三回忌。それは、故人が亡くなって3年目を迎える2度目の命日・・・
私が地元に残して来て、そして不慮の事故で命を落としてしまった高校時代の彼女だったそんなあおいの3回忌が近づいていました。
私の母さんによると、その3回忌で故人の来世が決まるそうです。そんな中、亡きあおいが枕元に立ち「行き先が決まった・・・」と言い残していたことを思い出しています。う〜ん・・・コレって何かを暗示しているモノなのでしょうか?。
第32話となります今回のストーリーは、私こと風谷円(かざがいまどか)が、母さんから過去に経営していた建設会社や私たち兄妹を守るためにカラダを張って来たことや、業界の闇の部分を打ち明けられ動揺しているところから始まります。
時代は平成2年。未だバブル景気に浮かれていたそんな時代の日本という国の北東北にある小さな臨港都市が舞台となります。そしてその街にある工業系大学の4年生である私が付属高校で教育実習を受けていた時の物語となります。
2週間ある実習期間の前半が終わりほっとしたのも束の間、私の彼女でバスガイド1年生のマコトの姉であるアキラが倒れたという連絡を受けていました。
そして私がその病院に駆けつけた際、あおいが亡くなった病院の集中治療室前の廊下と記憶が被ってしまい、終いには私も記憶が混乱し倒れてしまって同時に入院するハメに・・・
そんな私はその原因が心因的なものと診断され、要経過観察という条件のもと一晩で退院してはいますが、駆けつけた母さんによりマコトとの縁談が進んでしまって、どう言うわけか明日結納が行われる手筈となっています。
でも、教育実習中に深い関係になってしまった小林先生こと舞衣さんの存在もあり、ちょっと後ろめたいところもありますが・・・。
また入院中、亡きあおいの3回忌が近づいているそんな時、精神的に混乱する私の枕元に立ったあおいが語った言葉も気にもなりますが、それにも増して幼少期からの私の行動が全て母さんに筒抜けだった事にショックも受けていました。
そんな中、老朽化激しい総勢8名の小さな下宿の1階角部屋の私の4畳半では、今さっき3歳児でありながら私の妹であるのどかを寝かしつけたばかりの私がベッドに腰掛け、私の足元で風呂上がりのままほぼ全裸状態で髪を乾かしているそんな母さんにどうしてそこまで知ってるのか?と質問していました。
それに対し、動揺する私に向かって亡きあおいの3回忌が近づいていることを告げたところから今回のストーリーが始まります。
それでは・・・
「3回忌で亡くなった人の行き先が決まる?それって・・・そのあとどこかで生まれ変わるってこと?」
人が亡くなった先のことなんて考えたこともない私は、目の前の母さんにそう尋ねました。
「母さんはお坊さんじゃないから詳しくは知らないけど、天寿を全うした人は天国に。悪いことをした人は地獄で閻魔様の審判を受ける・・・ってところかな?」
これって、どこかで聞いたことがあるような話ですが・・・
「それじゃ、その天寿を全うできなかった人は?」
「うん。その人がもう一度命を授かってどこかで生まれるってところかしら・・・。」
「それじゃ、母さんも僕も誰かの生まれ変わりなのかな・・・?」
「それは分からない。前世の記憶なんてないからね・・・」
まっ、それもそうですが・・・。でも、稀に前世の記憶がある人もいるなんてこともどこかで聞いたことがあるような気もします。
この時私は大学進学時に地元に残して来て、中学2年生で13歳の短い人生を不慮の事故で終わらせることになってしまったあおいのことを思い出していました。
「おいちゃんがもし今度どこかで生まれ変わったら、短い人生なんかで終わることがないようになってほしいね。」
「うん・・・そうだよね。少なくてもカレシに4年待ってくれなんて言われないようにしてほしいね。」
この時母さんは私の願いに対して、まるで茶化すかのようにそう返しました。
私はそんな幼いあおいに対して、大学卒業までの4年間待っていてほしいと言い残し地元を離れていました。そして事あるごとに私が地元を離れさえしなければあおいが命を落とさず済んだのではないか・・・と未だに思っていましたが・・・。
その時母さんは、4年待って・・・なんてことまで知っていました。それは私とあおいの2人だけの秘事だと思っていたのですが・・・。
当然それを知っていた母さんに私は尋ねました。
「母さん!なんでそんなところまで知ってるの?」
「だから言ってるでしょ?親・・・なんだから。そんなの当然でしょ?」
親ってものはそんなもんなんでしょうか?子は子で親に知られたくない秘事なんて山ほどあると思うのですが・・・
そんな思いなんて全く関係のないその母さんが今度は私自身が意識もしない領域まで足を踏み入れてきます。
「でもさ、アンタが偉いって思うことがあってね。ソレはアンタがその女の娘を縛らないどころか自分の色に染めようとしないところ。」
「縛るって、彼女は自分の所有物・・・っていうみたいな感覚?」
「まっ、そんな感じかしら・・・。オトコって2通りあって、意中の女の娘とヤるだけやった後、その娘の興味がなくなっちゃって・・・ヤりたくなった時だけヤるっていうタイプと、1回やったらとことん拘束したがるタイプ・・・」
「えっ?その2通りしかないの?結構上手くやって仲良いカップルなんていくらでもいると思うんだけど・・・」
「それは程度の差。オトコってものは多かれ少なかれそんなもん・・・」
「でも・・・女の娘には女の娘の気持ちってものがあるんじゃ・・・」
「うん・・・そうだよね。オトコって1回やったら自分のオンナ・・・みたいに思っちゃうけど、その反面女の娘ってカラダ重ねるごとにそのオトコってものがどんな感じか感じ取っていくものなの。だから、たかが1回ヤっただけじゃそのオトコに染まったなんてことにはならない。」
「ん?もしかして、そのどんな感じか感じ取る・・・ってところが染まるってことに繋がるの?」
「そんな感じかな・・・?だから、女の娘がそのオトコのことを本当に好きならば自ら心の中まで染まって行くもんなの。」
「じゃ、気持ちが通じてる女の娘だったら自然に染まって行くけど、そうじゃなかったらオトコが一方的に染める・・・ってこと?」
「うん・・・。オンナは気持ちから染まって行くもんなんだけど、オトコってとにかくそんな気持ちを考えないでカラダを染めようとするんだよね。セックスの度これでもかっ、これでもかっていうようにして・・・まるでパンツのゴム紐売りつける押し売りのように・・・。女の娘ってそんなの望んじゃいないのに。肌合わせて抱きしめてくれればそれで幸せなのに・・・」
「でも・・・そもそも男女のセックスって対等なんじゃないの?どちらかが一方的に押し付けたって・・・・。そのセックス自体が男女の共同作業って感覚だったから・・・」
「アンタ上手いこと言うね。まるで結婚式のケーキ入刀の時みたい。」
「母さん茶化さないで!」
「あっ、ごめんなさい。結局ソレって、相手の人格を尊重してるって事だよ。まあ・・・とにかくオトコってヤツは、ヤったオンナをとにかく自分の色に染めようとするからね・・・。」
母さんはそこまで話すと何かを思う出すかのようにため息を吐いて話を続けます。
「まあ・・オトコってヤツはとにかくオンナの身体に自分の足跡を残したがるもんなの。」
「ん?足跡?」
「うん。傷跡っても言うのかな?そのオンナが次に誰かのモノになったとしても決して自分というオトコの存在を忘れないようにするってヤツ・・・」
「そんな・・・自分を忘れないようにって・・・」
「そこ・・・なんだよね麻美子が悩んでるとこって。」
「そ・・・それって・・・あのオトコのこと?」
あの男というのは麻美子姉さんを2度にわたってレイプしたあのオトコのことです。その時処女だった姉さんをオトコの欲望に任せてコレでもか・・・コレでもかというほどいろんなことを刻み込んだ最低な奴です。
そして2度目のレイプ現場に遭遇した私は、そのオトコの顔を自分の指が骨折したのも分からないまま殴り続け、しまいにはそのオトコの顔が原型を留めない程になっていました。その後そのオトコがどうなったかは分かりませんが、姉さんに残された傷跡は心の中にも身体にも深く刻まれています。
「うん・・・麻美子さ・・・それで俗に言うお嫁に行けないカラダにされちゃったでしょ?」
「でも、舞衣さんの弟さんがそれでもお嫁に欲しいって・・・」
「でも、麻美子ってさ・・・未だにそのオトコにレイプされ続けてるみたいなの・・・」
「えっ・・・未だに?」
「うん。この前、未だにその悪夢にうなされることがあるって打ち明けられてね・・・。でも、そんな麻美子も一歩踏み出そうとしてるし・・・母さんちょっと嬉しくってね。」
「うん・・・。この前姉さんが来た時その結婚話打ち明けられて・・・。でも、僕は何も何も出来なかった・・・ただ話を聞いてあげられるだけで・・・」
「あっ、それでね・・・。麻美子がアンタにその悩みを打ち明けているうちに自分自身でその悩みを整理したのね・・・。それで麻美子がアンタのところから帰って来た時表情が違うなって思ったの。そして、小林くんの結婚の申し出受けることにしたって言ってくれてね・・・・母さんすごく嬉しかった。これで麻美子がその悪夢から解放されるんじゃないかって思って・・・」
「でも・・・姉さんって子供産めないカラダだって言ってたんだけど・・・」
「うん。そこなんだよね。コレって夫婦だけじゃなくって一族の問題にもなっちゃうんだから・・・。」
「本当にあのオトコさえ存在してなかったら・・・・」
「そうだよね。例えばもし、麻美子の初めてのオトコってのがその小林くんだったらどんなに良かったか・・・」
「うん・・・。でも、その小林くんって人は姉さんがそうだって知ってて結婚を申し込んでる。この世の中、結婚するなら処女がいいって風潮がある中、姉さんという人格を好きだって言ってくれてる・・・。それって尊敬に値することだと僕は思う・・・」
「そうよね・・・オトコって奴は遊び相手には経験豊富な女の娘を求めるのに、結婚相手ともなるとその女性に処女性を求めるよね。まっ、マコトさんはそうだったとは思うけど、アンタもその処女ってのに拘る?」
「う・・ん。結果的にマコちゃんは僕が初めてのオトコだったけど、もしそうじゃなくってもマコちゃんは変わらないし・・・」
そのマコトは北海道に渡った後、義理の弟にレイプされてしまっていました。そのマコトは悩みに悩んだ挙句、私に嘘をつきたくないという一心でそれを打ち明けてくれています。そして打ち明けられた私は、そういう経験もひっくるめてマコトという女の娘にプロポーズをしていました。
「ねえ、まーくん。アンタがまだバブバブだった頃、アポロ11号が人類初の月面着陸に成功したのは知ってるよね?」
私がそんなことを考えていた時、母さんがそんな話を始めました。
「うん。知ってる・・・。アームストロング船長でしょ?」
「そうだよね。その月面着陸で、誰の足跡もない月面に最初の足跡付けたでしょ?」
「うん。そんなの誰でも知ってる。」
「それなの。何もないところに・・・最初に・・・っていうところに恐らくオトコのロマンっていうヤツがあるらしいの。あと、水曜日の夜テレビでやってた冒険シリーズ知ってるよね?」
「うん。知ってる。誰も足を踏み入れたことのない秘境を冒険するってヤツ・・・つい何年か前までやってた。」
「まっ、人類初に足を踏み入れたって割にはカメラマンが前から映していたけどね・・・。でも、その最初ってヤツと足を踏み入れたってことが重要なの。」
「最初って・・・」
「やっぱりオトコって処女にこだわることあるでしょ?」
「まっ、人によるけど・・」
「何にも色のない真っ白なキャンパスに自分の色を塗って行くって感じなのかな」
「もしかして、結婚式の白無垢ってそんなところから来てるってこと?」
「うん・・・そうだよね。コレから好きな色に染めてください・・・みたいなヤツ。」
その「染める・染められる」っていう会話・・・どこかでしたことがあります。恐らくふたばとの会話で出てきた話題かと思います。
その会話の中で、一度染まってしまうとそれを上塗りすることが大変だとも言っていたような気もしました。ましてや一度変態的な色で染まってしまうと上塗り困難であることも・・・。
しかし、そんな変態的な色で染まってしまった彼女は、今度は次の彼氏をその変態的な色で染めてしまったりして・・・。さらには、その変態な部分ををお互い認めた瞬間離れられない関係になることも・・・。
「で・・・麻美子姉さんはあの男に染められちゃって悩んでいたみたいなんだけど・・・そんな母さんも染められちゃった?」
その時、恐らくいろんなオトコ共にいろんな色に染められてしまっている母さんにそう尋ねました。
「うん。結婚した時は父さんの色に自ら染まったんだけど、ソレからはいろんなオトコどもにいろんな色に染められたよ・・・。自分からそんな色に染まろうだなんて願ったことなんてただの一度もないんだけどね。」
「自分から染まろうだなんて思うこともあるんだ・・・」
私はこれまで、その「色」というものは男女それぞれが染まり合う色だと思っていたので少し新鮮でした。
「あっ・・・染まると言えば、あのあおいちゃん。」
「えっ?おいちゃんがどうしたって?母さん、おいちゃんのお母さんから何か聞いたの?」
「うん。あおいちゃんさ・・・アンタがいなくなっちゃった後、アンタの色に染まろうとして頑張っていたみたいなの。アンタに再会した時、アンタ好みの色になった自分を見せたかったのね・・・・。」
「・・・あのさ、おいちゃんが亡くなった後アベちゃん(あおいの兄で高校の同級生)から、おいちゃんが出そうとしていた手紙が出て来たって言われて、それを見せてもらったことがあって・・・それに僕が地元に帰った時告白してもらえるような女の子になるように頑張ってる・・・っていうようなことが書いてあった。」
「染めてくれるオトコがそばにいないって悲しいね・・・。まだ中学生なのにアンタに染まろうって頑張ってた・・・なんか健気ね。」
「そんなおいちゃんを差し置いて、僕はマコトっていう女の子と一緒になろうとしてる・・・・僕ばかり幸せでいいのかな?」
「良いに決まってるでしょ。そんなこと考えていたらそれこそあおいちゃんに怒られちゃうよ・・・」
「それって・・・おいちゃんの分まで幸せになれってことでしょ?」
「それは違う。まずは自分の幸せ・・・いや、マコトさんとの幸せを考えなさい。あおいちゃんから卒業しろなんて言わない。あおいちゃんを一生背負ってても良いから幸せになりなさい。そうでないとあおいちゃんが報われないと思う。」
「うん。多分一生僕の中からおいちゃんがいなくなることはないけど・・・それを受け止めて頑張ってみる。」
「それでよろしい。これからはマコトさんを思いっきり自分の色に染めてやってね・・・」
「母さんゴメン。僕はマコちゃんを自分の色になんて染められないと思う。」
「ん?どうして?」
「人ってそれぞれ自分の色ってものを持ってると思うんだよね。マコちゃんにもマコちゃんの色が・・・・」
「うん。そうだけど・・・大抵彼女が彼氏の色に染まるもんじゃ・・・」
「僕が思うに・・・お互いのいい色を混ぜ合わせて綺麗な色が出来あがればいいって思ってる。どちらかの色じゃなくって、お互いの色で・・・」
「母さんさ・・・そんな考え方したことなかったからちょっとびっくり・・・。アンタいつの間にそんなに成長したの?っていうかお坊さんみたいに悟り開いちゃった?」
「母さんちょっと・・・。ひとが真面目な話してるっていうのに・・・。」
「あっ、ごめんね。母さん自身がいろんな色で染められちゃって・・・オトコが変わる度上塗りされて来たようなものだからね・・・」
母さんがそこまで話した時二人の間に沈黙が訪れました。
するとこの時、隣の部屋に誰かが訪れて2階の部屋に酒を飲みに来い的な話が聞こえて来ました。どうやら、2階の2年生が1年生を誘いに来たようです。そして、その1年生達が「なんとか監督・・・」とか、「洗濯屋なんとか・・・」と言うような会話をしながら階段をギッ・ギッ・ギッという階段を登って行く音が聞こえています。
私の部屋は建物の角部屋で隣の部屋は無人。そして私の部屋の廊下を挟んだ向かいの部屋の住人は隣の部屋の住人と一緒に2階へ登っています。今、この下宿の1階は私の部屋を除いて無人・・・。いきなりふたばが訪れない限り邪魔者はいないという事になります。
いつの間にか舞台の整ってしまったそんな部屋で私は母さんに尋ねました。
「母さんが染められた色って・・・どんな色?」
「う〜ん・・・。アンタ、小学校の頃よく水彩画描いてたよね?」
「うん。」
「じゃ、色染めた筆を洗うバケツの水の色も知ってるよね。」
「もちろん。」
「じゃ、そんな感じ・・・」
みなさんご存知の通りそんなバケツの水の色は何色とも表現できない澱んだ色になっています。それは、その水に何色を足しても決して澄んだ色には戻りません。今ここにいる母さんは自らのことをそんな風に表現していました。
「いや・・・母さんは決してそんな色じゃない!」
「じゃ、言ってみてよ・・・どんな色か。」
「・・・・」
「言えないでしょ。それならいっそアンタの色で・・・。」
「えっ?僕の色って・・・」
「色なんてなんでもいいの。アンタの色なら・・・」
「でも・・・もう、母さんって義父さんの色に染まって来てるんじゃ・・・?」
「恐らく母さんの色が強くってコウちゃん(義父さん)の色が乗らないみたいでさ・・・」
「うん。どう見ても母さんの色が強そう・・・」
「そうでしょ?だから、逆に母さんの何色か分からない色にコウちゃんが染まりそうで怖いの・・・だから」
そう言いながら母さんが私の手を引いて先ほど敷いたこたつ布団の上に横になり、横向きに迎え合わせに迎なった私のカラダをギュッと抱きしめました。その時、母さんの肌から冷えた体温が伝わってきます。
そんな母さんが話を続けます。
「初めてこの街に来たあの日、アンタと母さんがこうなっちゃった時に母さんのオンナとしての運命が変わったの。」
「オンナ・・・として?」
「誰かのためのオンナじゃなくって、そもそもそのオンナって部分は自分のためにある・・・。ヒトのために使うんじゃなくって自分のために使うものだって思ったの。そんなのその時まで考えたことなかった。」
「それって当たり前じゃん・・・」
「でも、母さんってそのオンナってもので世の中渡って来てるんだよ。」
「でも・・・・もう、そんなカラダ張らなくっても良くなったし・・・・これからは自分の幸せを考えられるようになった・・・ってこと?」
「自分こと考えるようになったってことは、オンナとしての運命が変わったってことでしょ?」
「でも、それって当たり前のことでしょ。そこに辿り着くまでひどく遠回りしちゃってはいるけど・・・」
「それって、廻り道しなきゃ分かんなかったかも・・・」
そこまで話した母さんが、私の顔を両手で挟むようにしてキスをして来ました。ソレはどこか懐かしい味というか匂いというか・・・
そして、今度は私からお返しとばかりにキスをしながら右手をツルツルのアソコを掌で包むように触れました。その無毛のソコはカラダが冷えている母さんのカラダで唯一熱を帯びています。
それから私は右手でソコを温めるようにしばらく手を添えていました。
すると母さんがカラダをくねらせるようにして私に抱きついて来ました。そのカラダは40歳をとうに越してはいましたがやはり女性です。動きといいその腹の感触といい・・・
でも、肌触りというかその肌のキメというかその弾力というか・・・そんなところはやはり若い女性には敵いません。でも・・・。
「・・・吸って・・・」
その時母さんは私の頭に手を添えるようにして乳房を突き出しました。まるで赤子にお乳を与えるかのように・・・
「うん。」
私は右手を母さんのアソコ温めるように添えながら上半身を起こして、ちょっと弾力を失いかけている乳房の先端にある乳首を優しく吸いました。先ほど元の彼女であるふたばから「アンタの吸い方は幼児の足元にも及ばない」と忠告を受けたばかりでしたのでそれを意識して優しく吸い上げています。
この時私の口の中に甘いようななんとも懐かしい味が広がってきました。これって乳児期の記憶が蘇ったと言うことでしょうか?
