熱い日だ。ピタリと風が止んでる。部屋のエアコンばかり浴びていて、身体がおかしくなりそうだ。そろそろ陽も傾いてきたから少し外に出てみよう。
財布だけ持って街に出たが、熱気が日差しからアスファルトから容赦なく襲ってくる。
商店街ではこの暑さなのに、屋台が出ていた。燃えそうな中、ご苦労にもなにかイベントしてる。
人混みをさけて、屋台の後ろを歩いた。
カキ氷の店があった。ブルーハワイを買って、腰を下ろせるトコ探す。
向こう側は日陰になってる。
ちょうど信用金庫の階段がある。
座っても、ATMを訪れるヒトの邪魔にもならないほど幅広い。
そこに腰掛けてブルーハワイをすくった。みるみる氷は溶けていく。
オレの前に店を出していた女が座ってコチラを見ていた。
パイプ椅子を横にしてるから、視界に入ったのだろう。
茶髪の若い女。すぐ発泡素材のカップが空になった。青い波しぶきの上に赤い太文字で「氷」とプリントされたカップ。
またさっきのカキ氷屋に行く。今度はパインを頼んだ。
これ、と空のカップを差し出すと、お姉さんは、ありがとうございます、と受け取り、代わりにパインの氷を渡された。
お姉さんも汗だくで、首に巻いた赤いタオルをひっきりなしに使ってた。
信用金庫の定位置に戻ってパイン氷をすくった。
酸味が効いてて、ブルーハワイより爽快だった。
前の店の女がまた見てた。笑ってる。またすぐ氷はなくなった。
メンソールのタバコを1本抜いて火を付けた。吸い殻はカップの中に落とす。残っていた黄色の汁に灰が落ちて黒く広がる。
今日、オレが大学にいたら、迷わず退学届だしてたな。大学は暑い時、学生辞めさせないように休みにしてるんだ。うまいこと考えてる。大学にこのままいるか、仕事に就くか、このところずっと考えていた。ウチに来いよ、そう言ってくれてるトコがある。スゴイ年の離れた大学の先輩なのを知らされた。
「すいません~」
若い女の声。顔を上げると女が見ていた。前の店の女。
「1本、もらえますか」
タバコ欲しいんだ。
ウン、とうなづくが、そのままタバコが無くなるまで吸い続けた。
吸い殻を落とすと、ジュッと音を立てた。
女の店に客が来ていた。若い女ふたり、茶髪とやり取りをしてる。
オレは空のカップを持ってカキ氷屋に行って、吸い殻入れちゃたけど、と詫びてお姉さんにカップを差し出した。
あ、いいですよ、とニッコリ笑って受け取ってくれた。
なにを売ってるのか、茶髪女の店を見てみる。
黒いフェルトの上にアクセサリーが置かれている。客の女の子達が買うものを決めたらしい。小さな袋に詰めて、茶髪が礼を言ってた。
タバコを箱ごと茶髪に渡した。あ、ありがとう、女は1本抜いて戸惑っていたからライターも渡した。タバコを咥えたまま、茶髪は頭を下げた。火を付けてライターを返してくれた。椅子をずらし、こちらに背を向けて煙を吐いてた。
オレは屋台の商品を見た。凝った作りのミサンガ、石をはめ込んだピアス、エキゾチックなブレス、傾いた日差しを浴びてキラキラ輝いてる。ジャンルやテーマのないモノが並んでる。汗が目に入った。バンダナで拭う。
茶髪がタバコを吸い終えたらしい。吸い殻を踏んでる。拾ってつまみ消火を確認して、レジ袋に捨てた。
「ありがとう、ちょうど切らして吸いたかったの」
「ああ……そう」
タバコの規制なんてない時代だった。
「さっき、カキ氷の連チャンしてたでしょ、ウケたよ」
「ああ、まだ足りない、燃えそうになる」
「ね、今日はホント……」
茶髪の顔にも汗浮かんでる。日焼けした顔、緑の濃いアイシャドウばかり目立つ。
「ビールじゃなくて、カキ氷なんだ?」
「ビールがなくて、カキ氷があった」
オレは店の前から日陰の定位置に戻って座った。
「ビールもね、あっちにあったよ」
「ああ……」
そのあっちに行くのもイヤだ。この少しでも涼しい日陰に根を下ろしていたい。
大した温度差はないのに、億劫だった。
「はい、これ使って」
イベントの団扇を渡された。あおいでも熱風がくる。
