しかしここで問題発生。おヘソまで進んだ僕を、優香は焦りまくって止めてきた。
「ま、待ってヒロ君!そ、その…下も…な、なに?あの……す、するの?ダメだよ?」
駄目だと言われても、ここまできてアソコを見ずにして終われない。
「どうして?優香の体を全部見たいな。」
そう言って太ももの間に顔を入れた。正面に見えるのは、ブラジャーとお揃いの薄ピンク色の可愛い下着に隠されたアソコ。
「やっダメッ!絶対ダメ!トイレ行ったし汚れてるからぁ。このまましよ?ね?」
この時の彼女は、エッチでアソコを愛撫されることも、ましてや洗ってないアソコを舐められるとは思ってなかったらしい。
「やぁだ、ヒロ君ホントにダメなの!」
太ももを舐めながら進んでいく僕の頭を、優香はギューッと締め付けてきた。
・・・前言撤回。
彼女の気持ちを優先するのは、時と場合によりけり。(笑)
「汚れてても大丈夫だよ。そんな優香のアソコを見たいし、いっぱい舐めたいな。」
何が大丈夫なのか全く説得力は無いが、頭を締め付けていた優香の太ももの力が抜けた。
「汚れてるよ?きっと匂うよ?それでも絶対の絶対に嫌いにならないって約束する?」
優香は真っ赤な顔で少し涙目。ちょっと罪悪感もあったが、アソコ優先で答えた。
「そんなの当然、嫌いにになるわけないじゃん。もし汚れてたら舐めて綺麗にするね。」
愛情表現のつもりだったが、よくよく考えてみるとマニアックな言葉だったと思う。
それを聞いた優香は、両腕を交差させて顔を隠すと、こう返してきた。
「うん、ヒロ君を信じる。あとね、その…アソコ……恥ずかしいことになってる。」
聞いた時には分からなかった最後の言葉の意味。でもすぐにそれを理解し、大興奮と嬉しさに襲われることとなった。
以前に見た、1本の細い谷間を浮かべた縦の筋。それは同じなんだが、薄ピンク色の下着の色が変わって明らかに湿ってる。
オシッコの拭き残しで濡れてたのかと、この時点ではそう思った。
興奮と緊張の中、下着に手を掛けてゆっくりと下ろしていった。
最初に見えたのは薄い陰毛。たぶん生え始めたばかりで、ごく僅かで産毛みたい。まさに彼女らしい可愛い陰毛だった。
そしてついに目にした女子の性器。念願だった優香のアソコ、夢に見た優香のマンコ。
・・・感無量、そして大興奮。
1本の綺麗な縦筋が、濡れて糸を引いてピカピカと光ってた。
これはオシッコじゃない、本に書いてあった愛液という分泌液。そしてそれは、女子が快感を感じたり興奮すると出てくる液体。
優香の言った意味を理解。彼女も気持ち良くて興奮してるという事実。
爆発的な嬉しさと興奮を感じながら、もっとよく見ようと足をM字に広げてみた。
すると割れ目が左右に開き、ピンク色の中身が少しだけ露出。そこから愛液が溢れ出しているのを確認できた。
もちろん隅々までじっくり見たい。左右に指を当て、その割れ目を開いた。
「やぁだヒロ君、恥ずかしいよぉ。」
綺麗なピンク色をした中身。優香のマンコを見ている僕の目は釘付けになった。
マニュアル本に載っていた女性器の図。それを思い出して照らし合わせてみたが、何がどの部分なのか分からない。
それでも、よく見てみるとクリトリスと膣だけは何となく分かった。
図と同じ位置にある極小の豆粒みたいな突起物がたぶんクリトリス。そして下の方にあるちょっとした隙間、これが膣だろうと。
その2つを確認しつつ、気付いたことは他にもあった。それは、彼女が凄く焦って気にしてた汚れと匂い。
濡れてグチュグチュしたピンク色の中身の溝に、白いカスが付着してるのが見える。
顔を近付けると、たしかに良い香りとは言えない匂いを鼻に感じた。