そして優しく吸い上げる乳首が硬くなって来たところで母さんが私の右の太ももを両足で挟み込み、その間に挟まれた私の掌をグイグイとアソコで押し付けるような動きをして来ました。
すると私の人差し指と中指の間に何か硬いもの挟まるようになり、それが腰の動きに合わせて指の間を往復しています。
そしてその指の間のものを指で挟むと母さんの下っ腹がビクッと反応しました。
「アンタ・・・・そんなテク、どこで覚えたのさ・・・」
乳首を吸い続けている私に母さんがそう尋ねて来ました。
「え?・・・・乳首?コッチ(右手)?」
「両方・・・・。同時にそんなされたら・・・・」
そう言いながら母さんが仰向けになって脚を広げました。するとアソコがすごい状態に・・・・
「えっ?まだ何もしてないけど?」
「オンナのアソコって乳首と繋がってて・・・そうやって同時に刺激されるとスイッチが入る仕組みになってる・・・。」
それってそう言うものなのでしょうか?風呂場でのどかにおっぱいを吸われたふたばもそんなことを言っていたような気がします。そこで私は、それが正解なのか先ほど間違ったことをしたら指導を入れると言った当の本人に尋ねることにしました。
「じゃ・・・これって合格ってこと?」
「その・・・合格ってなんだっけ?」
「さっきこういうことの指導が入るって言うもんだから・・・」
「あっ、そうだったね・・・じゃ、そこ(アソコ)開いて触ってみて・・・・」
そう言われた私は人差し指と薬指でアソコを開き、中指でその中に指を入れてみました。
「すごく濡れてる・・・・物凄く熱い。」
「うん。アンタの冷えた指が入って来たのが分かるよ。」
「母さん、ここ・・・硬く尖ってる」
「当たり前でしょ?こんなことになってるんだから。でも、優しくね。母さんの・・・・剥けちゃってて、刺激に弱くなってるから・・・」
この時母さんが刺激に弱くなっていると言ったのは、皆さんご想像通りのクリトリスのことです。通常、包皮に包まれていて外からの刺激から本体を守る構造になっていますが、母さんはそのようにはなっていないようです。恐らく母さんを手込めにしてきたオトコ共に何やらされてしまった結果だと思いますが・・・
ここがそんなことになっていたなんて・・・前回母さんこうなってしまった時は全く気づきませんでした。というよりそんな余裕もありませんでしたが・・・
すると母さんがカラダを起こして私を仰向けにし、さらに足をM字にして高く持ち上げました。
「は〜い、おむつの交換よ〜。良いうんち出てるかな〜。」
この時母さんは、まるでオムツ交換でもするかのように私を扱っています。
「ちょっと・・・恥ずかしいんだけど・・・」
「あら・・・赤ちゃんの頃はこうやってオムツ交換してたのよ。今更恥ずかしいって・・・」
「そりゃ恥ずかしいでしょ・・・大人になってまで・・・」
「そうだよね。その頃は毛の一本も生えてない綺麗なお尻だったのに・・・今じゃ毛むくじゃら・・・」
この時カーテンから漏れる街路灯の明かりを恨みました。私の部屋のすぐ外にはバイク小屋があって、その防犯用に灯っている明かりなのですが・・・でもそんな感覚を置き去りにして私の身体が反応していました。
「あれ?恥ずかしい割にはカチカチなんですけど?」
「そりゃこんな変態的なことされたら・・・」
「そうだよね。アンタ・・・変態だった・・・」
「違う。変態なのは母さんの方・・・」
「じゃ、変態ついでに・・・こんなのはどう?」
母さんはそう言いながらお尻のどこかを舐め始めました。それは肛門のあたりでしょうか?その時私はその初めての感覚で自分のアレが一段と固くなっていくのを感じています。
すると今度は玉袋の後ろ側を舐め上げ、しまいにはその玉袋を口に含んでいます。そして、その口の中で舐め上げらえるその感覚に鳥肌が立って来ました。
「か・・母さん。それは・・ちょっと・・・」
鳥肌を立てながら震えるような声でしか抗議できない私に対して、母さんは私のソレを口から出して答えました。
「あっ、ごめんね。もしかして菊の門って初めてだった?理央ちゃんだったらともなく、ふたばさんやマコトさんはこんなことしないもんね。」
「理央だったらともかく・・・ってどういうこと?理央だってそんなことしない!」
「あっ、ごめんね。だって理央ちゃんって今アイドルみたいなもんでしょ?アイドルって陰ですごいことしてそう・・って勝手な想像。」
この時私は母さんに嘘を言っていました。過去にその理央から女性に対しての手解きを受けた時、その玉袋の件は経験済みでしたが、さすがにその菊の門というのは・・・・。
母さんは続いて私の足を肩に担ぐようにしながらアレにしゃぶりつきました。
「うん・・・。やっぱり硬さが違う。やっぱり若いんだよね。さすがヤリタイ盛りよね・・・。」
そんな言葉を挟みながら頭を上下させています。
「ヤリタイ盛り・・・って・・・そんなこと・・・」
「あれ?そうじゃないの?オトコもオンナもハタチ前後ってそうだと思ったんだけど・・・。」
「う・・・うん。否定はしないけど・・・」
「でもさ・・・やっぱり親子よね。死んだ父さんとカタチ大きさが一緒・・・。この傘が開いたコレなんて・・・」
母さんはそう囁きながらそのカリの部分の形を確かめるようにしています。こうなると私も黙ってはいられません。
「母さん。僕も母さんの・・・舐めたい・・・」
「ダメ・・・。今日はダメな日なの。」
「どうして?なんの日なの?」
「うん・・・。今日は母さん排卵日みたいなの。」
「舐めるくらいなら・・・」
「だからダメなの。さっきアソコに指入れた時感じなかった?」
「ん?・・・ちょっと・・・」
「ちょっとベタベタしてなかった?オンナのカラダって排卵日の辺りになると分泌物が多くなるの。一般的にオリモノって言われてるやつなんだけど・・・」
「僕はそんなの関係ないけど・・・」
「それはダメ。オンナの子はそういうところを気のするから注意ね。そういうことだからこっちから行かせてもらうね・・・」
そう言いながら母さんは私のカラダを仰向けにして、硬く天井を向いてそそり立つものを目掛けて腰を降ろしました。
「あっ・・・・うん。これ・・・・・なんだよね。」
この時私のモノが、ヌメっとしたものすごく熱いもので包まれたような、優しく抱かれいるような感覚になっていました。
「母さん、なにが・・コレなの?」
当然私は一人で何かに納得している母さんにそう尋ねました。
「ん?・・・死んだあなたの父さんにそっくりってこと。」
「どこがそくっりだって?」
「この奥に届きそうで届かないこのむず痒い感覚・・・・そう言っても分かんないよね。」
「そ・・それって僕のコレが寸足らずって事?つまりは短い・・・と?」
「まっ、そうとも言うわね・・・。でも、心配しないで。ちょっと長さは足りないっていうのはどうでもいい・・・そのうちこっちから迎えに行くからそれはいいの。」
母さんの言う「こっちから迎えに行く」と言うこものは俗に言う「子宮がさがる」と言うものかと思います。サイズ的にあんなに違いのあったふたばでさえ感じてくれば最終的に子宮の入り口が私の先端が触れることがしばしばありました。
私がそんな事に納得していると、仰向けになった私のアレに上から押し付けるようにグリグリと自らのアソコの中を掻き回すように腰を動かしながら母さんが話を続けます。
「死んだ父さんもそうだったけどこの先っぽが太いのがなんともいい感じなの。それにも増して・・・・」
「母さん・・・まだ何かあるの?」
「うん・・・。コレは死んだ父さんやコウちゃん。あと、わたしを弄んだジジイどもが到底叶わなかったこと・・・・それはこの硬さ・・・」
母さんはこの時私の上で体をグラインドさせながら何かを満喫するように話を続けます。
「うん・・・早速母さん感じて来ちゃった・・・。実はね、あのコウちゃん(義父)ってあんな顔していいモノ持ってるの。アンタがどう頑張っても敵わない・・・・それはその長さ。」
「えっ?義父さんってそうなの?」
「でも・・・長続きはするんだけどチョット硬さが足りないっていうか・・・でもあれが硬くて奥底突っつかれたら気持ち良い以前にチョット痛いかも。それ考えたら硬さが足りない方がちょうどいいのかも・・・」
「それって・・痛し痒し?」
「あっ・・・チョット話しかけないで・・・すごく感じて来た・・・」
そう言いながら母さんは上下前後に腰を動かし何かを堪能するかのような表情をしています。するとそんな母さんが突然私から離れて何かを探し始めました。
「えっ?母さんどうしたの?」
「チョット・・・座布団・・この辺になかった?」
この時母さんは、どういう訳か焦った様子で座布団を探しています。
そして私が枕にしていた座布団を頭の後ろから引き抜きそんな母さんに手渡すと、母さんはそれを2枚折りにして私の尻の下に差し込み、再び私の腰に跨りました。
すると深く差し込まれた私のアレの先端が何かに触れているのが分かります。
「うん・・・やっぱりコレ・・・」
「そうだよね・・・いつも長いので奥底突っつかれてたら僕の長さじゃ物足りないよね・・・」
私が問いかけても母さんからの応答はありません。その代わり先ほどよりずっと激しいその動きの中から荒い息遣いだけが伝わってきます。
「う・・・ん・・・。最初はむず痒いのが良いけど・・・・やっぱり最後はコレでなくっちゃ・・・」
母さんはまるで独り言を言うようにそう囁いでいます。
「まーくん。チョットお願いがあるの・・・」
「ん?なに?」
「名前で呼んで・・・」
「母さんの?」
「うん・・・息子じゃなくってオトコとして・・」
そう頼まれた私は少し戸惑っていました。未だかつて自分の母親を名前で呼ぶなんてことはありませんでしたから・・・・でも、こんな時です。頼まれたのなら答えるのがオトコってもんです。
「香織さん・・・・?」
「・・・さん・・・は余計・・・」
「じゃ・・・かおり。」
「アンタ・・・母さんの本当の呼び方知らないのね。本当の呼び方は・・・かほり。かほって呼んで・・・」
この時、どう言う訳か私のアレがビクッと反応して一段と硬くなったのが自分でも分かりました。この「かほ」と言う名前は、マコトの先輩バスガイドの「夏帆」と同じ呼び方です。しかも、以前一晩だけのフィアンセとしてリゾートホテルで一晩共にした女の娘でした。
当然私はその呼び方にちょっと後ろめたいところがありましたが、反面私の下半身はそれに別な形で反応していました。
「うん・・・芯がカチカチなのに先っぽの周りだけがチョット柔らかい・・・それで突かれたら・・・オンナはイチコロ・・・。座布団無しでこうだったらアンタ本当に色オトコだったんだけどね。チョット惜しいな・・・」
そういう私のそれは、つい最近その夏帆の処女を貫いていました。そして義理の姉となる舞衣さんまで・・・。本当に私は罪作りなオトコです。結婚したら浮気は許さないと言ってくれているマコトにもそんな甘えるわけにも行きませんので、そのマコトに二度と罪を作らないように、早いところ首輪を付けてもらってさらに鎖でつないでもらいたい後ろめたい気持ちでいっぱいになって来ました。
でも、やはりそんなことなど関係ない私の下半身は元気そのものです。
しかも、私がそんな後ろめたい思いなどしていることなど関係のない「かほ」は、ソレが13cmほど身体に突き刺さっているままその腰を自在に動かし、まるで何かを堪能するかのような表情をしていました。
「ああ・・・・久しぶりこんな感じ・・・もう・・・腰が溶けそう・・・・」
その私の上で腰を動かし続けるその「かほ」という女性は、私のことなんて関係なしにそんなことを口にしています。でも・・・そんなことを冷静に見ていられたのはここまででした。
その後、円を描くように・・・そのかほが、まるでフラダンスを踊るかのように腰を振った時のことでした。私の先端をまるでその周囲をなぞるような突起が出現し、今度はこっちが溶けそうになっています。
しかもその突起みたいなものの表面がどういう訳かザラザラというかボコボコしていてそれの刺激がなんとも・・・・そんなことを思った瞬間急に来ました。
「うっ・・・・」
私はこの時、自分自身の今最も敏感になっているその先端から先走り汁が排出されたのが分かりました。
「か・・・かほ・・・」
「ん?どうした?」
「も・・・もう・・・」
「ソレじゃ一緒に・・・」
「でも・・・」
「どうした?」
「今日・・・排卵日なんでしょ?」
「うん。・・・だから?」
「その・・・中はまずいんじゃ・・・」
「いいの。もう歳なんだからできないって。でも、もしデキちゃったら麻美子のところの子供にしてもらうからいいの。」
そんな麻美子姉さんは二度に渡るレイプの際に子供の産めない身体になっていました。ソレについて母さんはいつも悔やんでいたような気がします。
後で考えてみるとその時母さんはもしかして・・・・この時それを望んでいたのかもしれません。
その時私は本当にマズい状況に陥っていました。私のアレの感覚がなくなって来ており射精をコントロール出来る余裕が全くない状況です。
「うっ・・・・逝き・・・そう・・・」
もう限界点を突破しそうでそう訴える私に対して、ちょっと焦ったようなかほが声にならない囁きで私に返します。
「ちょっ・・・・ちょっとガマンして!もうチョット・・・・」
そんなこといわれても・・・
私の上で腰を振るかほがそう言い終わる間もなく私の先端から大量の精液が発射されました。ソレはまるで打ち上げ花火でも打ち上げるかのような勢いで・・・
その時私が入っているかほのアソコが物凄い締め付けになり、その状態で体を上下に動かしています。しかも、その締め付けは入り口付近と中ほどの2箇所で締め付けられ、ついでに奥まで入った時その中の少し硬い部分が私の先端を撫で回すような動きまでしています。
今、私の先端部は物凄く刺激に弱い状態にあります。でも・・・そんなのは関係ないとばかりにその攻撃を続けてきます。
もう・・・私の限界点はとっくに過ぎています。
「うっ・・・あああ・・・ううっ・・・・・」
私は、その動きをちょっと止めて・・・少し休ませて・・・と言おうとしますが言葉になりません。その間二人の繋がったところから「グジョ・・グジョ・・」っといやらしい音が鳴り続けました。
もうソレからというもの、そのかほは私を責め立てるように搾り上げその熱い胎内にその白い液体を搾り上げました。私も負けじと後ろから前から何度も何度もその体内に液体を放出し続け、そして最後は疲れ果てて抱き合ったまま眠りに落ちていました。
そして朝方、抱き合っている母さんの寝息が二重になっているのを感じたところで目が覚めました。すると私の腕枕で寝ている母さんの胸元が微妙に動いています。
その時、掛けてあった肌がけを捲って見えたソレはカーテンから差し込む朝日に浮かぶのどかの頭でした。ベッドの上で寝ていたはずののどかがいつの間にか二人の間に割り込んでいたようです。
そして顔を母さんの胸に押し付けるようにして寝ながら、口をもぐもぐ動かし母さんのおっぱいを吸っていました。
なんとも言えない光景です。裸体にしがみつくようにしておっぱいを吸っているその光景はやはり神秘的でした。でも、捲った肌がけの奥から栗の花というか物凄い生臭い香りが・・・。
「あっ、まーくんおはよ。あれっ?のどか・・・いつの間に?」
目を覚ました母さんはすぐ隣から伸びている私の腕を枕にしながら自分の乳首にぶら下がっている娘に驚いています。
「あっ、母さん・・・・乳首から母乳出てる。」
驚く母さんの乳首から乳白色の液体が滲み出て来ており何滴か滴り落ちていました。
「そうなんだよね・・・何かカラダがおかしいんだよね。生理も狂って来てるしそろそろアガっちゃうのかな・・・」
そのアガるという表現は女性の閉経を意味しています。女性の平均閉経年齢がおよそ50歳・・・・未だ3歳児の母親ではありますが・・・そんな母さんも数年後に五十路に足を踏み入れます。
そんな母さんは起き上がって自らの乳首を私から受け取ったティッシュで拭き、中腰の態勢でのどかをベッドに戻しました。そして振り返ってこちらを向いた時です。
「うっ・・・ちょっと、もう一回ティッシュ取って・・・」
そう言いながら右手で股間を押さえながら固まっています。
「さすが・・・アンタ、若いよね。この量じゃ一日一回抜かないと爆発しそうね。」
その時母さんは受け取ったティッシュでアソコを拭きながらそう尋ねて来ました。
「いや・・・爆発はしないけど・・・」
すると今度は右手でアソコを押さえながら左手で右の乳房をおさえています。
「ちょっと・・・もう一枚ティッシュとって・・・」
母さんがちょっと焦った様子でそう言ってきました。
「ん?そんなにいっぱい出てきた?」
「ちょっと違うの・・・」
母さんは私からティッシュを受け取ると、先ほど拭いた乳首をそのティッシュで摘むようにしておさえています。
「ちょっと乳首を刺激したら止まんなくなっちゃった・・・。えっと・・・どうしようかな・・・・?。」
「刺激するとそうなっちゃうの?」
私は珍しく焦った表情になっている母さんにそう質問しました。
「うん。あと授乳してた時期なんて、赤ちゃんの鳴き声が聞こえるとおっぱいが張ってきて、おっぱいが出ちゃうなんてことも・・・。それでブラジャーにそれ用のパッド挟んでいたりしたんだけど・・・なんでかな?こんなの本当に久しぶり。」