「あたしはビールを待ってる。限界まで乾かして、そこにビール流してやるの」
茶髪のワードセンスが良かった。喉が鳴った。
「もうおしまいだから、あとちょっとで流しこめるぅ」茶髪がリズムをとってた。
酒好きなんだ。何歳だろ、24~5くらい?会話するの面倒で聞かなかった。
そこにいたのも、晩メシを外で食おうと頃合いをはかっていただけ、暑くて動くのが面倒だった。
「ねぇお兄サン、一緒ビールいこうか?」
「ああ」断るのも、断りの言葉を探すのも面倒だ。ああというのが一番ラク。
茶髪は早速撤収をはじめてる。手慣れてる。
あっという間に屋台の上はなにもなくなった。
「スゴイ悪いんだけど、ちょっとだけ手伝ってくれる?、ここ持ってて、すぐ終わるから」
屋台のパイプを茶髪が持っている。仕方なく手を貸すがホントに一瞬で終わった。
手早くテントもまとめられた。
テントはその場に置いたまま、大きなバックひとつとショルダーをタスキ掛けして茶髪がイコ、と歩き出した。
「お見事だ」
「ナニが?」
「片付けるの」
「慣れてるからね」
アクセ屋が一瞬で跡形もなくなり、テントも消えた。手品を見てるようで、感動した。
茶髪のデニムのホットパンツを見た。
日焼けした太ももが黒のエスパドリーユまで伸びている。靴下ないから、脚長く見える。足首にも黒いアンクレットが巻かれてた。
コインパーキングに茶髪が入った。軽ワゴンの前でバックを置いて、ショルダーの中を見ていたが、ピッと音してウインカーが光った。エンジン掛けて全部のウインドウが下げられた。
「ちょっとだけ待っててね」
建物どうしの間でずっと日陰だったのだろう、待っているのに苦痛はない。茶髪はバックを後ろの席に入れた。
「もういいよ、乗って……」
オレも乗り込んだ。生ぬるいエアコンの風、冷風なのか、調整スライドを見る。つまみは一番左の青いところにある。茶髪が車を出した、カーステのスイッチを茶髪が押した。レゲエが流れた。この暑さにお似合いだ。
バックミラーにたくさんの芳香剤の紙プレートが下がって揺れてる。
しばらくウインドウ全開で走っていたが、エアコンの冷気を感じるようになった。
茶髪が窓を上げた。
「やっと涼しくなった」独り言を言ってる。
どこ行くのか聞きもせず、オレはレゲエを聞いていた。
エアコンが効いて眠りそうになる。ああ、涼しい……。
車が止まった気配に目を開けた。
家の中?周りに配線ケーブルのリールが目に入った。
「着いたよ…起きた?…」
「ああ、そう」身体を起こす。自分でシート倒してた。椅子の下に手をやり、リクライニングを戻した。
ここどこ?そう聞く前に「あたしんち」と茶髪が言った。
ドア開けたら、もわっと熱気に包まれた。
ちょっと待ってて、すぐくるから。茶髪が奥に消えた。
電気の設備工事に使うであろうモノがギッシリあった。
クルマはこの広いスペースの一角にある。軽のワンボックスが停まってる。
その奥に事務所のようなアルミ壁で囲われた場所。
ホントにすぐ茶髪が戻ってきた。Tシャツの色が変わってる。
「あたし行ってるとこでいいよね」
「ああ….いい」
外に出ると、3階建ての建物だった。電柱の住居表示に品川区○○町とある。
少し歩くと商店街に入った。2階への階段を上がり店に入った。
涼しい……そこでもレゲエが流れていた。
いらっしゃい、ドレッドヘアの姉さんがむかえてくれた。一瞥した時黒人に見えた。よく見ると黒人とのハーフのような顔立ちだった。真っ黒なのに歯だけ白い。
今日ナニ、異常だよね~この暑さ!とりあえず、生ふたつね、と言いながら茶髪は窓側の席に座った。オレもその前に腰掛けた。
真っ赤にペイントされたテーブルの上に生ビールが運ばれてきた。
「暑かったよね~でも、いい時きたよカナは。エアコンつけても効かなくて、あたし外出てたもん、夜なってやっと涼しくなった」
ドレッドの姉さんが、オレを見て会釈した。
「ソウルソティー大盛りで」