それは、シャンプーと石鹸の匂いがする優香の髪と体とは真逆の匂い。オシッコと汗が蒸れたようなムアッとした匂い。
でも、臭いとは思わなかった。むしろ興奮を引き立てる動物的な雌の匂いに感じた。
「んあっ、あっ…や、やだ、そこダメ!」
割れ目に沿いながらクリトリスを舐めると、驚くほどの優香の反応。舌には温かい愛液が乗っかってくる。
「ああっ!アァ…やっ、やっ、んんっ!」
たしかにクリトリスは女性の性感帯だとは書いてあったが、まさかこれほどの効果があるとは思ってなかった。
感じてるのは明らか。そして優香の可愛い喘ぎ声を聞いて、調子に乗って舐め続ける。
「アッアッ、やっダメ!ホントにダメッ!なんか変なの!オシッコ出そうなの!」
その言葉を聞いて舐めるのをストップ。続けていれば優香はイッたんじゃないかと思うが、この時は知識が無かった。
その代わり、口を離した僕が次に進んだのは優香のお尻。当然こっちも見ておきたい。
太ももや腰を舐めながら彼女をうつ伏せにすると、プルンとして小さな可愛いお尻が目の前に現れた。
そのお尻の谷間に舌を這わせていく。
マニュアル本だと、お尻の穴は軽く触ってみて、もし女性が嫌がるようなら止めるべしと書いてあった。
でもそんなのは無視。だって絶対に見たいし知りたいんだもん。
「えっ!?ちょっと待って!そこは本当にダメッ!汚いから!さっきしたからぁ!」
嫌がる優香も無視。だって絶対に嗅ぎたいし舐めたいんだもん。
マニアックな性癖じゃない。でも、気にしてる優香に、ぜんぜん自分は平気だっていうのを分かって欲しかった。ある意味、愛情表現。
谷間を左右に開くと、そこには僕と同じ放射状の小さな穴がヒクヒク動いてた。
足をバタつかせて優香は拒否してるが、その穴に向かって鼻を近付けて匂いを嗅いだ。
・・・ちゃんとウンチの匂い。
こんなに可愛い優香のお尻の穴も、しっかりウンチの匂いがしてた。
臭いけど、ぜんぜん嫌じゃない。なんだか不思議な感じで可愛いく思えた。
舌先でチロチロ舐めると優香は大騒ぎ。
「バカバカーっ!汚いの!もぉ~っ…。」
でも諦めたのか、すぐに大人しくなった。だったらと、僕は丹念に優香のウンチ臭いお尻の穴を舐め続けた。
それが終わっていよいよ挿入。練習の甲斐あって、ゴムはスムーズに装着できた。
しかしそこからが大変で、なかなか上手く入らない。優香が言う位置を聞きながらチャレンジすること数分間。
「………あっ!んっ!痛っ…いぃぃ。」
チンコがギュッと包み込まれるように、中に侵入したのが分かった。優香の反応を気にしながら、そのまま少しずつ奧に……。
「・・・やっと入ったね。痛い?」
入れただけで動かしてないんだが、2人とも汗だくで息はハァハァ。
「う、うん、痛いかも。でも嬉しい。」
それを聞いた瞬間、彼女を強く抱き締めてた。愛情、興奮、達成感、色んな想い。
初めてのエッチは、このまま全く動かずに抱き合いながら放出。
恥ずかしながら、優香のアソコの締め付けと興奮だけで限界に達してしまった。
こうして僕と優香の初エッチは終了。
優香のアソコを拭いたティッシュには、薄く血がついてて泣きそうになった。
ーそれから12年後ー
僕は正社員として働きながら、ボランティアで週に1回だけ空手道場の師範をしている。
それは、内気だったり投稿拒否だったりの小学生を集めた特別クラス。
なかなか結果は出ないが、何かの切っ掛けになればと思って教えてる。
子供たちとの稽古と親御さんからの相談でヘトヘトに疲れてしまう僕。
・・・でも大丈夫。
家では妻が、山盛りのエビフライを作って僕を待ってるから。