「どうすれば治る?僕に出来ることって・・・」
「まっ、手っ取り早いのは飲んでもらうことかな・・・?あれ?こんな話してたらますますおっぱい張って来ちゃった・・・あっ、ちょうどいい・・・まーくん、ちょっと飲んでくれない?のどかを起こすのも申し訳ないし・・・」
そう言いながら母さんは私を手招きし、それに応じた私が母さんの太ももの上に膝枕状態となりました。そして母さんが私の頭をまるで赤ちゃんにそうするかのように抱えて私の口を乳首に誘導します。
昨夜こんな状況で乳首を吸ってはいましたが、この時も私は誘導されるままその乳首を口に含み優しく吸ってみました。すると、どこからともなく懐かしいというかなんとも言えない味が口の中に広がります。でも、それは母乳という栄養のありそうなものとは程遠くかなり薄い味・・・言ってみれば、言われて初めてこれが母乳であると分かる風合いとでも言ったほうが的確かもしれません。
私が左右交互にその母乳を吸い続け、それがようやく落ち着いた頃母さんの手が私のアレに伸びて来てソレをむんずと掴みました。
「何・・・アレだけやってまだ足りないの?こんなにカチカチになって・・・。もしかして赤ちゃんプレイって好みだった?」
そう言いながら母さんは、まるでいたずらっ子のような瞳で私にそう問いかけました。
「いや・・・これは朝勃ちってヤツで・・・」
こうなったらこう答えるしかありません。でも・・・この乳首っていうものはこんな風にオトコを興奮させたり、逆にオンナというカラダにスイッチを入れたり・・・・赤ちゃんに母乳を与えたり、本当にいろんな用途というかなんとも言い難い魅力があります。
大きかったり小さかったり・・・・ピンクだったりそうじゃなかったり・・・乳輪もまた然り・・・本来授乳の時以外は無用の長物のはずなんですが・・・。
そして母さんはそのカチカチを撫で回しながらため息を吐きました。
「もう・・・本当に若いね。コウちゃんでも翌朝はグロッキーなのに・・・。これじゃ、あのマコトさん大変よね。」
「何が大変だって?」
「だって・・・お泊まりになんてなったら夜となく朝となく、後ろから前から何回も・・・でしょ?アンタたち、これまでに何十回何百回ってやってるんだよね・・・マコトさんってあんな可愛い顔してるのに・・・」
「母さん。母さんって変な誤解してる・・・。僕とマコちゃんって数えるくらいしかそんなことしてなくって・・・しかも、1年半くらいしてない・・・」
「えっ?アンタたち・・・・・そういう関係だったの?ゴメン・・・・」
「いや・・・そういう関係って・・・。そう言う関係ばかりがこう言う関係とは限らないと思うけど・・・」
この時自分が何を言っているのか分からなくなって来ています。そんな私に向かって母さんが話を続けます。
「ごめんね。母さん先走っちゃって・・・婚約なんて・・・アンタの気持ちも考えないで・・・」
そんなことはありません。いろいろと寄り道はしていますが、早かれ遅かれ最終的にはマコトとそうなるものだと思っていたんですから・・・。
「いや・・・いずれそうなるって腹決めていたから全く問題ないんだけど・・・」
「ん?・・・・・だから、ふたばさんに求めたってこと?」
その時母さんは、私も気にしていたその寄り道についてそう指摘しました。
「そっ、それって僕がふたばのカラダを性の吐口にしたってこと?」
「まっ・・・有り体にいえばそうなるんじゃない?」
全くその通りです・・・世間一般的な見解としては・・・。
つまり、心に決めた女の娘がいてもなかなかその娘に逢えないと言う時に他の女の娘に手をつけると言うことはそう言うことになります。でも、その時の状況がチョット複雑でした。
「いや・・・むしろ逆だったような・・・。」
それは教育実習の初日ハチロクにふたばを乗せて下宿に帰る途中、助手席に座るふたばに言われるがまま例のラブホに入った挙句そのふたばに押し倒されてしまったというものでした。
そんな関係は、ふたばがこじらせてしまった処女喪失をやり直しところから始まっていて、終いには妊娠までしてしまっていました。結果的には流産という形で終わってはいますが・・・
その時ふたばの入院先に駆けつけた私は、処置を終えたばかりのふたばにプロポーズしていました。
「今は他にやぶべきことがある」と言って断るふたばのことが本当に好きでした。でも、これはマコトと出逢ったばかりの頃で、そのマコトは私の友人である織田の彼女であるアキラの妹という感じでした。
そんな会話をする母さんの表情はすっかり母親のモノとなっています。その表情からは昨晩見せた「オンナ」という部分は見受けられません。
でも、昨晩そんな母さんは私を締め上げグロッキー寸前まで追い込んでいました。それを思い出すだけでアレがジンジンしています。
「母さん・・・。アソコ大丈夫?僕のこと絞め殺すくらいチカラ入ってたんだけど・・・。」
「そりゃそうよ・・・頭ん中真っ白だもん。アンタのソレなんて思いやる余裕なんかなかったんだけど・・・命拾いしたね・・・まーくん。」
「命拾いって・・・・?」
「もう少しでギロチンしちゃうところだった・・・文字通りのギロチン」
「ん?ギロチンがどうしたって?」
「アンタの・・・チンが・・・ジョキっと・・・」
「いや・・・もう少しで真っ二つになる感じだった・・・」
「そうでしょ?だって、母さんって昔バナナ相手に猛特訓したもん。」
「えっ、母さんってバナナ切れるの?」
「あれって、ストリップ劇場だけの専売特許だと思ってた?」
「うん・・・。見たことはないけど、話には聞いたことがあって・・・。でも、母さんってやっぱり変態?」
「だから言ったでしょ?ジジイどもとのセックスを早く終わらせることをたくさん勉強したって・・・」
「でも・・・そんなことしたら義父さん・・・やっぱりグロッキーだ。」
「うん。だから普段はセーブしてる。だってせっかくのコウちゃんとのセックスが早く終わっちゃうとつまんないでしょ?でも・・・今回は別。母さん頭真っ白になっちゃって・・・アンタのモノ労る余裕がなかった。」
「ちょっと・・・自分の子供に自分のセックスをそんなあからさまに告白する親っている?ちょっと生々しいんだけど・・・ん?真っ白ってことは、僕が染めた色って真っ白ってこと?」
「うん。そうね・・・子宮の中まで真っ白ね。」
「そりゃ、あんだけ搾り取られれば・・・」
「でも・・・・母さんって、その・・・排卵日だったんでしょ?」
「うん。それが?」
「その・・・これで妊娠しちゃったら・・・」
「あっ・・・そのこと?もし、コレで妊娠しちゃったら・・・麻美子のところに養子に出すからそれでいい?」
「なんで僕に同意を求める必要が・・・」
「だって・・・それで産まれた子供ってアンタの子でもあるんだよ・・・」
「えっ・・・でも・・・うん・・・やっぱりそうだよね。その時は腹括らないと・・・」
「あっ、脅かしてごめんなさい。その時はコウちゃんの子供ってことにするから心配しないで・・・。世間一般的に見てもそういうことでしょ?こんな親子でって・・・そんな異常な関係なんて小説の中だけだって・・・」
「う・・うん。そういうことにしておいてくれるんなら・・・」
「でも、母さんもこんな歳だから妊娠なんてことはないと思うの。のどかを産んだのも奇跡的だったと思う・・・。でも、母さんもまだ排卵するカラダだから受精はするかもしれない。もしかすると今頃お腹の中でアンタの精子と母さんの精子が出会って受精してるかも・・・。」
「それじゃ妊娠してるかもしれないってこと?」
「違うの。受精しただけじゃ妊娠したうちに入らない・・・。それから次に受精卵が子宮に着床しないと妊娠は成立しないの。でも、その着床も最初の段階はすごく不安定なものだから流れちゃう可能性も多くって・・・しかも、歳取ると共に着床する確率もガクッと下がる・・・。」
「それじゃ、その子宮の中も年齢に関係あるってこと?」
「うん。まっ、例えるならフカフカのベッドで受精卵を迎え入れるか・・・・ムシロの上で迎えるかの違いくらいかな?しかもオンナのカラダって生理周期ってあるでしょ?その周期の中でもそんなベッドを準備できるのもほんの数日の期間限定・・・。」
「期間限定ってことはその期間以外はどうなるの?」
「そのベッドって・・・使わないことが分かると廃棄処分されるの。」
「廃棄?処分?」
「うん。女のカラダってよく出来ていてね・・・使わなくなったそのベッドが子宮の壁から剥がれて外に排出される作りになってるの。」
「それって・・・生理?」
「うん。そうだよね。生理がキチンとあるってことは、子宮の中でキチンと受精卵が受胎できる準備が出来ている証拠なの。生理不順だったりって言うことはその準備に何らかのトラブル抱えてるってことなの。」
「それってホルモンの影響とか・・・?」
「うん。それが一番影響あるところだね。たまにあるのが生理不順で悩んでた人が彼氏できた途端にそれが治っちゃうこと。」
「それって・・・男性ホルモンが取り込まれて、女性ホルモンが活性化されるってヤツ?」
「あれ?詳しいじゃん・・・。でも、恋をする事でも女性ホルモンが分泌されるってことも・・・よく言うでしょ、恋をすると女の子が綺麗になるって・・・アレ。」
「あっ、そういえばそんな事聞いたことある・・・」
「あとね・・・女の子は花と同じなの。」
「咲いてる花?」
「うん。綺麗に咲いている花って、みんなに観てもらって綺麗だねって言ってもらえるとますます綺麗に咲こうとするの。でも、誰にも見てもらえなかったり水も与えてもらえなかったりすると枯れちゃう生き物なの。」
「それってどこかで聞いたことある・・・」
「だからさ・・・女の娘のちょっとしたことでも気づいてあげて褒めてあげたりすると、その女の娘が自分が見られてるって自覚してますます・・・ヒトって欲張りでしょ?何か一つ褒められたりすると、もっと・・もっと・・ってなるでしょ?」
「うん・・そうだよね。でもオトコって・・・その綺麗な花にいつまでも綺麗に咲いてて欲しいって思うもんだと思う・・・」
「でもさ・・母さん枯れかかってたんだよね。一応コウちゃんに出会ってから色んなもの与えてもらって挽回しようとしたんだけど・・・やっぱり年齢には勝てなかった。そんな枯れかけたカラダのムシロみたいな子宮のベッドで育ったのどかがなんか不憫で・・・」
「それって言い過ぎだよ・・・のどかは母さんのその子宮で育ったわけだし・・・」
「うん。ありがたいよね。出産適齢期の若い女の人のような快適な子宮じゃなくって、母さんみたいな歳いって若くない子宮でも文句言わないで育ってくれたんだから・・・でも・・・」
その後・・・・いろんなところに付着したいろんなベタベタを濡れタオルで拭き取り、パンツに足を通していた母さんが話題を変えました。
「ねえ・・・。のどかってチョット幼いと思わない?」
「ん?そう?3歳児なんてみんなこうなんじゃないの?」
「でも・・・のどかって口が重いっていうか・・・あんまり言葉が出てこないって言うか・・・」
「うん・・・おませさんじゃないことだけは、見ていて分かるような気がするけど・・・」
「そうなんだよね。のどかの同級生なんて、ペラペラ喋って大人の話に割って入るようなおませさんもいるって言うのに・・・」
「母さん・・・もしかしてソレって・・・?」
「うん。アンタが今思っていることなの。小児科の先生に診ては貰っているんだけど・・・高齢出産だったからある程度の覚悟はしていたんだ・・・。もしかして発達障害抱えてるかもって。」
「で・・・でも、今だけかもしれないし・・・様子を見れば・・・」
「うん。今はそうすることしかできない。でも・・・最悪なこと想定すると小学校では特殊学級に通うことになるかも。」
「特殊学級・・・・」
「でも、せっかく授かった子供でしょ?もしどうなったとしても・・・母さん、一生面倒見るから良いの。モノは考えようだと思うんだ。女の子ってお嫁に行っちゃうでしょ?それまで20何年間しか一緒にいられないんだよ?それでもしお嫁に行かなかったとして・・ずっと一緒にいられるなんて母さん幸せ・・・・」
この時ブラジャーを着けていた母さんの目頭が潤んでいたのが分かりました。
「やっぱり・・・僕のせいだ・・・・。母さんにこんな思いさせるだなんて・・・」
私が呟くようにそう自分に言い聞かせていた時、頭からTシャツを着ようとしながら母さんが会話を続けます。
「もし。発達障害だったとしても色々あって・・・こっちがダメでも別なところががめちゃめちゃ出来るって場合もあるみたいなの。それって芸術家に多いんだって・・・。芸術の世界って常人じゃ理解できない感覚ってものあるでしょ?だから、母さんはコレからのどかに何が起きても否定しない。」
「うん。人なんて何を持って生まれるか・・・・どんな生き方するかなんて誰にも分からないし・・・」
すると母さんが上半身にTシャツ、下半身はシルクのパンツというちょっとだけセクシーな格好でベッドに腰掛け、寝ているのどかの頭を撫でながら私に尋ねました。
「まーくん。オンナの幸せってなんだと思う?」
「そりゃ・・・いいオトコと結婚して、子供産んでその後幸せに生活することでしょ?」
「うん・・半分当たり。」
「えっ?ソレじゃ半分ハズレってこと?」
「うん。肝心なところが抜けてる・・・」
「もしかして・・・ソレってアッチのハナシ?」
「うん・・・それも重要だけどね。じゃ、オトコとオンナって何が違う?」
「そりゃ・・・子供を産めるか産めないか・・・」
「うん。そうだよね。コレからの社会では男女が平等に扱われる社会になると思うの。でも、いくら時代が変わっても人々の考えが変わっても・・・普通に性転換手術が出来る世の中になっても、子供を産めるのはオンナだけなの。」
「そりゃ・・・太古の昔からソレは変わらないと思うけど・・・」
「うん。だからオトコはいくら頑張っても・・・子供はつくれるけど産むことはできない。・・・」
「母さん・・・・母さんは何が言いたいの?」
「さっきさ・・・まーくんがセックスって男女の共同作業って言ったよね?」
「うん・・・言ったよ。ソレが?」
「セックスが共同作業なら、子育ても共同作業ってなるよね?」
「うん。当然そうなる。」
「でもさ・・・お腹に命宿すってことと、子供を産むってところはオンナしかできないの。しかも、母乳与えるってことも・・・・」
「そうだよね・・・オトコって見守ることしか出来ない・・・・。強いて言うなら、安心して子供を産んで育てる環境を創ることくらいしか・・・」
「母さんね・・・・。のどかを授かってから凄く幸せだったの。そりゃ、つわりだったり妊娠中毒症なんてのもあったけど、自分のお腹の中で一つの命が生まれてソレが育ってお腹がだんだん大きくなって・・・・まだ一人前の妊婦になれるんだ・・・まだまだオンナだったんだって思うとすごく幸せだった・・・」
「でも、妊婦って色々と大変なんでしょ?」
「そりゃ大変だよ・・・。いろんな制約受けるからね。カラダのサイズだって変わるから服も買わなきゃならないし・・・チョットの期間しか着ないのにね。」
「うん。ソレって俗に言うマタニティーってやつでしょ?」
「そうだよ。昔は決まりきった物しかなかったけど、今じゃ可愛いのとかいろんなものがあって・・・マタニティーファッションなんてのもあるの。時代が変わったのね・・・。」
「うん・・・前に芽衣子姉さん(従姉妹3姉妹の長女)の結婚式に行った時、おさげ髪の普段着姿のオーバーオール姿がすごく可愛かったのが印象的だった・・・。あと、マタニティーのワンピースも。」
「あれ?オトコってそう言うところに惹かれたりするわけ?」
「いや・・・素直に可愛いと思っただけなんだけど・・・。でも、その芽衣子姉さんの旦那さんって確かナース好きだったと思う・・」
「そうか・・・ナース好きか・・・。でもちょうどいいじゃん。芽衣子ちゃん看護婦なんだし・・・。夜なんて楽しそう・・ナースプレイとか・・・」
「母さん。ちょっと飛躍しすぎ!全く自分の息子を前にしてそんなこと言って・・・。でも、人にはそれぞれ好みがあるから、その夫婦さえ良ければ・・・」
「そうだよね・・・。ソレじゃアンタはバスガイドプレイしちゃう訳?ソレともそこにかけてあるセーラー服で?」
その時母さんは、壁にかけてあったマコトのセーラー服を指差しています。
「ちょっと!自分の息子なんだと思ってるの?」
「ん?母さん譲りの変態・・・そうでしょ?」
「えっ?自分の変態を認めちゃうってこと?」
「いけない?だってそうでしょ?誰しもどこかおかしいところがあるって言ってるでしょ?そのおかしいところがこんなシモの話って楽しいでしょ?」
「う・・ん。今が夜で、しかもお酒の入ったうえでだったらまだしも・・・」
「でもさ、ナースでもバスガイドでもセーラー服でも、ソレ着ればそんなプレイになるでしょ?そこのセーラー服着てみよっか?へそ出しミニスカートになっちゃうけど・・・」
「まっ、どっちに転んでも変態だけど・・・」
この時、母さんがマコトのセーラ服を着たらどんなことになるのかちょっとだけ想像してしまいました。でも、自分の母親もそうですが・・・ソレにも増して自分がとことん変態なんだと自覚し始めていました。
私は過去に、そのナース姿でも・・・バスガイド姿でも・・・セーラー服姿でも着衣セックスをした事がありました。しかも全員ホンモノ・・・。実は、誰よりも自分自身が一番変態?