「この暑いのに、それつくらせるか!」姉さんが抗議してる。
「じゃソウルソティー超大盛りで……」
「はいはい、かしこまりました」
乾杯ね、茶髪はジョッキを掲げる。オレもジョッキを合わせた。
もう汗かいてるグラス、喉に流し込んだ。砂漠に水まけたようだ。潤してもすぐ渇く、また潤い求めて飲む。ジョッキはすぐ残り少なくなった。茶髪のグラスも半分になってる。
ドレッドの彼女もデニムのホットパンツ。茶髪より丈が短く、お尻の下の肉の線が見えてる。
半ケツ丸ダシにタイトフィットしてた。
この街でデニムのホットパンツはブームなのか。茶髪はカナって名前なんだ。それに聞いたことない食べ物。涼しいからやっと会話する気おきた。
「な、ソウルソティー?何それ?」
「はははは……やっと口きいてくれた……ずっと何きいても、ああしか言わなくて、あたしおもしろかった……なんでこのヒト、ああだけなんだろって」
「……そうか?そんなオレ、ああ、しか言わなかった?」
「ああ……」
茶髪、カナがオレを見てクスクス笑った。
その笑顔が可愛い。オレも笑った。
「ソウルソティー、って、どっかの国の民族料理みたいでしょ」
「うん」ああと言わないよう意識した。
「そんな料理どこにもないの、この店のオリジナル、いろんなモツを焼いてソースかけただけの……でも、美味しいから、ビールのすんごいベストパートナー……」
「へぇ….腹減ったわ…‥.オレ、晩メシ食おうと、あの辺歩いてたんだ」
「で、カキ氷2杯ね……」
「あれはとっくに汗になってる」
時々、この女は面白い言葉を使ってくる。ビールのベストパートナーね。うまそうだ。
ジャーと焼き物を作る音が聞こえた。
「お兄さん、なんて名前?待って……一文字……なになにとか、なに太郎じゃないね、シンプルなヒトモジだけの感じする。シュンとかケンとか……」
当てられた。ホント驚いた。
「スゴイ、当たってるよ!」
「えっ!マジ!どっち?」
オレは自分の名の漢字を説明した。それを言い当てるのは難しい。
「へえ、はじめてきいた」
ふたりともジョッキが空いてしまった。
またビールでいい?オレは頷く。サトミ、ビールおかわりね。
「1分待って、焼き上がるから」
タバコに火をつける。もう1本ちょうだい、カナが片手だけで拝みのポーズをした。
マルメンの箱とジッポーを渡してやる。
「あたしもおんなじの吸ってるから、いっぱい吸ってごめんね、ひと段落したら買ってくるから」
「ここに置いとく、なくなったら買ってくればいい。好きに吸って」
ドレッド姉さんが、木皿とジョッキふたつを抱えてきた。
鉄板の上でモツ肉が湯気を上げてる。焼肉屋の匂い。うまそうだ。
いろんなモツが見えた。
「今日のはね、スペシャル、ガツも入っとる」
ドレッド姉さんが中身を説明してくれた。スラスラ名前が上がるのをきいても、覚えられない。
ひとつひとつ食感が違う、ソースと和風だし、コチジャンの味が隠れてる。ニンニクも効いてる。これはミノだ。小さなハチノスまで入っている。これはうまい。白いご飯が欲しい。
「いい料理だ、なんでソウルソティーなの?」
「……そのまんま……内臓ばっかだから」
「ソウルは内臓にあるのか?」
「……ははは、……少なくとも爪や髪の毛にはなさそうでしょ、伸びたら切っちゃうし」
「どっちかって言ったら、このあたり」カナはみぞおちを撫でた。
脳が取り仕切ってるヒトの感情。いま口に入れたこの肉片、舌の味蕾が心地良いと脳に教えている。肉片は咀嚼され食道を通り、さまざまな臓器の分泌液の助けを受けていく。それが血となり肉となることを思えば、ソウル、魂は内臓のソコココにもあるだろう。
「あーあ、今日はゼッタイヒマだわ~」
肉焼き終え、仕事がなくなったドレッド姉さんがカウンターから出てきた。
「今日みたいな暑過ぎる日はね、みんな部屋ん中にこもって、外に出てこないの」
「だったら、サトミも飲んじゃえば。一杯だけ、あたしご馳走したげる」
