おじさんがいた日

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せっちゃんと遊ぼうといつもの原っぱに行ったら、倉庫の近くに白い作業着を着た中年の男の人が見えた。たぶんあれがこわいおじさんだ。

せっちゃんの姿が見えないので今日は来なかったのかなと思っていたら、背の高い草の合い間に赤いスカート姿が見えた。せっちゃんだった。僕に気づいて人差し指をくちびるの前で立てた。

姿勢を低くしてせっちゃんの近くに行ってしゃがんだ。

「どうする?」

「おじさんいたね」

「今日ははらっぱだけで遊ぼうか?」

「別のとこ行こ」

おじさんはこちらの方は見ていなくて倉庫の近くで何かしていた。ぼくとせっちゃんはおじさんに見つからないように草の陰を選んで姿勢を低くして原っぱから出た。

それから2人で手をつないで、線路の上を歩いて500mぐらい離れたところにある林の方に向かった。1日に何本か貨物列車が通るだけの線路で、いまは列車がくる時間じゃないので危なくなかった。

林に着いた。入り口から奥の方へ続く砂利道があって、白い乗用車が止まっていた。車があるのは珍しかった。

驚いたことに、なんと白い車の近くの木の上の方でケンジとケンジの友だちが幹にしがみついたり枝にまたがったりしている。

ケンジが苦手なので、せっかく林まで来たのになんでこんなとこにいるんだろう、面倒なことになったなあと思った。

そんな気持ちにはお構いなくせっちゃんとぼくを見つけたケンジは、白い車を何度も指さしながら、何か伝えようとしてくる。

なんのことだか分からなくて、ぼくも車を指さして首を傾げたら、ケンジはウンウンと頷いた。

あの車がどうかしたのか、とにかく見ろってことだなとわかった。だまされたような気分でせっちゃんと手をつないだままゆっくり静かに車に近づいた。

中をそおっとのぞくと、リクライニングシートを倒して若い男女が抱き合っていた。ぼくとせっちゃんに気づいていない。もちろん木の上のケンジたちにも気づいていないだろう。

びっくりしてケンジの方を振り返ったら、指でOKサインを出していた。

再び車の中を覗き込んだ。目が離せなくなった。せっちゃんがぼくにぴったりくっついて、握る手が熱くなった。

ずっと見ていたせいで車の中の人に気づかれた。慌てた二人は、シャツやブラウスのボタンを閉じることなく、襟を合わせただけで、発進して行ってしまった。

ケンジたちが得意そうに木から降りてきた。

「な、すごかっただろ?」

「・・・うん」

せっちゃんは何も言わずぼくの手を強く握っていた。

その場は適当にケンジに応対して、ぼくはせっちゃんと手をつないだまま林を後にした。

せっちゃんは帰り道に話すこともなく、ずっと僕に身を寄せて手をぎゅっと握っていた。

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