そんなことを考えて身震いしているしている私に母さんが問い掛けました。
「でも、そういうプレイって外見的なものであって着替えればどんなプレイも出来ちゃうの。でも、妊婦プレイっていうのはホンモノでしか出来ない・・・」
「か・・・母さん。ソコまで来たら本当の変態だよ・・・」
「でもさ、考えてみて?結婚したらそんなプレイすることになるんだよ・・・でも、そもそも妊婦プレイ好きなオトコって結構いるって聞くし・・・。もし、マコトさんが妊娠したら前からしちゃダメだよ。お腹を圧迫するからね。あと、上に乗せてもダメ・・・。子宮を刺激するからね。するときは後ろからそっとするんだよ。決してバンバンしないように・・・」
「バンバンって・・・」
「あと・・・」
「あと、何かあるの?」
「出産後の性生活も重要よ・・・。オンナのカラダって不思議で、大体の人は授乳してる間って生理が来ないの。」
「それじゃ、断乳すると生理が来る・・・つまり妊娠できる状態になるってこと?」
「うん・・・そうなんだけど、その頃ってものすごく妊娠しやすいカラダになるの。」
「どうして?」
「これって母さんの勝手な解釈なんだけど・・・昔、人の赤ちゃんの存命率って物凄く低くって、生まれてすぐ死んじゃうなんてことがザラだったと思うの。だからそんな時すぐ次の子供宿せるようにって・・・神様が考えたと思うんだよね。」
「なんかそれって神秘的だね・・・」
「でも、そんなことですぐ妊娠しちゃったら妊婦が赤ちゃん育てることになるんだよ・・そりゃ大変。だから、その頃の避妊は重要事項。」
「うん。でも母さん・・・チョット急に何言いだすの?こんな朝から・・・」
「もちろん教育。夫婦の営みっていう共同作業に対する親としての教育的指導・・・いけなかった?」
「いや・・・チョット具体的過ぎて・・・朝から刺激が強いって言うか・・・」
「その子育て・・・母さん手助けしてあげられないかもしれないから・・・一応ね。まっ、そのうち分かるからいいと思うけど・・・」
「うん。そのうち・・・ね。」
この時、私は母さんが手助けしてあげられないかも・・・なんて言い出した真意を深く考えませんでした。これは少し後に分かることなんですが・・・。
そしてその教育的指導をした母さんが話を続けます。
「ソレでさ・・・。のどかが生まれる時、コウちゃん(義父)に立ち会ってもらったの。出産って行為もその共同作業にしたくって・・・でも、その出産立ち会いって急に立ち会いたいって言っても出来るものじゃないの。」
「どうして?」
「オトコって精神的に弱いところがあって、出産なんていう惨状に出くわすとそのショックで勃たなくなっちゃうことがあるんだって・・・だから妊婦検診の時いつもコウちゃんについてきてもらって、先生からいろんな話聞いて心の準備してもらって・・・」
「ショックでインポって・・・・それほどの惨状なの?」
「そうよ・・・。まずアソコから出て来るのって赤ちゃんだけじゃないの知ってる?」
「えっ?他になんかあるの?」
「あるわよ・・・。後産(あとざん)って聞いたことあるでしょ?」
「うん。」
「赤ちゃんって生まれた時にへその緒で母親と繋がってるよね?」
「うん。」
「それって、どこに繋がってる?」
「えっ?・・・・・・どこだろ?」
「うん。分かんないよね。それって胎盤って言うものに繋がってるの。まず子宮の中に胎盤がくっついてて、それにへその緒がついてて赤ちゃんに栄養を届けるの。でも、赤ちゃんが生まれるとそれが無用の長物になるから子宮から剥がれて出てくるものなの。」
「剥がれるって・・・チョット想像が・・・」
「赤ちゃん産むと初乳与えるでしょ?それって赤ちゃんが母親から大切な栄養素をも貰うって重要なことに加えて、その初乳を与える乳首からの刺激で子宮収縮を促すの。」
「えっ?それじゃ、乳首と子宮って繋がってるの?」
「不思議でしょ?そうすると収縮された子宮から胎盤が剥がれてくるの。でも、剥がれるんだからそれなりの出血もある。その時出血多量ってことにもなりかねない・・・そんな中、赤ちゃんの後から出てくる肉の塊・・・それが後産、つまり胎盤ってこと。つまり出産ってそんな惨状なの。」
「いや・・・そんな惨状・・・オトコに耐えられるのかな?」
「それだけじゃないの。陰部切開ってのもあって、生まれる赤ちゃんの頭が大きくってお産が大変そうになる時、裂ける前にあらかじめアソコを切っちゃうことがあるの。母さんね、アンタが生まれる時切開してね・・・・今でもその時縫った跡あるの。見せてあげよっか?」
母さんはその時、履いたシルクのパンツを脱ぐ素振りを見せました。
その時私は咄嗟にその申し出を断りましたが後に引けないは母さんがチョット怒り口調で話を続けます。
「チョット・・・見なさいよ!それってアンタがここから産まれたっていう紛れもない証拠なんだから・・・」
そう言いながら、母さんがのどかが寝ているベッドの足元でパンツを脱いでM字開脚をして私にアソコを見せました。
「ほれ・・・ちゃんと見て!」
私は怒り口調で母さんに促されるようにソコに顔を近づけて凝視しました。
母さんのソコは綺麗に脱毛処理されていて、言わばパイパン状態です。そんなまっさらなところにあるグロテスクでありながら神聖な場所・・・
「チョット見てみて・・・下の方・・・」
顔を近づけた瞬間どこからか栗の花の匂いが鼻につきます。そして両手で左右に広げてそれを探したところ、ビラビラに隠れるようにソレがありました。
それは時計で言うちょうど四時の方向に一針縫った部分が・・・
「母さん・・・縫ってあるみたいなんだけど・・・」
「うん。そこ・・・。その時ソコが裂ける前に先生がハサミでジョキっと切ったの。」
その母さんはアソコ丸出しのままあっけらかんにそう答えました。この時女性というか・・・母親の強さを再認識した次第です。
そしてそれを見終わった時にソコから白っぽい液体がジワッと湧き出しました。
私は何も言わずティッシュでそこを拭こうとして左手でソコを広げようとした瞬間母さんのカラダがビクッと跳ね上がるように反応します。
「チョット・・・・ソコは敏感だって言ったじゃない!全くこんな朝から・・・」
そんなことを言われた私が自分の手を確認しました。右手でソコを拭こうとした時、左手の親指がそのワレメの上にある突起物に触れていました。
「まったくもう・・・こんな朝からヤリたくなっちゃったらどうすんのさ・・・。のどかが起きるかもしれないし・・」
「あっ、ごめん・・・。でも、そんなところ切っちゃった訳でしょ?痛そうだけど・・・」
私が大股開きで寝た状態の母さんにそう質問すると、パンツを履き直した母さんは改めて私の前に正座し直しそれに答えました。
「そうよ・・・痛いわよ・・・麻酔なしだもん。」
「麻酔なしって・・・」
「でも、出産ってオトコが想像できないくらい凄く痛いものなの。だからそんな切っちゃう痛みなんてそれに比べたら・・・」
「いや・・・それに比べたら・・・って。一体どんな痛みなんだろ・・」
「そうね。お腹に木杭を打ち込まれるような感じくらいかな?しかも一気にじゃなくジワジワと何回も何回も・・・」
「それって・・・・ケンシロウじゃないけど、それだけてお前はもう死んでいる・・・状態だよ。」
「うん・・・死にそうなくらいな痛み。でも、みんなそんな思いしながら新しい命が生まれて来るの。まっ、やむを得ず帝王切開する場合とか、今じゃ無痛分娩なんてもので生まれる場合もあるけど・・・」
「でも、その出産の痛さって陣痛が始まった時からずっと続くの。最初は波があって痛かったり、なんでも無くなったりすることもあるけど・・・それが我慢できないほどの痛さになってきた頃に出産を迎えるんだよね」
「そ・・・そうだよね。あんなに大きな胎児が出ようとするんだから・・・・」
「でもね、赤ちゃんのほうも産まれやすいように頑張ってるんだよ・・・頭が小さくなるように頭蓋骨のつなぎ目ズラすたり・・・コレって太古の昔からそうなんだよね・・・」
「うん・・・それこそ生命の神秘・・・」
「でもさ・・・そんな大変な思いして産んだ自分の赤ちゃんってすごく愛おしくなるのよね。恐らく苦しめば苦しむほど愛おしさが大きくなうっていうか・・・」
「僕の時はどうだったの?」
「アンタってお腹の中で大きくなり過ぎちゃって・・・それこそ大変だった。早く産まないと母体が保たないってってことで帝王切開になるところだったんだけど、母さんが自然分娩にこだわっちゃって・・・それで陣痛促進剤を打ってもらって、敢えて茨の道を選んだの。」
「それで・・・アソコをザクっとやっちゃったってこと?」
「うん。だって本当にアンタって大きな赤ちゃんでさ・・・・」
「確か4千グラム近かったって・・・・」
「うん。そうだよ・・・。産まれた赤ちゃん見て助産師さん驚いてたもん。でも、コレこそがオンナの幸せなんだよね・・・何せ命を生み出すんだから」
「そうだよね・・・ソレってオンナの人じゃないと絶対できない体験・・・」
「だから・・・だから、母さんはアイツのこと絶対に許さない。麻美子のそんな幸せを奪ったアイツのこと一生許さない。」
「ソレって・・・あのオトコ?」
「うん。そう・・・アンタが病院送りにした・・・・アイツ。」
「うん・・・」
その時母さんが言ったその「アイツ」とは、麻美子姉さんをレイプした犯人のことです。姉さんはソレにより子供を産めないカラダになっていました。その姉さんは結婚というものを諦めていましたが、高校生の時の同級生だった良ちゃん(舞衣さんの弟で小林車体という整備工場の跡取り)からソレでもいいからと結婚を申し込まれ、近いうちに挙式する予定になっています。
そのレイプ犯が今何をしているのか分かりませんが、私も母さんと同じく姉さんからその「オンナのしあわせ」を奪ったその卑劣な行為を行なったそのオトコのことは一生許すことはできないでしょう。
その後ほぼ会話のない中私と母さんが各々身支度を整えていましたが、この時私の中に物凄い違和感が込み上げて来ました。
それは今まで母さんの言った言葉の一つ一つが、私に対して何か言い残す的な感じになっていると言うものです。それも遺言の如く・・・。
もしかしてその母さんが遠くに行ってしまう・・・とか?
でも・・・義父さんは多少の異動はあるものの地方公務員という立場上どこかへ行ってしまうなんて考えられません。と言うことは、実は私は重い病気か何かで先が短いとか・・・?本人が知らないだけでみんなそれを知っていて気遣っているだけ?
でも・・・これから母さんの手を放れて家庭を持つと言うことを考えれば「この際伝えておこう」みたいになっていたのかもしれませんが・・・
それから支度を整えた私たちは、のどかやふたばを交え下宿の玄関脇にある食堂で朝食を摂っていました。時間的に下宿生より1時も早い時間となっています。
その時、のどかを膝に乗せ目玉焼きを食べていた母さんが私を見ながら口を開きました。
「ねえ、今日の予定は?」
「うん。今日は朝に全校集会があってその後は短縮授業。午後は来週からのテストに向けたロングホームルーム・・・。あと、活動が認められてる吹奏楽部は1時間だけ活動するってところかな?」
「ふ〜ん・・・。それじゃ、そのホームルームとやらが終わった後ね。」
「ん?何が?」
「アンタ忘れたの?・・結納。」
「えっ?それ、本気だったの?」
「ウソついてどうすんの!」
「なんかさ・・・ハナシが急展開すぎて、ちょっと騙されてるような感覚だったから・・」
この時隣で味噌汁を啜っていたふたばが箸を置きました。
「お母さん・・・結納って本気だったんですね。でも、学校でやっちゃうなんてお母さんらしいです。」
「ふたばさん・・・いろいろとコレ(私のこと)の面倒見てもらっちゃってありがとうね・・・。」
「そんなことないです。いつも飼い主探す迷い犬みたいにフラフラしてたんで鎖で繋いで置いただけなんですが・・・」
「僕って・・・いろんなヒトから迷い犬みたいだって言われてるけど、そんな犬から昇格してコレから結婚に向かって走り出そうとしてる・・・。なんか騙されているみたいだ。」
「騙してどうすんのさ・・・。そのアンタが走り出すために今日の予定決めてるんだから・・午前中銭湯に行って・・・銀行に行って・・・フェリー埠頭にマコトさんのお母さん迎えに行って・・・アキラさんの病院寄ってそしてお昼の後学校かな?忙しいな・・」
これが母さんの今日の予定だそうです。なんともその忙しそうなスケジュールの中に銭湯が入っているのは風呂好きな母さんらしいところですが・・・。
でも、その母さんが口にした銀行というフレーズが重くのしかかります。今までマコトとは彼氏と彼女という関係でしたが、その結納金というモノがマコトのお母さんに渡った瞬間・・・両家の縁談が整い婚約者同士ということになります。
今日は私の運命が動く記念日となるんでしょうか?