「待ってた……さっきからビール注いでて、そのまま飲みそうになってたから」
ドレッド姉さんがカウンターに入ってジョッキを持ってきた。
オレたちのグラスよりひとまわり大きい。オレとカナの隣の椅子は空いていたが、ドレッド姉さんは隣の席の椅子をテーブルに寄せた。
「なんで、自分のだけ大きいの?」カナが大きなジョッキを持ち上げる。
「ん……マイジョッキ、マイジョッキだから」
3人で乾杯をした。カナにタバコを上げたら、この店にいて、飲んでいる。
真夏の暑さがそうさせた。
「彼はどこのヒト?」ドレッド姉さんがオレのことをきいた。
オレは住所を言った。
「ははは、住んでるとこじゃない。あたしワルかったか、なんで一緒飲んでんのって」
「今日あたしがアクセの店してたら、夕方ね、あたしの後ろに座って、カキ氷2杯連チャンで食べてたの、スゴイスピードで。面白くて見てて、タバコもらって、ビール飲みいこって誘ったら、ああ、しか言わないで、着いてきたの」
その通りだった。
「………なんか子犬でも拾ってきたみたいな話なんだけど、知り合いじゃないんだ」
「そう、夕方会ったばっか……」
「カナ、新しいカレシ連れてきたって思ったわ、今までとタイプ違うけど……ね、お兄さんいくつ?」オレはこたえた。
「えっ、なんだ、ほぼタメじゃん……あたしずっと上だと思ってた」カナが言う。
「うーむ……確かに落ち着いてるナ」ドレッド姉さんにも同意された。
「ちっとも落ち着いてないし、迷ってばかりいる。それに今日は暑くてアタマ燃えてた」
何してんの、大学どこ、彼女いんの、と合コンみたいにいろいろ聞かれる。
オレも聞きたいことをきいてみた。
「そのドレッドって洗えるの?」
「ははは、洗えるよ、じゃなきゃクサイでしょ、ほら嗅いでみ」
ドレッド姉さんがまとまった髪を撫でている。少し寄って匂いを嗅いでみた。
ムスクのようないい匂い、ほんの少しさっきの肉を焼いた匂いが混じってた。
それをそのままに伝えた。
「ヤダ、このヒト……子犬みたいって言ったけど、鼻も犬みたいにキク」ふたりとも笑ってた。
「シャンプーね、あんまりできないの、週2~3回くらい、洗うとどんどん編み込み取れちゃうから、で、2日前にたしかにムスクのシャンプー使った」
姉さんは自分の髪の匂いを嗅いでる。
嗅覚と味覚が鋭敏だった。ナンの役にも立たない。前世犬だったのかも知れない。
生理の女の生臭さが距離を置いてても鼻につき気分が悪くなることがある。
味覚の方は、友達のところで吉ギュウを忠実に再現してこしらえたら、みんなオレの特技に驚いていた。ナニ入れたと、レシピ聞かれ、唯一変わったモノなら酢を入れたとこたえた。ワインの代わりにほんの数滴。気に入ってるラーメン屋のスープ、煮干しの風味がいつもと違う。オヤジにそれを指摘したら、驚かれた。
カナもオレも3杯目を飲んだ。
カナはビールを少し飲んで、それにトマトジュースを足していた。少し飲ませてくれた。イケる味、オレもトマトジュースをもらう。
ドレッド姉さんは、何回もビールを持ってきてる。
これは自腹だからね、とカナに言ってた。
ポテチとかサキイカとかベビーチーズとか袋ごとドレッド姉さんが持ってきた。
冷蔵庫からハーゲンダッツも3つ出してきた。とけるからソッコー食べよ。
すっかり宅飲みになってる。おもしろい店。だけどソウルソティーは美味かった。
ボブマーリーの大きなパネルにうまくライティングがあたっていた。
その脇の葉っぱのディスプレイ、「HIGH…LIFE」と光ってる。
外が暗くなり、蛍光の緑が妖しく輝いてきた。発光式のデジタル時計が9時を回ってる。
「もう、今日はヤメた……店終わり終わり」
ドレッド姉さんが伸びをした。
とっくにアナタ仕事してないじゃん、と思ってた。
姉さんは、窓のブラインドを下ろした。カナも手伝っている。
シャーシャーとブラインドを下げたら、キレーな虹色、7色にスラットが色分けされてる。
「お!スゲ、ブラインド」
「でしょ、あたしの自慢なの」
「え、あたしがそうしょって言ったんじゃん」とカナが笑ってた。
9時でクローズする飲み屋、気楽でいい。
この店はフリー客はゼッタイ入ってこないだろう。
夕方、まだ明るいうちはなんとも思わなかったが、夜になった今の雰囲気は怪し過ぎる。
ドレッド姉さんが入り口を出て行く、しばらくして戻りそのドアにもウチ鍵を掛けた。
完全なる宅飲みをしようということだ。
ね、こっち来て、ここの方が楽だから、とカナがソファ椅子に座った。
たしかにそっちが座り心地良さそう。ドレッド姉さんがしばらくカウンターに入って厨房から出てこない。
「ね、楽しもう……」カナが言う。
「楽しいよ、今でも面白い」
オレが言うと、もっと面白くなるから、と笑ってた。
ドレッド姉さんが、お待たせ~と、トレイにガラスのポットと海苔の缶を持ってきた。
着火マンの短いの、歯ブラシ、ナニするんだ?いろいろ乗っている。
ガラスのポットは変わった形をしていた。吸えるような穴が開いて、その反対側には金属の受け皿がある。ポットの中には水が入っている。
あ、そうだ、飲み物と、思い出したようにドレッド姉さんは、またカウンターに行き、ドクターペッパーの缶を3本に見たことない缶を数本持ってきた。好きなの飲んでね。
何がはじまるのか面白い。
カナが海苔の缶から青緑のタバコ?葉っぱを刻んだモノをポットの受け皿に詰めた。
指先で押し込んでる。すぐ吸い口に唇をあててチャッカマンで葉っぱのとこに火をつけた。
スッーと長いこと吸い込んでいる。目を閉じてる。チリチリって葉っぱが燃える音が聞こえる。
口を離してもカナはじっと黙っていたが、しばらくしてプハァーと煙を吐いた。オレの顔にも青臭い植物の匂いが漂う。
あ、この匂い……昔、タバコで嗅いだことある。
フィルターなしの見たことないタバコ、大学入ってすぐのころ、友達のアパートに行った。神戸から来たソイツとはウマが合いよく一緒に遊んでた。
部屋行ったら、ソイツの彼女いて、ふたりで吸ってたヤツ。吸ってみ、と回され変な気分になった。
どう?いいだろう、と言われたが、いいも悪いもわからない。いきなり酔っ払ってしまった。
いや、酒飲んだのとは違う。周りのことがクリアにわかる。
おまえもするか、と聞かれた。
ソイツ彼女の服脱がして全裸にして、エッチはじめやがった。
彼女を上に乗せて尻の穴に指入れてる。ほら、ここ空いてるから来いよ、と言われた。
女も来て、とオレを見た。女のマンコにズッポリと、ソイツのが出入りしてた。
時々見えた、女の肛門、そこばかり目に付いた。
女のお尻入れたかったけど、躊躇いが大きかった。
なんか、オレだけ残されて置いて行かれたって感じ。
あの時チンコがすごい膨らんでいた。
オレ、帰る、って部屋から出てきた。
ほんの2、3回吸っただけなのに見えてくる景色がキレーに思えて仕方なかった。
フワフワと地に足がつかない感じ、気持ちいい。あとからソイツにそのタバコのホントの名前を聞かされた。
同じ匂いだから、たぶんこれはヤバイやつだ。
ドレッド姉さんが目を閉じて吸ってる。
カナの横顔を見てたら、オレを見てふふんと笑ってた。何とも思わなかったのに、ムラムラした。
あの時の友達に抱かれてた彼女の尻の穴が重なった。
ドレッド姉さんが煙を吐いた。やっぱりプハァーと大きな音、タバコ吸って吐いてもスーッかフゥーとしかしないのに。
ドレッド姉さんが、したことある?と聞いてきた。
同じ匂いのタバコみたいなの吸ったと、言ったら、ジョイントしたヤツはダメだよ、とその時のことをやたらと聞きたがった。オレは、彼女たちがどんな反応するか全部話して聞かせた。
「へー、なかなかイカスね、なんでしなかったの?そん時、ムラムラしなかった?」
それも正直にこたえた。
なんかカワイイ、これのやり方教えてあげる、と姉さんが言う。
カナは、また吸ってる。吸い終えたものを姉さんが受け取り、受け皿の草を歯ブラシで取り除き、海苔缶から新しいモノを詰めた。海苔缶にはお茶の葉みたいにギッシリ詰まってた。