「おはようございます。小林です。風谷先生・・・迎えに来ました。」
母さんとそんな会話をしていた時、食堂すぐ脇の玄関から聞こえたのは舞衣さんの澄んだ声でした。
今日は私のアルトを母さんが使うことで学校の行き帰りを舞衣さんにお願いしていました。
「今日からウチの息子お世話になります。何か変なことしようとしたら引っ叩いて構いませんので・・・」
母さんがそう挨拶する脇で話を聞いていたふたばから視線を感じます。恐らく私が何かやらかすであろうとでも思っているかと思います。でも、そんな疑いを否定するかのように舞衣さんが言葉を返しました。
「それは心配ありません。義姉に変な気を起こすほど度胸ある感じじゃありませんので・・・。」
「それもそうね・・・」
そこで疑り深い母さんの疑念も晴れたかな・・・?
「あと、午後に空き教室準備していますので、お越しになった際にお声掛けください。」
忘れかけていましたが、この空き教室が結納を取り交わす場所になるかと思います。
「場所準備してもらっちゃってありがとね。」
「全然手間じゃありませんのでお気遣いなく。」
「じゃっ、部屋の片付けやっておくから行っておいで。あと、ふたばさんも行ってらっしゃい。」
そういう母さんに見送られて、私とふたばが舞衣さんのEP71(ジムカーナ競技用のスターレット)に乗り込みました。そのクルマは競技用というだけのことだけあって走行中路面の段差や継ぎ目を全て拾い上げ振動として我々に伝えます。
その決して快適でないクルマに乗っているふたば、185センチという高身長のため後部座席に座れないため、クルマに乗るときいつも助手席に座ります。でも。このクルマはハチロクより天井が高いのでそれほどシートを倒さなくても頭がつかえませんが・・・・それでも窮屈そうな様子は変わりません。
そんなふたばが、左手でロールバーを握りながら運転する舞衣さんの後ろに座る私に振り返るようにして尋ねました。
「アンタさ・・今日の予定は?週末バタバタしてたみたいだけど予習出来たの?」
「なあ、ふたば。週末の僕の様子見て予習なんて出来たと思うか?」
「まっ、そんなところでしょうね。どうせ空き時間にまた変な資料作るんでしょ?」
そこまで会話が進んだところで運転していた舞衣さんが会話に加わりました。
「そういえば、風谷先生の授業の手作り資料が面白いって噂よ・・・」
「えっ?どんな噂ですか?」
「スケッチブック・・・使うんだっけ?そこに何でそうなるかってプロセスを、ヘッタクソな絵なんて使って分かりやすく解説するって。しかも身近な話題を使って眠くならない工夫もしてるって・・・」
「そんな・・噂ってほどでも・・でも・・僕って絵心がないんで勘弁してください・・・。」
その時私は、自分の表現力が不足しているものの補完資料としてやむを得ず作成していた手作り資料がそんな評価をされることにちょっと驚いていました。
「あと・・・」
「まだ何かあるんですか?」
「うん。授業の最後に必ずある雑談タイム・・・それって結構好評みたいだよ。」
実はその雑談タイムというのは、私が授業を進めるペース配分を見誤り残っしまって残った時間にバイクの話をしたのが始まりでした。その後は彼女の話だったり、高校生の興味があるようなちょっとエッチな話題も含めた内容にもなっています。
「実習期間ってたった2週間じゃ無いですか?生徒と喋る時間なんてほとんどないんですよね。だからコミュニケーションを取るのにあえて設けています。でも、これってクラス担任の佐藤先生が認めてくれたからなんです。」
その佐藤先生とは工業土木のベテラン先生です。元々スクールウォーズみたいなクラスを崩壊させないだけでも大したもんだなどと言われいたその先生からやり方は任せると言われていましたので、全く興味のない勉強の話だけ聞かせるのは可愛そうだった生徒たちとのコミュニケーションを取ることを考えてのことでした。
「でも・・・その佐藤先生も定年退職。工業科も今年限り・・・。その最後の年に実習生として来た風谷先生って・・・」
運転する舞衣さんが何かいいたげに、そう私に問いかけました。
「そうなんですよね。前も言いましたけど、僕の母校から受け入れ拒否にあって・・・縁あってこっちの付属校にお世話になっています。」
高校時代に手錠を掛けられた経歴のある私は、自分の母校から拒絶されたような感じになっていました。
「まっ、いいじゃないの。そのお陰で一緒に教育実習受けられるんだから・・・」
そこで口を挟んだのはふたばでした。どう言う訳かふたばがそんなことを言うのが意外というか・・・そんなふたばが話を続けます。
「わたしってさ・・・そもそも先生目指すって柄じゃなかったんだけど・・・」
「えっ?ふたばって先生目指すためにあの大学目指したんじゃないの?」
私の母校のすぐ近くにあるふたばの通う大学は教育学部が有名な大学でした。まず、そこに進学した学生は先生になるのが当たり前かと思っていましたが・・・
「わたしの専攻は経済のほう・・・。わたしって計算好きだから数字で追い込めるものはとことん突き詰めちゃうタイプなの。」
「でも、今・・・ふたばは先生になろうとしてる。先生になるなら初めから教育学部のほうが・・・」
「うん・・・。そうなんだよね。わたしってそもそも人付き合いが苦手で、人前で自分の意見なんか話すのなんてもってのほか・・・」
「じゃ・・・なんで?」
「アンタだよ。アンタの影響!」
「えっ?僕?」
「あれ?風谷先生って、豊浜先生(ふたばのこと)の人生変えちゃったってこと?」
「い、いや・・・決してそんなこと・・・」
その時私が運転する舞衣さんにそう返すと、助手席のふたばが前向きに座り直し遠くを見るような表情で改めて話を続けました。
「大学入ってすぐの夏休み・・・アンタとちょっとだけ付き合ったことがあったでしょ?あの時人生観が変わっちゃって・・・」
その夏休みは、例の麻美子姉さんのレイプ事件で噂の絶えない実家に戻れない私と、逆に大学から実家に戻ってきたふたばが2人で過ごした夏休みでした。
翌年事故で廃車になってしまうCBX400のタンデムシートにふたばを乗せて自動車学校に通う傍ら、一緒に市営プールの監視員にバイトも一緒にやっていました。
そんな中、ふたばから小学生の頃下宿生からイタズラされて男性不審になってしまっていることを告白され、こじらせてしまっていた処女喪失をやり直したということがありました。
でも、その時地元にあおいという彼女がいた私を気遣ったふたばは、この時の交際を夏休み限定ということにしてくれていて、その最後の日にふたばが私を振るということを決めてその夏休みを過ごしていました。
その夏休み期間、ふたばとは生理期間を除いた期間毎日何回もヤっていたような気もします。しかも夏休みの終わりが近づくとともにそれも激しく・・・。その時のふたばのカラダや髪の毛に残ったプールの塩素の香りの印象が強く、その後しばらくその塩素の匂いを嗅いだだけで勃起してしまう程でした。
今考えればその時ろくに避妊もせず、サルのようにヤりまくってよく妊娠しなかったモノだど思っています。でも、その後成人式の時にふたばに頼まれて彼氏を演じた時は一発で妊娠させてしまってはいましたが・・・
そしてふたばの言う夏休みの最後の日、付き合っていることを感づかれた下宿のおばさんにわざと見えるようにしてふたばは私のほっぺを引っ叩いてその時は終わっていました。
でも、2人で過ごしたそんな夏休みがふたばの人生観というものまで変えていたなんて・・・。
そんなことを考えていた時・・・そのふたばが話を続けます。
「わたしって、教育学部でもないのに教育課程受けてる変わり者って事になってるの。数学極めようとしていながら先生も目指してるって・・・一説には数字フェチの変態って言われてるみたいだけど・・・」
「・・・数字フェチ・・・?う〜ん。その感覚がちょっと分からない・・・」
「わかんないよね・・・乱数表見てるといろんな公式やら方程式が頭を過ぎる感覚って・・・」
「それって・・・絶対変態だよ。」
当然です。一応理系の私ですが・・・・・実は数字関係が苦手でした。そもそも、コレまで大学でやってきた実験などのレポートや論文の作業は、いつもペアになってなっている友人の織田がいろんなデータを拾って解析し、理想的な答えを見つけた後、私がそのデータに基づいて文献を紐解き、さらに理論武装を行うという作業分担をして来ました。
今考えると、私が考えていたことといえば織田が導き出した数値の理論を文章で表現していたに過ぎません。コレって・・・私って・・・本当は文系向きなのかも・・・。
しかも、考えてみれば文章を書くのは少しも苦ではありませんし、ページ数を稼げと言われればいくらだって書き足すこともできます。反面、簡潔にまとめるのが苦手だったりしますが・・・。
そもそも私は望んで理系に進んだわけではありませんでした。言ってみれば気がつけばこの道に進んでいた・・・ということになります。でも・・・これは自分の母さんが仕組んだことなんですが・・・。
この時初めてそんな感覚となっていました。今となってはどうしようもありませんが、理系・文系の悩みはその後数十年考えさせらる事柄となります。
「アンタ・・・なに難しい顔してんのよ!」
私がそんなことで思い悩んでいたところにふたばがそう尋ねて来ました。
「う・・・ん。僕ってやっぱり迷い犬?ここに来てまだ悩み事が増えちゃって・・・」
「アンタってさ、物事・・・みんな言葉で考えるでしょ?しかも小難しく屁理屈考えながら・・・」
「ふたば・・・そりゃ失礼ってもんだ。でも、人って自分を納得させる屁理屈考える生き物じゃないのか?」
「なに?アンタって自分が納得しないと満足しない訳?」
「そりゃそうだろ?一つ納得できないことがあると次に進めない感じじゃない?」
私が半ば言い訳がましくふたばに反論した時そんな時、今までうん・・うん・・と、相槌を打ちながら話を聞いていた舞衣さんが会話に参戦しました。
「社会人になるとさ・・・納得できないことなんて日常茶飯事。納得できないことをやる羽目になることも多くって・・・。自分を納得させるなんてことは到底無理・・・。しかも自分じゃどうしようもできない理不尽なコトばっかり・・・それが社会人ってものなんだよね。」
「じゃっ、舞衣さんはそんな時どうするんですか?」
ちょうど赤信号で止まったそんな時、舞衣さんと助手席のふたばが顔を見合わせてまるで息を合わせるかのようにして言いました。
「・・・ね〜・・・。」
それは二人の声がぴったり合うほど意見が合うみたいですが、私はオトコという生き物です。教育課程で心理学なるものは学んでいましたが、そんな女性の心理なんてものは分かる筈もありません。
「ちょっと・・・二人とも・・・なにが、ね〜・・・なんですか?教えてください!」
2人の会話に乗り切れない私は当然質問しました。それに対して舞衣さんが答えます。
「女の子って・・・単純な生き物の男の子には分からない悩み事っていっぱいあるの・・・」
「いや・・・単純って・・。少なくとも僕にもいろんな悩みぐらいあります!」
そんな私の抗議に対して今度はふたばが反論します。
「そりゃ悩み事なんてみんな抱えてるさ・・・。でも、その悩み事の質とか捉え方がオトコとオンナじゃ違うってことなの。まっ、私もオンナだからオトコの悩みってものは分からない。でも・・・どうしようもない悩みは、甘いものでも食べながら仲良い友達に聞いてもらったり、愚痴ったりすればそれで終了。」
「そ・・・それって、それで終了なの?」
「うん。オンナってさ・・・悩み聴いてくれる友達に自分の思いを打ち明けながら・・・そういう自分のどうしようもない気持ちを口にしながら自分の中で状況を整理する生き物なの。だから聞いている方もその結論に達しなくても、打ち明けている方が自ら整理がついたと思った段階でそれ以上話を掘り下げない。」
「それじゃ結論が出なくてもそれで終了?」
「うん。打ち明けている方が自分で整理できれば結論なんてどうでもいいの。」
「じゃ・・・結論が見えないこともしばしばってこと?」
「だってそうじゃない?そんな悩み打ち明けられても解決できるほど教養もないし偉くもない。できることとすればその悩みを聴いてあげられるだけ。」
「聴くだけって・・・」
「オンナって生き物はそういうもんなの・・・オトコみたいにグジグジ考えたりしない。だって、そんな答えの出ないこと考えてたって仕方ないでしょ?自分を納得させるなんてことは時間の無駄だし精神的に消耗するでしょ?仲良い友達と一瞬でもいいからその悩みを共有できればいいの」
ふたばが言ったその「仲良い友達と・・・」というものは、現代でいう「女子会」かと思われます。オトコってものは、友人なんかに悩み事を打ち明けるなんてことはすごく重いものとなりますが、その女子会とやらでは、みんなでベチャベチャ喋って終わるようなイメージです。
大抵、オトコという生き物は結論を出すことを前提に悩みを打ち明けますが、オンナというものは誰かとその悩みを共有することを目的に悩みを打ち明けるようです。
そんなところが男と女の違いというものなんでしょうか?