いい、咥えて吸いながら火をつけるの、そう、ゆっくり吸えるだけ吸って。
ポットの中の水がポコポコ泡をあげる。
タバコとは違う味、もう吸えない。煙吐こうとしたら、ダメ、そのまま息止めて待って、と言われた。
オレから、ポットを取ってドレッド姉さんが吸おうとしてる。苦しくなったら吐いてね。
プハァー、同じ音立てて煙吐いた。呼吸止めてたらそうなるのか。
カナが飲む?とドクターペッパーをオレの前に置いた。あとからもらう。オレはトイレに立った。
トイレの壁に外人がセックスしてる白黒写真がいっぱい貼ってる。
タイル壁に無造作に何枚も。色んな体位。今じゃない、60年代とかそんな感じ。
勃起チンコ見せて男と女がVサインしてるのもあった。
小便しながら、感心して1枚1枚見ていった。
トイレから出ると、カナがTシャツ脱いでブラだけになってた。
エッチな雰囲気になってる。
姉さんは、レゲエの曲に合わせて身体揺らしてる。
「チンコ、ちゃんとチンチンってしてきた?」いきなりカナに言われた。
「えっ!……」
オレは絶句したが、ドレッド姉さんがハハハって笑ってる。
「そうオトコはオシッコしたら、チンコチンチンしなきゃダメなんだよー」
「女は、紙取ってマンマンと拭くの……」ふたりで笑ってる。
はい、吸って、と姉さんがポットオレに渡して、アッツい、あたしも脱ぐとTシャツ脱いだ。
ドレッドがパラパラと揺れた。黒いブラに黒い焼けた肌が現れた。
2回吸ってしばらくしたら、レゲエの音が鮮明になった気がした。
音響がまるで違う。全部エコーが効いてるようだ。ボブマーリーの顔が、にやけてるように見えた。ブラインドの虹が輝いてる。
気分がいい。なんでオレだけTシャツ着たままなんだ。脱ごう。ついでにハーフパンツも邪魔に思えたから脱ぐ。肌にまとわりつくモノがウザったく思えた。
あら、気持ち良くなってるね、キタね、カナが笑ってる。
もっと気持ちよくしたげる、とカナは身を乗り出してオレのモノを触りはじめた。
違和感や驚き、何もなかった。それが自然で当たり前に思えた。
ドレッド姉さんはオレの隣に来て、カワイイね、アンタってキスしてきた。
それも自然にオレも舌を返した。オレと姉さんの間にカナが顔を入れてきた。
3人でキスをした。トリプルキス、はじめてだったが、誰の舌かわからぬまま、舐め合った。
チンコが張り裂けそうだ。誰かの手でショーツ下ろされ、誰かの手がチンコやさしくしごいてる。誰の手?見ようとしてもふたりの女がキスして離れない。
ドレッド姉さんは、オレの鼻の穴とかまで舌を入れてきた。
カナがチンコに向かった。咥えられた。あっと声出したら、姉さんが、どうしたの?と聞いてきた。チンコ……。なあに?チンコどうしたの?としつこい。
チンコしゃぶられた。と言ったら、じゃあたしの舐めて、と立ち上がり、デニムのホットパンツを下ろした。
黒い尻にTバックも黒い。Tバック、実際見るのは、はじめてでその時はドキドキした。
自然に受け入れられない。不自然な胸の高鳴りが止められない。
ほら、ここ。姉さんがTバックのお尻のヒモをずらしたら、お尻の穴が見えた。
真っ黒に日焼けしたお尻の真ん中に肛門のシワだけ見えた。
友達の彼女のお尻の穴を思い出したが、姉さんの方がずっとエロい。
そのお尻近づけてくる。舐めて……オレも舐めたい、オレは紐をずらしてそこに舌をあてた。ムワッとエッチな匂い。
チンコはカナが扱きながら、ジュボジュボ舐めている。
女に口でやられてこんなに気持ちいいなんて。
姉さんの肛門がヒクヒクして舌が吸われそうになった。
あ、イク……声出した。カナの口の中に漏らすように出してしまった。
カナは手も舌も動きをとめて、チンコ咥えていたが、精子漏れぬよう大事そうに、ゆっくり顔を上げた。先っぽ抜ける時、ジュルって音立てて唇離した。
で、ニコニコ笑って口を動かしてたが、ゴクンと音立ててた。オレのを飲んでる!
「スゴイ濃いの」
小さくなりはじめたチンコの先をまたチロチロ舐めてる。
「もう我慢できなかったんだ……ウフフ」
姉さんが考えてること、この時、ハッキリわかった。まだまだこれからスタートだよ、そう言ってるのが耳にしてないのに聞こえる。不思議な感覚。
それを確かめたくて、イマまだまだこれからって言った?と姉さんにきいたら、うん言ったよ、とアッサリ言われた。
やっぱそうか、オレの空耳じゃなかった。姉さんと不思議な会話できるの知った。
今度オレから話してみよう、と思ってたら、姉さんとカナがキスしてる。
カナのホットパンツが脱がされてる。下着も。姉さんもTバック脱いで、ふたり共全裸になって絡まってる。姉さんのほうが黒い肌。
喉渇いてドクターペッパー開けて飲んだ。全然クスリ臭くない。ハーブの香りの美味い飲み物ゴクゴク飲んだ。
そうだ、姉さんに言おう、お尻の穴舐めたい、って。
いいよ、来てってお尻をオレに向けた。エッ!聞こえたの?姉さんのお尻に寄って行き、それを確かめる。
イマお尻舐めたいって言ったのわかったの?ウンと姉さんが言う。なんでもわかるんだ。スゴイ楽しい。よく見えるように姉さんのお尻つかんで開いた。さっきは少ししか舐められなかったから、いっぱい開いて舐めてあげる。
鼻近づけたら、エッチな匂いがムンムンしてる。チンコを硬くする匂い。スゴイ香水。
マンコはピンク色して、ツヤツヤに濡れていた。
このお尻の匂い、なんてステキなんだ。オレのチンコ、もうムズムズしてきた。
姉さんのお尻の穴にしゃぶり付いた。女の子のお尻の穴舐めるのが、ただ舌で舐めるだけなのにこんなにワクワクするなんて。
前にも何回か舐めたし、お尻にチンコ入れたけど、ここまでは興奮しなかった。もう、お尻の穴大好き、離れられない。
姉さんがスゴイ上手、あたしのお尻美味しいでしょって言ってるのが聞こえた。声に出してオレはこたえた。
「美味しいよ、お尻の穴……スッゴイ美味しい。チンコビンビンなる!」
姉さんもカナもオレを見た。ふたりともやさしく笑ってる。
やっぱスゴイエッチなんだ。姉さんがそう言った。
ウンとうなづいたらカナが不思議そうな顔をした。
誰かと話してる。とカナが言う。なんで?イマ話したじゃん、とオレが言ったら、あたしとね、って姉さんが言ってくれた。
そうだよ、ナニ言ってんのか、わかんねーな、ホント。急にカナをイジメたくなった。
エッ!もう大きくしてる、カナがヤバ、マジうれしいと繰り返す。
姉さんがどいてくれる。姉さんはナニも言わなくてもゼーンブオレのことわかってる。カナにもオレのこと教えなきゃ。
ソファーに仰向けのカナの顔を舐めてやる。オレのこと舐めたから今度はオレが舐めてやる。汗の味、塩っぱい。顔つけると汗でヌルヌルする。カナの両手を伸ばして、掴んで脇の下も舐める。
スッゴイ汗臭い。ムンと蒸れてる。カナはA型のオンナだ。そんな匂いだ。少し毛がジョリって舌にあたる。後ろから姉さんの声が聞こえた。イクよ、って。え!どこイクの?わかんない。
でオレの尻が開かれた。ケツの穴にヌルヌルしたのあたる。ナニしてんの?聞いても姉さん黙ってる。ヌルヌルは姉さんの舌だ。オレへお返ししてくれてるんだ。
ムズムズしてカナにチンコ入れたくなった。入れたい。オレの声出たのか、出さなかったのか、わからないが、カナは足を開いてくれた。聞こえたならそれでいい。
「な、オマエA型だろ?」「なんでわかったの」