私がそんなオトコとオンナのものごとの捉え方の違いについて感心している中、舞衣さんの運転するEP71が高校の駐車場に到着していました。
そして私が駐車場の駐車マスにきちんとに停めたEP71の後部座席から這い出て職員用昇降口へ向かう時、生垣の影から大きな荷物を持ったセーラー服の女子生徒が駆け寄って来ます。
「あっ、優子ちゃん・・・・こんな早くに・・・」
その優子ちゃんは今日から約1ヶ月ほど経過観察のため舞衣さんのアパートに居候することになっていましたが、急遽テスト期間が始まるまでの間についてはふたばが預かることとなっていました。
そしてその優子ちゃんの大きな荷物をEP71のトランクに積み込んでいた時、何かを思い詰めたような表情の優子ちゃんが私の目の前に来て叫ぶように話し始めます。
「やっぱり・・・わたしのことマドカ先生の彼女っていうことにして欲しいんです。もちろん教育実習中だけで構いませんので・・・」
この時、先週この優子ちゃんに「実習期間中は彼女・・・」なんて言ったことを思い出した私は、無意識に隣にいる舞衣さんとふたばの顔を恐る恐る覗いていました。
「まっ・・・いいんじゃないの?先週の事件の話題から生徒達の興味が逸れるかもしれないし・・・。アンタとそういう関係ということにしておけばその話題が蒸し返されることもないでしょうし・・・」
ふたばはそう言うと舞衣さんに同意を得るようにな素振りを見せました。
「まっ、しょうがないわね。高校生と大学生の交際ってどこにでもあるみたいだし・・・避妊さえきちんとしてもらえれば・・・」
舞衣さんはそこまで言うと何かを思い出すようにして「最後の避妊っていうのは余計だった・・」と付け加えています。
「えっ?それじゃ・・・その避妊っていうヤツってやらなくて言いってこと?」
私は顔を赤らめている舞衣さんをそう言って困らせてみました。
すると舞衣さんではなく優子ちゃんがそれに答えました。
「はい。避妊はしなくていいんです。だってわたし・・・まだ生理・・・来てないんで・・・。」
そう言いながら優子ちゃんが顔を赤くしています。
「い・・いや、そうじゃないの。高校生はそんなことシちゃいけないって事。マドカ先生も麻美子さんの演説聞いたでしょ?」
そこで予想外なことを聞かせられた舞衣さんが焦った様子でそう言いました。
「あっ・・そうだった。麻美子姉さんがそういうこと言ってた・・・」
その麻美子姉さんとは私の実の姉になります。その麻美子姉さんが先週急に現れて私のハチロクを引き取りに来た時に話が戻ります。そもそもそのハチロクの車検書上の所有者は姉さんでしたので、私に引き取りの拒否権はありませんでしたが・・・。
そして先週、その麻美子姉さんが現れる直前に起きた実習生によるレイプ事件・・・
それは私と同じく教育実習を受けていた実習生が、舞衣さん担任の1年6組の生徒であるこの優子ちゃんに酒を飲ませてラブホテルへ連れ込んだというものです。さらに事件翌日にはその実習生が一人暮らしをするその生徒宅に押しかけ、今度は媚薬を飲ませて行為に及んでいたというものになります。
そしてそのレイプ事件が噂になりかけた時急遽行われた全校集会でその姉さんが登壇し、現職警察官だった頃担当となった女子高生が風俗で働くハメになった事案を紹介しました。その中で軽々しく性行為をやってはいけないと力説というのがその舞衣さんがいう麻美子姉さんの演説です。
そしてその後様子を見ようとして訪れた優子ちゃんのアパートを訪れた姉さんがたまたま2度目のレイプ現場に遭遇し、その犯人を制圧したというオマケ付きです。
ちなみにその時麻美子姉さんが取りに来た私のハチロクといえば、現在メカニック系アイドルとして雑誌の企画で自分のAE92(カローラレビン)をバラバラにして車体の補強から作業している理央の手元にあります。
でもその車体補強という作業があまりにも地味だったため、雑誌の部数が伸び悩んだ編集担当が白羽の矢を向けたのが理央が過去に組んだエンジンを積んでいるという私のハチロクでした。そんなハチロクは、恐らく今頃馬力測定などされているはずです。
話が外れてしまいましたが、優子ちゃんが私に彼氏になってくれというところまで話を戻します。
「うん分かった。この2人(舞衣さんとふたば)も同意してくれたし問題ないと思う。あとは校内での対応なんだけど・・・」
この時私は、この優子ちゃんと今後どう接して良いものか迷っていました。あまりベタベタするのも好ましくないというかわざとらしいし・・・、そっけなくするのもそれこそわざとらしいし・・・。
この時、そんな私のことを察してか優子ちゃんが助け舟を出してくれました。
「マドカ先生は普通で良いんです。特に私のこと意識しなくても・・・・ただ、彼女って言うのを否定だけはしないで欲しいんです。」
「普通・・・・でいいの?」
「はい。普通で・・・です。恐らく1年生のクラスで私とマドカ先生が付き合ってる的な話題になっているかと思うんです・・・」
「ん?その心は?」
「あの夜、わたしとマドカ先生が買い物に行ったスーパーで隣のクラスの娘がアルバイトしてたんです。レジに並んだ時、隣のレジでレジ打ちしていたその娘と目が合って・・・」
「でも・・・それだけで噂が広まる訳では・・・」
「わたし知ってるんです。その娘ってものすごい噂好きな娘だって・・・」
この時私は今後どのような展開になるのかが容易に想像できました。女子の連絡網の恐ろしさを知っているだけに・・・。
この時代スマホどころかガラケーすら無い時代です。あるといえば一部富裕層が所有する自動車電話か、徐々に普及し始めたポケベルくらいでした。ちなみに先ほど紹介した麻美子姉さんは職場から持たせられた業務用ポケベルを持っていた・・・・そんな時代です。
そんな時代でも女子の連絡網は凄まじいものがありました。コレは私自身が幼少期から何かとお世話になっていた従姉妹3姉妹を見ていて肌で知っていました。
その後・・・実習生控室で翌日の担当授業に使う資料の下絵を描いていた時・・・
「おはようございます。」
急に控室の引き戸が開くとズカズカ教務主任の先生がそう挨拶しながら入ってきて私たち実習生を見渡しています。当然私たち実習生は教務主任の前に一列に並んで直立不動となっています。
「はい・・・ちょっと早いけどみなさんお揃いですね。・・・本日から教育実習の後半戦となりますが頑張って下さい。みなさん初めての教壇ということで戸惑いがあったかと思いますが、先週の経験を生かして自分のイメージに近づけるような一週間として下さい。」
教務主任の先生は一旦そう言う挨拶をすると、今ほどと打って変わった低い口調で本題に入りました。
「えっと・・・先週起きた事件に関してなんですが、今後生徒からいろんなことを聞かれると思います。事件後、当事者の生徒のケアーを行なっては行きますが、その生徒に対するプライベートな部分に関しての情報は一切口にしないこととしますので・・・。」
やはり出ました戒厳令。そして最後にその教務主任が付け加えました。
「何か質問は?」と・・・。
そこで教務主任の前に並んだ実習生がお互いに顔を合わせて「誰か質問しろ・・・」的な雰囲気となりました。そこで名乗りを上げるように返事をしたのがふたばでした。
「はい。豊浜先生・・・なんでしょうか?」
「生徒に詰め寄られた時の対応なんですが・・・」
「その時は全講習会で教頭先生が説明した以外の情報は分からない。学校からは何の情報も得ていないと答えてください。」
生徒からその「事件」について尋ねられたときはそう答えるしかないと私自身感じていました。でも、先ほどその当事者から聞かせられた「私との関係」についてどう対応すれば良いのかは思案中でした。
「あの・・・」
私がそこまで言いかけると教務主任は私に鋭い眼光を向け「何かあります?風谷先生」と切り出しました。
「私と、その・・・生徒の一部に僕と小笠原さん(優子ちゃんのこと)が付き合っているという噂が流れているみたいなんですが・・・。」
「あっ、その噂は把握しています。それについては否定しないでください。もし聞かれたときは・・・う〜ん。そうね、懐かれているとでも答えてください。なお、風谷先生には結婚前提の女性の存在もあります。恐らく生徒たちはそれも知っているかと思います。」
「それじゃ僕はどうすれは・・・」
「だから・・・否定はしないでください。世間一般的には二股ということになりますが、生徒たちの関心が事件のことではなくそちらに向けばそれはそれで結構です。」
「いや・・・高校1年生と教育実習生の関係です。それでも良いというのは・・・」
「これは戦略的な誘導となります。生徒の関心をそちらに逸らすことができればそれはそれで良いのです。これは決してフェアなやり方ではありませんが、政治家がマスコミを使って行う割と一般的な手法ですので気に病まないで下さい。」
こう言い残して教務主任の先生が実習生の控え室を後にしました。ピシャッと閉められた引き戸の外の廊下からはカツカツカツ・・・と硬い靴底の足音が遠ざかっていくのが聞こえています。
「アンタ・・・どうすんのよ?」
静寂に包まれていた控室の中で、真っ先に言葉を発したのはふたばでした。
「どうするって・・・そうするしかないんじゃない?」
私はふたばにそう答えたものの、この先どうして良いものかなんて分かりません。
この後、実習生が職員室に集められた中で職員会議が行われました。でも、そのどうして良いのかわからない私のメモ帳にには鉛筆が走らず、結局何を話しているのか右から左に聞き流すことしかできません。
そして次に行われる全校集会の会場である体育館に向かう際にすれ違った際に「おはようございます・・・」と挨拶を交わした女子生徒と目が合いました。
私はすれ違った後気になって振り返りましたが、その女子生徒はいつの間にか数人の集団の中にいて全員が私を見ていて何かこそこそ話している様子であることが分かります。
「う〜ん・・・。ちょっと厄介なことになってる?」
さらには体育館へ通じる渡り廊下を歩いていると、突然右腕に誰かが絡みつくように抱きついて来ました。
私は驚きながらその右腕を見ると優子ちゃんが所属する放送部の部長です。その部長が腕にぶら下がりながら口を開きました。
「わたし・・・進路決めたの。麻美子お姉さんの近くに行くの・・・。そして、お姉さんの妹・・・マドカ先生のお嫁さんになる!」
「あっ、矢萩さん・・・急にそんなこと言われても・・・」
そんな私のことはどうでもいいとばかりにその矢萩さんは私の背中をバチんと力強く叩くと廊下の角まで走って行きそこで立ち止まりこちらを向いて叫びました。
「あきらめないから〜」・・と。
そしてその矢萩さんの近くにいた友達から「いぶきったら・・・」とか「本当にアンタって娘は・・・」なんて言われながら両脇を抱えられるようにしてどこかへ連行されて行きました。
そして、その後体育館の中で先生達の後ろに整列した時のことです。
「ん?アンタ背中になんか着いてる・・・」
ふたばはそう言いながら私の背中からそれを取ると大きなため息を吐きました。
「アンタ・・・また悩み事一つ増えたよ。」
そのふたばが背中についていたものを手に取り私に見せました。それはな単なる赤いハートのシールでしたが、それは以前放映されていた全96話に渡るアニメの作中、教育実習生だった主人公に恋心を抱いた女子高生が告白するやり方・・・。
しかも、先ほど私の背中にシールを着けた生徒とその作中の生徒が同じ名前と来ています。コレって偶然?・・・。
う〜ん・・・。ここに来て女子高生に言い寄られることが多くなっています。今まで女性に言い寄られたことなんて少しもなかった私ですが・・・・そりゃ今となっては男子の実習生は私1人となっています。それで目立つのはわかるのですが・・・。
でも、私は知っていました。そんな恋心も教育実習の終了とともに終わることを。
コレは前に教頭先生に言われたことでではあるのですが・・・。こういう状況に1週間耐えれば良いんです。ちょっと本来の教育実習の趣旨とはズレてしまうような気もしますがこれも教育実習に含まれるということにして納得しました。
その後開催された全校集会では、来週の期末試験に向けた生活態度や今週の短縮授業及び部活動の時間短縮などが説明され、その中でも夜の繁華街を出歩くことのないようにという注意も強調されていました。
そして、その最後に本日付で非常勤の外部講師が着任するということが伝えられましたが、あまり興味のなかった私は自分には関係のない話として処理していました。でも、後で考えるとそれこそが私の重要事項だったようです。
そんな集会の後実習生控室に戻る途中の廊下を歩いていると、すれ違う生徒達がそれぞれ軽く会釈をしながら歩いています。
そして1年生の教室近くの階段を登ろうとして角を曲がった時のことでした。
「キャッ・・・」
突然後ろ向きに歩いていた女子生徒とぶつかって、その華奢な身体が弾かれるように倒れそうになっています。
その生徒は友達数人と話に夢中になっていたこともあり全くの無防備状態だったようです。
そこで私は倒れそうになったその生徒の手を咄嗟に掴みましたが、その瞬間その生徒の横顔から一瞬血の気が引いていたのだけは分かりました。
それもそのはずです。不意打ちでも食らったかのような衝撃で跳ね飛ばされたんですから・・・。でも次に手首を引き上げ腰に手を回して倒れるのを抑えた時その耳が真っ赤になっているのが分かりました。しかも掴んだ手首の頸動脈からその早い鼓動も伝わってきます。
「大丈夫?」
私は掴んだその手を引き揚げるようにしてさらには倒れかけたその女子生徒の腰に手を回して問いかけました。
「あ・・・ありがとうございます。・・・マドカ先生。」
なんと、その女子生徒はあの優子ちゃんではありませんか。どおりでその手首、その腰、その体重加えその汗ばんだ首筋から漂う体臭にも覚えがあったわけです。
「あっ、優子・・・いや、小笠原さん・・・」
そして、今度はそのままの体勢で一瞬固まったところで周辺のザワつきに気づきました。これは誰がどう見ても廊下の角という大衆の面前でセーラー服の女子高生と教育実習生が抱擁しているとしか見えません。しかも今噂のその2人・・・。
なんという偶然でしょうか?その運命的な出来事に頭の中が少し混乱をきたしていましたが「ヒュー・ヒュー・・・」なんて揶揄する雰囲気に我に帰りながら優子ちゃんを立ち上がらせると、その優子ちゃんは顔を真っ赤にしながら深くお辞儀をして教室の方に向かって走っていってしまいました。
「う〜ん・・・。ちょっと火に油どころかガソリンでもを注いでしまった?」
そんな感覚となったまま実習生控室に戻り明日の資料作りを再開ところにホームルームを終えたふたばが帰って来ました。
私は今渦中の人となっていますので「とりあえず朝のホームルームは出なくていいから・・」と土木担任の佐藤先生から伝えられており一足先に控室に戻っていました。それに、その他ほとんどの実習生は直接担当教室に向かっているようでしたので控室には私1人となっていたところです。
そんな2人きりの控室でテーブルに向かってスケッチブックを開いて教科書と睨めっこしている私の目の前のパイプ椅子にドカっと腰を下ろし、さらに足を組んだ状態でそのふたばがスカートの裾を正しながら何かを考えていました。
そして私がその組んだ足の膝下が長い事に感心していると、そんな私に向かってそのふたばが問いかけました。
「アンタさ・・・。コレでいいの?」
「えっ?ふたばの足がどうかしたって?。」
「違う!アンタ朝から何考えてんの!」
「ん?ごめん・・・ちょっとふたばの足で興奮してる・・・」
「ソコじゃない!あの優子ちゃん・・・優子ちゃんとのことだよ。」
「あっ、そっちね・・・うん・・・良くはないけど、そうするほかないと思うんだけど・・・」
「そっち・・・ってどっちよ?さっき公衆の面前でその優子ちゃんと抱擁してたんだって?・・・アンタもやるわね・・・」
「それは事故。確率にすると天文学的確率になると思う・・・」
「そうよね。生徒の数って確か千人超えてたから単純に言って千分の一。でも、そこで二人が出会う条件・・・しかもすれ違うだけじゃなくってぶつかって抱き合うっていうと・・・どんなファクターが必要になるのかしら・・・ちょっともう少し条件設定が必要ね・・・・」
「なあ、ふたば。そんな難しい顔して・・・・もしかしてそういうことになった確率なんて計算してた?」
「うん・・・。だって、いろんな要素があって・・・いく通りの計算があるのか考えるだけでも楽しくない?」
「ふたば・・・。言っていいか?それって数字フェチの計算バカじゃないのか?つまり変態。」
私にそう指摘されたふたばは大きく深呼吸して私をじっと睨みました。
「変態で結構!わたし・・・その変態ってヤツとことん追求してやるから・・・」
「でも・・・自分一人で追求しても勿体無いから、ソレを生徒に還元することも忘れずに・・・・」
「うん。ソレが一番重要かもね・・・。でも、さっきその天文学的な確率で遭遇した事件はいいけど・・・」
「あっ、優子ちゃんとは当面彼氏と彼女の関係ということにしておいて・・・」
「でもさ・・その優子ちゃんと小林先生とで共同生活始まるんだよ。アンタ・・・ソレ耐えられる?そんな環境での生活・・・」
「ふたば・・・なんか忘れてないか?そもそも僕って女系家族で育ってるんだぞ・・・」
「うん。ソレは分かってる・・・でも、ソレって家族親戚の話でしょ?小林先生はアンタの義理のお姉さんになるからまだしも、優子ちゃんは全くの他人・・・・。ソレって犬の鼻先にドッグフードおいておくようなものじゃない?しかも缶詰の美味しいヤツ。」
「なあ、ふたば・・・。せめてライオンにでもしててもらえないか?・・・・犬ってことは、よだれ垂らして待てされてるようなイメージ・・・」
「でもさ、あのちっちゃいアンタの彼女・・・・そんな関係どう思う訳?その彼女の気持ちはどうなのよ?」
「うん・・・マコちゃんも分かってくれると思うんだけど・・・」
「だけど・・・ってことは、鈍感なアンタでも引っ掛かるところはあるんだ・・・。」
「もちろん・・・。その、鈍感っていうのは余計だけど。」
「アンタ・・あの彼女と長い間離れ離れだったでしょ?その間、アンタと再会することを心待ちにしていたその娘の気持ちって考えたことある?」
「そりゃ・・・・」
「その様子じゃあんまり考えてなかったってことでしょ?大方、自分が逢いたい気持ちを抑えるのが大変で彼女のことまで気が回らなかったってところでしょ?」
「そりゃそうじゃん。僕もオトコなんだし・・・」
「そうだよね・・・。わたしもアンタを誘っちゃった以上非難できる立場じゃないけど、あの娘がアンタに逢いたい気持ちで頑張っていて、やっと再会できたって時・・・アンタはそんな時期にその娘の会社の別のバスガイドに手を出した。しかも、それに引き続き今回はわたし・・・」
「手を出したって・・・そりゃ結果的にはそうだけど・・・」
「それに、アンタはあの娘と付き合い始めた頃・・・そんなラブラブな頃にもかかわらず、その娘じゃなくって付き合ってもいないわたしを妊娠させている・・・」
そう指摘された私は何も反論できませんでした。心待ちにしていたマコトとの再会・・・しかし、その再会直後にマコトの先輩バスガイドである夏帆に手を出してしまっていました。
私は、当時高校2年性だったマコトの初めてをもらった直後に今、目の前にいるふたばを妊娠させてしまったという経緯がありました。さらにはマコトが北海道に渡ってしまった後、やっと再会できたと言った時に今度は夏帆とそういう関係を持ったりしています。
その時、自分の中から改めてマコトに対して申し訳ない気持ちが込み上げて来ていました。
私がそんな気持ちの中、その時ふたばを見るとそのふたばが目を逸らして話し始めます。
「実は、あの成人式の時・・・こっちに帰ってくる前に友達から彼氏を紹介するって連絡もらった時だったんだけど・・・その時どういう訳か真っ先にアンタの顔が浮かんだの。そしてどうすればアンタとやり直せるかも考えたんだよね・・・」
「それって仕組まれてたってこと?」
「うん。隠しても仕方ないから白状するけど・・・実はそうなの。」
「それで僕に彼氏役をやらせた・・・・と?」
「うん・・・。でも知って欲しいの・・・アンタと離れている間、今日何してるのかな?とか、何食べてるのかな?とか、学校サボってどっかいってんじゃないのかな・・・なんて考えることが多くなって・・・ね。」
「ごめん・・・僕はふたばのことそう思ったことはなかった。その頃マコちゃんと知り合ったばかりで・・・」
「でも、その後・・・わたし妊娠しちゃったでしょ?それが判明した時すごく動揺したけどちょっと嬉しかった・・・。アンタって存在が夢でも幻てもなかったって証がこのお腹の中にあるって思うと・・・不安な気持ちが紛れる感じがして・・・。」
「でも・・・結果的に僕はふたばに負担掛けちゃってる・・・気持ち的にも・・・身体的にも・・・」
「アンタ・・・気に病むことないよ・・・。結果的にそうなっちゃったってことでも、乙女が恋するってこういうことなんだなってことが分かっただけでもそれで充分。だって、わたしってあなたと出逢ってなかったら恐らくそんな乙女心なんて知らないまま年老いて行くだけだったと思うんだよね・・・」
「そんなことはないだろ・・・ふたばだってそんな不細工じゃないし、待ってりゃオトコが寄って来たって・・・」
「ううん・・そんな事ない。わたしの方からオトコってだけでシャットアウトしてたと思うし、そもそもそんなオーラ出しまくってたからオトコが寄ってくすはずない・・・そもそもこんな大女が好きになるモノ好きなんていないって・・・」
「そんな・・・自分をそんな過小評価しなくっても・・・」
「でも・・・その時わたしも乙女の端っくれなんだって思ったの。」
「オトメのハシックレ?」
「妊娠が発覚してから・・・アンタのことがすごく気になっちゃってさ・・・、アンタのこともっともっと知りたくなって、ずっとずっと逢いたくなっちゃって・・・。これが乙女心なんだって分かって自分でもビックリ。」
「ふたばだって女の子なんだから遅かれ早かれ・・・」
この時私はハッとしました。彼女が彼氏に自ら染まって行くのはこの事だったのか・・・。それは私の中で晴天の霹靂のような感覚です。
そんな私に構わずふたばは話を続けます。
「わたしって遅かったのね。でも、そんな気持ちにさせてくれたのはアンタの存在があったからだったのね。・・・あっ、あくまで過去形ね。」
「なんか前にもそんなこと言われたけど・・・僕って決してそんなオトコじゃないからね。」
「うん。それも分かってる。でも、よくいるでしょ?ダメ男を好きになっちゃう女子って。」
「それじゃ・・・僕って一般的なダメ男ってこと?」
「ちょっと違うかな?わたしが気になっちゃうのはフラフラしている迷い犬ってところかな?そう言うの見つけると、放って置けなくなっちゃって家に連れ帰っちゃうタイプ・・・」
「やっぱり僕って迷い犬だったか・・・ところで、ふたばのそのフィアンセってどんな感じ?」
「うん・・・でっかいピレネー犬って感じ。まっ、遠くから見たらでっかい熊みたいなヤツなんだけど・・・ソレもまたフラフラしてる奴で・・・・。」
「そんなにデッカイ犬?っていうと僕は・・・・」
「うん。ソレに比べたら柴犬ってところね。しかも小さい個体の・・・」
その時でした。控室の引き戸がカラカラ・・と開いて舞衣さんが顔を覗かせました。
「やっぱりそうだったのね・・・迷い犬のまーくん。」
舞衣さんは麻美子姉さんの結婚により義理の姉さんになってしまう人です。その舞衣さんがそう言いながら控室に入って来て話を続けます。
「あっ、ごめんなさいね。さっき職員室で伝え忘れたことがあって来てみたんだけど・・・入ろうと思ったら風谷先生と豊浜先生が何やら議論しててちょっと話聞いてたらどうやら色恋バナシみたいでさ・・・盗み聞きしちゃってごめんね。」
「そうです。コレって僕とふたばの超プライベートな話です!」
すると舞衣さんは私の抗議もお構いなしに私とふたばの前にしゃがみ込んで2人の顔を交互に見ています。そのしゃがみ込んだ舞衣さんの黒いタイトスカートが太ももに食い込んでいるのが見えています。
「う〜ん・・・。改めて見ると2人ってお似合いよね。前から思っていたんだけど・・・・前にアニメでやってた・・・う〜ん・・・」
「小林先生。それってカボチャワインのことですか?」
「うん・・うん・・それそれ・・・」
舞衣さんはそう言いながら私を指差して納得しています。
「ところでさ・・・豊浜先生とまーくんって身長差何センチ?」
「う〜ん・・・僕が165でふたばが185だから20センチってとこかな?」
「それじゃ、工藤さんと豊浜先生って?」
「う〜ん・・ふたばが185で・・・マコちゃんが確か148だったから・・・身長差37センチ?」
「まーくんてさ・・・大きい娘が好きなの?小さい娘が好きなの?」
舞衣さんが目の前に立ち上がり、興味本位でそう質問して来ました。するとそこへふたばが話に割り込んで・・・
「あ・・あの・・・38センチ・・・」
恥ずかしそうにそう囁きました。
「えっ・・・ふたばって今186センチ?」
「う・・・うん。春に大学で計ったら・・・精一杯背筋引っ込めて計ったんだけど・・・」
「それじゃ・・・きちんと計るともっとあるってこと?」
「うん・・・でも私決めたの。もう金輪際身長計らないって・・・だって、身長計る時係員の人が届かないくらいで・・・」
「ふた・・いや、豊浜先生ってフィアンセいたよね。その方って・・・」
「一応わたしより大きいけど・・・いつか追い抜きそうで・・・」
「いや・・・いくらなんでも・・・」
「今でも2人並んで歩くと視線が痛いって言うか・・・このままじゃ私生活に支障をきたすレベルになっちゃう・・・」
この時初めて自分の身長に悩んでいたふたばの姿を見たような気がしました。その当時はふたばを見慣れていたせいかその身長に違和感はありませんでしたが、何年経ってもやはり女性で身長186センチと言うのは大きいです。
建物の鴨居に頭をぶつけるのは当たり前。ましてやいつも隣に乗せていたハチロクの天井に頭が支えるのも当たり前で、後で考えるとそのハチロクに乗っている時は拷問のような感じだったと思います。
そんなことから、当時としては平均的な身長であった165センチの自分の身長が有難いと思った次第ですが・・・贅沢言えばもう少し欲しかったところです。
そんなことを考えつつ、急に舞衣さんがここに現れたのか疑問が湧いて来ました。
「あれ?そう言えば・・・舞衣さ・・・いや、小林先生・・・何か用事があったんじゃ・・・」
「あっ、ごめんね。今日の昼休みに非常勤講師の辞令交付があるって話聞いたよね。ソレって吹奏楽部の講師として招いた先生なの・・・」
「えっ、ソレじゃマコちゃんってお払い箱?」
その時マコトは吹奏楽部の伝説的な先輩として部活の指導を始めたばかりでした。そこに新たな講師が現れたと私は解釈しています。
「違うの。その工藤さんが講師になってくれることになったの。しかも、会社のバックアップ付きで・・・」
「えっ、ソレじゃ・・・・マコちゃんが先生ってこと?」
「うん。もっとも繁忙期は無理でしょうけど・・・・でも、コンクール前はなんとかするってことで・・・」
「でも・・・コンクールって確か夏から秋にかけてだったような・・・・その夏って季節は確か繁忙期・・・」
「だから会社のバックアップが必要だってこと。」
「でも、マコちゃんの会社・・・よく承諾しましたね。」
「うん・・・ここからちょっと込み入った話になるんだけど、前に工藤さんが乗務したツアーで遭遇した事故で人助けしたって言ってたよね」
「うん。結構大きな事故で、ニュースでも取り上げられたヤツ・・・」
「話は違うんだけど・・・そもそも今年、うちの吹奏楽部に東京のテレビ局で密着取材入ることになってて・・・これ、部長にも言ってないんだけど・・・」
「ソレじゃ・・・マコちゃん・・・?いや、早坂先生や小林先生が部活を指導してる姿が放映されちゃうんですか?」
「うん・・・。まずは今年のコンクールと定期演奏会。そして来年のコンクールまで長期の取材になるんだって」
「ソレじゃ・・・今年は無理でも、来年は全国ですね。」
「いや・・・あわよくば今年いきなりっていうのも狙ってるんだけど・・・」
「取材受けるなんてすごく励みになりますよね。部員たちの士気もだいぶ上がるかと・・・・?ん?来年?」
この時私は重要なことを思い出しました。私の頭の中で構想を練っていたマコトと一緒になる青写真・・・。
ソレは大学卒業と共にマコトを地元に連れ帰って結婚するという壮大な計画。その計画がこの瞬間脆くも崩れ去りました。
でも、そんなことが経験できるなんて誉なことです。一緒になるのはちょっと先になってしまいますが少しの期間待てばマコトは私の元に来てくれるはずです・・・きっと。
その時舞衣さんはそんな私の動揺を知ってか知らずか話を続けます。
「そうなんだよね・・・その取材って1年続いて、最後は普門館っていうのがプロデューサ側の筋書きみたいなんだけど・・・結局ドキュメンタリーだから・・・どうなるかは出たとこ勝負。」
「そんな中にマコちゃんがいる訳ですよね。僕も応援します。」
「でもそもそも工藤さん・・・いや、早坂さんがそんなことになったかというと、あの事故での人助けがきっかけ・・・コレから県警の表彰受けるっていうしその話題性には申し分ないってこと。」
「そうですよね・・・事故で人助けしたバスガイドが吹奏楽部の講師やってるっていう話題性につきますよね?コレって学校にとってもバス会社とってももいい宣伝・・・。」
「うん。うちの学校授業料高めでしょ?それで特進以外の生徒数を確保するの苦労してたみたいで・・・。だから学校の理事長も乗り気で・・・しかも、修学旅行だったり、吹奏楽部の移動とか・・学校法人グループでバス使うやつを全部その早坂さんのバス会社に頼むって言い出して・・・」
「それに今年は野球部の甲子園出場も囁かれていますよね。そうすればその応援団のバスだって10台単位・・・・しかも勝ち続ければ台数だって貸切の日数だって・・・ソレは会社も断れない訳ですね・・・」
「まっ、お互い営利企業だから・・・お互いの利害が一致すれば・・・ね」
ソコまで私と舞衣さんの話を聞いていたふたばが何かを思い出したかのように話に割り込みました。
「ちょっと待って・・・。それじゃアンタの彼女、仕事も兼ねて兵庫まで行っちゃうってこと?」
「うん・・・そうなれば、そうなると思う・・・。」
「それじゃあさ・・・アンタ、もうコレからその彼女とイチャイチャしてる時間なんてないかもよ?」
「えっ・・・・・?」
そもそも私は、マコトが北海道から戻って来てからほとんどイチャイチャした時間が取れていませんでした。しかも、婚約を目前にしながら1年半近くエッチもしていません。
もしこれで婚約って事がなかったら、このまま疎遠になって自然消滅・・・・・。この時私の鼓動が早くなって来て何か胸騒ぎのようなものを感じています。
「アレ?風谷先生・・・・すごい汗・・・」
そう言いながら舞衣さんが私の額をハンカチで拭いてくれました。
その瞬間、その胸元に漂うオトコを発情させるに十分な甘い香りを嗅ぎながら、ふたばの問いかけに答えました。
「イチャイチャするだけが彼氏彼女の関係じゃないと思う。今はお互いやるべきことをやるべきで・・・・えっ?」
私はその時そこまで話した自分に対してものすごく違和感を感じていました。それは以前、私からのプロポーズに対してそれを断ったふたばの言葉そのものだったからです。
そこでふたばが深くため息を吐きながら立ち上がりました。
「ここでそれ言う?それってわたしがアンタをフった時のセリフだよ・・・。入院してた私に対してアンタは結婚を迫った。でも、わたしはそれを断った。」
「うん・・・。そうだった・・・。」
全くそのとおりです。もう、それを聞いた私はうなだれるしかありません。
「でもさ・・・」
しかしふたばはそんな私に対して話を続けます。
「でも・・・あの時と今回は状況が全く違うの。あの時は地元から離れられないわたしと、地元に帰らなきゃならない運命の二人だったでしょ?あの時はこの先いつまで経っても一緒になれないことは分かっていたから・・・。」
そこまで話したふたばの息が切れていました。そこで私が声をかけようとした時、ふたばは一度深呼吸して話を続けます。
「でも・・・でも、アンタたちは今日結納していずれどこかで結婚するんでしょ?向いてる方向が一緒ならいつか一緒になれるって・・・・。あの時のわたしとアンタじゃないんだから・・・」
そこまで話したふたばは、急に振り返って控室の引き戸を勢いよく開け廊下に飛び出して行ってしまいました。バタバタと遠ざかるその足音を聴きながら、ふたばが駆け出す時ちらっと見えたその瞳に浮かんだ涙を思い出していました。
「ふたば・・・」
その時私は、ふたばに掛ける言葉も見つからず追いかけることも出来ずにいました。
そして廊下を覗いていた私が振り返った時、今の今までふたばが座っていたパイプ椅子に座った舞衣さんがポツリと囁きます。
「うん。これぞ青春・・・」
それを聞いた私はその舞さんに助け船を出してもらいたい感覚となっていました。
「舞衣さん・・・・僕ってやっぱりふたばを傷つけてしまっているんでしょうか?」
「あれ?まーくん。女の娘って、どうやって悩みを解決するんだっけ?」
「えっ?・・・あっ、そう言えば・・・誰かに聞いてもらって・・・・」
「じゃ、その打ち明ける相手に何を求めるんだっけ?」
「・・・・その悩みの共感・・・」
「はい正解。それでその豊浜先生の悩み・・・・共感できたの?」
「共感も何も・・・」
「あっ・・・ごめんね。それって愚問だったね。でもいいな・・・これぞ青春って感じで・・・」
「舞衣さん・・・ちょっとからかわないでください。今、すごくへこんでるんですから・・・」
「あっ、ごめんね。わたしってそういう青春っていヤツ経験しないまま燻った青春卒業しちゃったから・・・羨ましくって・・・つい。」
「じゃ、今度は舞衣さんの番です。その舞衣さんの青春って言うヤツ取り戻しましょう・・舞衣さん。」
「えっ?青春・・・?いまさら?」
「はい。いまさらです。でも、燻ったその青春・・・そのままでいいんですか?」
「流石に燻ってはいるけど・・・間も無く三十路だよ・・・おばさんだよ・・・・?」
「歳なんて関係ありません。舞衣さん・・・・いるじゃないですか?あの長身の青制服のカレ・・・」
「えっ?アイツ?」
その「アイツ」とは、舞衣さんの元カレで覆面パトカーの乗務員・・・つまり交通機動隊の警察官となります。そのカレは舞衣さんといざそういう事になった時舞衣さんのハダカにビビってしまい、コトを達成できなかった役立たずだと聞いていました。でも、そのカレは未だに舞衣さんの事が諦めきれないようです。
前に舞衣さんとそのカレの会話を聞いた時、妙に冷たい舞衣さんの態度からその舞衣さんも満更でもない様子を感じていていて、なんとかなって欲しいと思っていたところです。
私がそんな思いをしているところへ先ほどどこかへいってしまったはずのふたばが戻って来て、何事もなかったかのように私に言いました。
「土木の佐藤先生から伝言・・・。とりあえずすぐに職員室に来いって。なんか先方と連絡付いたからって・・・。階段降りたところでばったり出くわして、控室のある4階まで行くの面倒だからってことで伝言預かったってこと。なんかどっかに行くようなこと言ってたような・・・」
「うん・・分かったふたば、ありがとう。」
そうお礼を言いながら見たふたばの表情からはどことなく清々しいものが感じ取れました。やはり女性の悩みというのは人に話しながら自分の頭を整理するというやり方と捉えるのが正しいようです。
でも、以前も私を振った経緯なんかをふたばに口から聞いてはいましたが、お互いの置かれた状況に話が及んだのは初めてだったような気がします。
それまで、お互いどうしようもない問題として口にしなかったその事についてそれを言葉にした事により自らの中で整理がついたという事だと思います。
そして、私はテーブルの上に開いていたスケッチブックを手提げに入れ、その場を離れようとしました。
「アンタ・・・そんな落書き帳もってどこ行くのさ・・・」
「うん・・・。これから行くところで見せる事になるんで・・・。それじゃ・・」
「うん。行ってらっしゃ・・・」
そう言って送り出してくれたふたばを後にして控室を後にしました。すると階段を降りる私の後ろに舞衣さんが駆け寄って来て私の顔を覗き込むように話しかけて来ました。
「ねえ〜これからどこ行くの?お姉さんにこっそり教えて?」
「国道を管轄する役所です。」
「ん?国道?役所?」
「はい。市街地から大学に向かう4車線の国道って、市街地抜けるところから2車線になっているじゃないですか?」
「うん。いつも渋滞するところだね。」
「そこの部分がこれから4車線になるそうなんです。」
「あっ、そこって・・・・」
「そうです。この前舞衣さんとくぐったあのヒラヒラの・・・」
「ラブホ?」
そう言いながら舞衣さんは自分の口を押さえてキョロキョロしています。
「大丈夫です。誰もいませんから・・・」
その時です。今の今まで話していた舞衣さんの姿が「キャッ」という悲鳴とともに一瞬にして私の視界から消えました。
その時残り5〜6段の階段を踏み外した舞衣さんの手が何かを手繰り寄せるような動きをしましたが空を舞っていたのが一瞬で分かります。そこで私はその手首を掴んで引き上げようとしました。でも、舞衣さんの体重がそこそこあったため私のカラダもそれに引っ張られ、最後にはふたり抱き合った状態で横にゴロゴロと階段の踊り場まで転がり落ちてやっと止まりました。
そして私たちを追うように私の荷物が散らばりながら落ちて来ています。
「舞衣さん大丈夫ですか?」
「う・・・ん。とりあえず・・・・。最後にまーくんがクッションになってくれたんで・・・」
本日2回目です。こんな事・・・・。1回目の優子ちゃんの時はその体重が軽くなんとかなりましたが、流石に舞衣さんは・・・でも、そのカラダの香りがさすがオトナです。若々しいフルーティーな香りの優子ちゃんと比べやはり落ち着いた香りがします。どちらにしても以前嗅ぎまくった香りなのですが・・・。
「イタタタ・・・・」
そして舞衣さんがそう言いながら起き上がり、散らばった私の荷物を拾い集めていたました。その前屈みになった舞衣さんの胸元から胸の膨らみが丸見えになっています。どうやら倒れた拍子に着ているブラウスのボタンが飛んでしまったようです。
それもそうです。いつも千切れそうになっているそのブラウスのボタン・・・。何かあればこうなるのも一目瞭然・・・
「舞衣さん・・・荷物は後でいいんで・・・」
「うん・・・大丈夫。まーくんも大丈夫?ちょっと重くってゴメンね・・・」
「舞衣さん・・・・それはいいんですが・・・」
「あっ・・・否定しないんだ・・・。それでなに?」
「見えてます。」
「なにが?」
「今日はグレーなんですね。バッチリ見えてます。」
「えっ?」
そう驚いた舞衣さんが自分の胸元を確認して一旦は両手で隠しましたが・・・・
「もっと見たい?パンツもお揃いなんだけど・・・これって昨日、美容院に行った帰りに買ったヤツなんだよね。」
私の耳元で舞衣さんがそう囁きます。この時ちょっと見てみたい気持ちをグッと堪えました。しかし、舞衣さんが胸元を開いて胸元を見せようとしているそんな状況に私の息子が反応してしまいましたが・・・そもそもここは学校です。そんなことを思ってもいけない神聖な場所です。
「舞衣さん。ボタン見つけないと・・・・」
私が話題を変えてそう問いかけました。すると乱れた髪を指で解かす舞衣さんが困った様子で呟きます。
「イタタタ・・・・」
その時舞衣さんは指に絡み付いた指先から髪から外しているところでした。
「あちゃー・・・爪割れちゃってる・・・」
そう言って自らの指を見つめる舞衣さんの指を見ると、ほど透明に近い肌色に綺麗に塗られたマネキュアの先がパックリ割れていました。しかし、こんな綺麗な指先を間近で見たのは初めてかもしれません。
そんな時です。階段の上からふたばの声が聞こえました。それは階段ホールの壁に響くほどの図太い声・・・
「アンタ・・・・女子高生じゃ飽き足らず先生まで?本当にアンタってヤツは・・・・」
そう言いながらそのふたばが階段を駆け降りて来て、散らばった私の荷物を拾い集めています。そして、そのふたばが舞衣さんに近づいて舞衣さんの襟元を正しながら、振り返って私に問い掛けました。
「全く・・・こんなブラウスのボタン飛ぶほど派手に階段で転んじゃって・・・もしかして二人の人格入れ替わってないでしょうね?」
そんなふたばの問いかけに対して舞衣さんが答えます。
「なあ、ふたば・・・ちょっと聞いてくれよ・・・。小林先生を助けようとしたら一緒に階段転げ落ちちゃって・・・」
「えっ?本当に入れ替わっちゃった・・・?」
そう呟きながらふたばが恐る恐る私を見てます。
「なんか・・・わたしたち、あの映画みたいに入れ替わっちゃったみたいで・・・・」
「えっ?・・・・そんなことって・・・?」
そこでふたばは柄にもなく動揺している様子です。
「あっ・・・ごめんなさいね・・・豊浜先生。ちょっとからかっちゃって・・・あの映画好きなんだよね。」
「ちょっと・・・・冗談キツすぎますよ小林先生。」
ちょっと揶揄われたふたばはそう言いながら足元にあった私のスケッチブックを拾い上げました。
「ちょっと・・・もしかして、このスケッチブック・・・」
「うん、そうなんだ。あの鳥瞰図見てもらいたくって、佐藤先生にお願いしてて・・・」
そのスケッチブックに描かれている鳥瞰図とは、郊外に伸びる国道が2車線から4車線に拡幅されるのに伴い敷地の半分が道路となってしまう例のラブホをのものです。
それはそのラブホを今後どうしたらいいかという話題を酒の肴にして、酔っ払ったふたばと激論を交わしながら描いた完成予想図となります。
普段絵心のない私が酒を飲みながら描いたものにしては結構よく描けていたので何かの役に立てたいと思っていました。そして、その道路拡幅計画について土木の佐藤先生に尋ねたところ「ツテがあるから連絡をとってみる」と言ってどこかへ電話していたというものです。
その時、不在だったその人と調整付き次第こちらから出向くという事にしていました。
そしてその後3人で職員室に向かいましたが、途中更衣室に寄って着替えるという舞衣さんと別れ残りの2人でその佐藤先生のところまで行きましたが・・・
「あっ・・・豊浜先生。ちょうど良いところに来た。小テストの監督行ってもらいたいところできちゃって・・・」
ふたばは職員室に入った途端にそう声をかけられ、すぐさま2年生の先生に引っ張られるようにしてどこかへ行ってしまいました。
そしてふたばと入れ替わるようにそこへ戻ってきた舞衣さんを見てビックリしました。それはまるで体育教師のようなジャージ姿で、今までの白ブラウスに黒のタイトスカートという格好のギャップが物凄く・・・・しかもポニーテール・・・・
「うん。これはこれで・・・」
そこで私がそんな舞衣さんの姿に見入っていると、職員室の奥でその佐藤先生が私の名前を呼びながら手招きしているのが分かりました。
そして私が声のするところへ駆け寄ると間髪入れずその佐藤先生が言いました。
「じゃ、行こうか・・・」
私はその佐藤先生について行くと、その駐車場に停まっているちょっと変わったクルマの前でさらに言いました。
「これに乗って・・・」
私が助手席に乗るとエンジンを掛けた佐藤先生が囁きます。
「ゴメンね・・・こんな古い車で・・・・」
そう言われた私は物凄い違和感を感じています。そのエンジンの音のする方向・・・
通常クルマのエンジンはクルマの前方・・・それに対してこのクルマは後ろの方からその音が聞こえました。そんな違和感の中、申し訳なさそうにしている佐藤先生に尋ねました。
「いいえそんなことありません。手入れもされていますし・・・・でも、このクルマのエンジンって後ろにあるんですね?」
佐藤先生はクルマを発進させ、通りを出るときに左右を確認しながら私の疑問に答えました。
「うん・・・。このクルマってスバルのドミンゴって言うちょっと変わったクルマなんだよね。僕の奥さんが旅行とかキャンプとかが好きで・・・」
「それじゃ、今でもこのクルマが活躍してるんですね・・・・。良いですね、そういうのちょっと憧れます。」
「ありがとう・・・。でもそれ・・・過去形になっちゃたんだけど・・・」
「えっ?」
その時通りに出て信号で停まっていました。そんな中運転席の佐藤先生が遠くを見るようにして囁きます。
「うん。僕の奥さん・・・癌を患っちゃって、去年3回忌だったんだよね・・・・」
「すいません。辛いこと思い出させてしまって・・・」
「ううん・・・良いんだ・・・でも、その奥さんが亡くなる前の年に結婚した一人娘が去年孫を産んでくれて・・・女の娘なんだけどこれまたお婆ちゃん(佐藤先生の奥さん)にそっくりで・・・」
「良かったですね。それで懐いでくれてるんですね?」
「うん。もう・・・僕の奥さんの生まれ変わりかって言うくらいに懐いでくれて・・・。前に、その孫が夜泣きしちゃってそれが泣き止まなくって、ママでもダメ、パパでもダメ・・・そんな夜中に電話がかかって来たことがあってね・・・」
この時信号が青になって加速するドミンゴの後ろから、まるでバイクにでも追いかけられているような音が聞こえる中私は尋ねました。
「それからどうしたんですか?」
「その時このクルマ飛ばして娘のアパートに行ったら外で孫を抱いた娘がアタフタしててね・・・。寒いからってこのクルマに乗せて僕が抱っこした途端に泣き止んでね・・・しまいにはニコニコしながら眠ってしまって・・・」
「それじゃ・・・そのお孫さんっておじいちゃんっ子ってところでしょうか?」
「いや・・・それがなんか変で・・・」
「良いじゃないですか?懐いでくれて・・・」
「それが、孫というより・・・・僕の奥さんが生まれ変わったんじゃないかって思えてね・・・」
「生まれ変わりってことですか?」
「うん。ちょっと変だよね?こんな感覚・・・こんなこと話したのは君が初めてだったんだけど・・・でも、その孫がこのドミンゴが好きだってことは明らかで・・・」
「いいえ、少しも変じゃないと思います。クルマって居心地いいじゃないですか?」
「いや・・・なぜか他のクルマじゃダメなんだ。このクルマじゃないと・・・」
「奥さんもこのクルマ好きだったんですよね?」
「うん・・・決して速くて快適じゃないクルマなんだけどね。」
「でも・・・その奥さんの3回忌の頃、娘さんが妊娠したんですよね?」
「うん・・・そうなのかな?逆算すると・・・うん。そうかもしれないね。」
「3回忌って亡くなった人の進路が決まる時期だって聞いたことがあります。もしかすると・・・」
「うん。ありがとう。そう思うとなんか嬉しいね。進路って・・・・なんか学生らしいね。でも、なんか君ってちょっと変わってるなって思っていたけど・・・こんな話に興味持ってくれてありがとうね。。」
「実は・・・高校卒業してこっちの大学来る時、その時付き合っていた彼女を置いて来たんです。でも、その彼女の3回忌が間も無くなんですが・・・」
「高校の時付き合っていたというと・・・その彼女は同級生だったのかい?」
「いや・・・その時中学生でした。しかも1年生・・・。」
「これは驚いた・・・。でも・・・病気か何かで?」
「事故でした。通りかかった交差点で起きた自動車事故の巻き添えで・・・」
「それじゃ心の準備もなくって大変だったね・・・」
「佐藤先生だって同じじゃないですか?」
「僕の場合は、病気だったからね。多少の猶予というか・・・でも、僕の奥さんって一回り以上若くって・・・それで進みも早くって・・・」
「そうなんですね・・・。ちなみにどうしてその奥さんってそんなに若かったんですか?」
「ん?・・・ちょっとね・・・・」
「もしかして、その奥さんって教え子だった・・・とか?」
「うん・・・お恥ずかしい・・・」
「よければ馴れ初めなんて聞かせてもらえれば・・・」
「うん・・・。僕ってさ・・・君と違って女性にとんと縁がなくってね。」
「いや・・・そんなこと・・・」
「彼女なんていないまま30を過ぎちゃって、このまま独身貫こうとしてたそんな時だったんだよね。僕のクラスの生徒が普通科の女子生徒に言い寄ってるって情報もらってね・・・・」
「土木科って柄悪いですからね・・・女子にとってはそれだけで怖い存在・・・」
「その時、それがエスカレートしないように僕が仲裁に入ったんだよね。そうしたらその男子生徒が激怒して・・・」
「余計なこと・・・・ってですよね?」
「うん。その通りなんだけど・・・・その後体育館の裏に連れて行かれてボコボコにされちゃって・・・・」
「えっ?自分のクラスの生徒に・・・・ですか?」
「うん。でも、当時はそんなのが当たり前で・・・ひどい時なんてバイクで学校の廊下走られたり・・・まあ酷かった・・・」
「そんなにですか?」
「うん・・・。前にテレビドラマでやってたヤツあるよね・・・あんな感じ。」
「そんなに・・・ですか?なんとなく想像出来ますが・・・。それほどじゃなかったんですけど、僕の母校もそんな雰囲気が漂ってて・・・未だに土木って言うだけで・・・」
「うん・・・そうだよね。土木って言っても中には君のような真面目な生徒もいるだろうに・・・」
「いや・・・僕って、その・・・不良の親分って言うようなヤツが幼馴染みたいな関係で、そのお陰で逆に護られたと言うか・・・」
「君も・・・か・・・。今から会いに行くのは、そんな中から大学に行って唯一役所へ進んだヤツなんだよね。でも、自分のところの大学に入れなくって推薦で入った他の大学からなんだけど・・・」
「そうなんですね・・・僕も自分のところの大学入れなくってコッチの大学入ったクチなんで一緒です。僕も一応その役所に入るために試験受けるんですが・・・大学からはやめとけって言われてます。」
「えっ?君って教師目指してるんじゃないのか?」
「すいません。人生の選択肢には入っていますが・・・教育課程の教育心理とかって苦手て単位落としそうなんです。薄々自分って教師向きじゃないのかもって思っていまして・・・教育実習受けてから判断しようと考えていましたが・・・」
「それで・・・1週間経った訳だけど・・・判断できそうかい?」
「まだ分かりませんが・・・収穫はいっぱいありました。」
「うん・・・それは良かった。でも、やれることはやった方がいい。何せやってみないと分かんないってことってあるからね。」
「はい。でも・・・最低でも地元には戻ろうと思っています。民間のゼネコンだと全国を点々としそうで・・・」
「それで公務員・・・。やっぱり親御さん・・・が、かい?」
「いや・・・事故で亡くなってしまったその彼女と約束してたんです。4年経ったら戻るって・・・。その彼女がこの前僕の枕元に立って言ったんです。」
「枕元・・・その彼女、よほど君に伝えたい事あったんだね・・・。それでその彼女なんて言ったんだい?」
「はい。進路が決まったって・・・もうすぐ逢えるって・・・・少し待ってて・・・って。」
「えっ?」
佐藤先生は私が言った言葉に反応したのを最後に無言になってしまい、クルマを黙々と運転していました。そのクルマはどう言う訳か週末何度も往復したアキラの入院する病院へ通じる国道を進んでいます。
そして赤信号で停車した時その佐藤先生が真剣な眼差しで言いました。
「その枕元に立った彼女・・・もうすぐ逢えるって言ったんだね?もしかすると4年後に再会するっていう約束を果たそうとしてるのかも・・・」
「はい・・・でもちょっと変ですよね・・・死んじゃってますからね。」
「いや・・・少しも変じゃない。君の周りで結婚したとか・・・子供授かりそうな人っているかい?」
「姉がもうすぐ結婚すると思うんですけど・・・でも、ちょっと事情があって子供授かれなくって・・・。それがどうかしたんですか?」
信号が青に変わり、クルマを加速させながら佐藤先生が話を始めました。
「僕ってさ・・・昼休みにこのクルマの後ろを平らにして昼寝するんだよね。そして間も無く僕の奥さんの3回忌って頃、その昼寝の途中に目を覚ましたらその奥さんがこの助手席に座って後ろ振り返って言ったんだよ。」
「な・・なんて言ったんですか?」
「もうすぐ逢えるって・・・このクルマで一緒にキャンプ行こうね・・・って。」
「えっ・・・それって・・・?」
今回のストーリーはここまでとなります。今回は5万5千字を超える長編になってしまっている事をお詫び致します。
また、いつもこんな長い作品を最後までお読みいただきましてありがとうございます。
今回のストーリーに私自身が母さんから聞かされた出産にまつわる話や、オトコとオンナものの捉え方の違いというのを凝縮してまとめてきました。これが全て当たりとは思ってはいませんが、こんなこともあるんだなんてことについてお伝えできれば・・・と思っています。
これからもよろしくお願いいたします。
まことまどか