ホラ、アタリ!勃起をカナのマンコに押し込んだ。カナはアーンと言った。
またアーンと言った。あれ?なんか、同じことが今起きたのに。もう一回、抜いて入れる。
やっぱり、アーンと言う。なんか面白い。何回も抜いて、入れる。
その度、アーンって聞こえる。耳元でエコーが効いて。
いい声だ。いっぱい聞きたいからいっぱい突いた。
ずっとアーンアーンアーンって聞こえぱなし。
オレのケツから姉さんのヌルヌルがなくなり、かわりに指がウニョウニョケツの穴に入ってきた。
おっ!これはスゲー……。
ケツの中で姉さんが指動かして、ここ?それともこっち?ってイチイチオレの感想を求めてくる。そのうち、ケツの中にビーンとするとこあった。
あたった瞬間、そうそこ!って言った。
わかった、ここね、って姉さんがそこばかり、指で押してくる。
押されるとオレはカナを押してしまう。姉さんは指1本でオレとカナをあやつってる。
スゲぇわ…姉さんはヤッパ。カナはずっとアーンアーンをエンドレスに歌ってる。
その歌とレゲエのリズム、完璧にハモってた。
コイツらカッコイイ。オレもがんばろ。
姉さん、押してもっと強く、いいよ、わかった。
姉さんの指、太くなった。
ん?なんだ。指2本か、スゲぇ!ビーンの場所にあたりながら、もう1本がグルグルしてる。ケツの中が忙しい。
それに合わせなきゃ。オレもカナを突いて勃起をローリングしてやる。
ムツカシイけど段々慣れてくる。よしつかんだ。コツがわかった。
わかったならもういいでしょ、と姉さんがケツの指抜いた。
オレのケツの穴、指咥えたがってる。でもコツわかったから、そのままローリングした。
お疲れチャンって姉さんがきた。お!ちゃんとやってるやってる、ってチンコマンコの擦れてるとこガン見して、自分のマンコいじってる。姉さんのマン毛小さく整えてある。姉さんが急にカワイそうになった。
カナに抜くよ、って言ったけどカナは静かに寝ている。
そういえばカナのアーンがいつのまにか聞こえてなかった。カナ、一回抜くから、でもカナ寝てる。
あらら完璧イッテルね、と姉さんがカナにやさしいキスをした。
唇をいっぱい吸ってる。ずっと離れない。オレは、姉さんの後ろに回った。
お尻を開いて聞いた。お尻の穴にチンコ入れていい?姉さんはお尻の穴で、いいよって言った。さすが!姉さんはお尻でも話せる。ソンケーした。そこにチンコをぶち込んだ。
ヒッって姉さんが声あげる。スゴイ!チンコ入れてもまだ色んなこと話してくる。
カタイね、女の子のお尻の穴好きなんだね?エロくてサイコーだよ。もっと強く突いてね、って姉さんがお尻の穴を通して話してきた。
オレはそれにちゃんとウン、わかった、ってチンコを通してこたえてあげた。
姉さんはカナから離れて、壁に手をついてた。
片手はボブマーリーにあたってる。ボブマーリーが少し揺れて笑ってる。アナルセックスしてるとこ見られてオレ少し照れ臭くなった。
恥ずかしいから、姉さんの背中に隠れるようにピッタリくっついた。
姉さんのドレッドがオレの顔にあたる。たくさんの髪のヒモが揺れて顔や頭を撫でてくる。ぶつかる度にムスクのいい匂いがする。
姉さんの背中は黒くて汗でツヤツヤに光ってる。舐めたら塩っぱいだけじゃない、感じたことない甘さも混じっていた。なんの味、背中から首まで確認した。
姉さんが立って片足だけソファーに乗せてくれた。勃起が動きやすい。姉さんがキスしたい顔したから、汗ばんで黒光りしたうなじから舐めてあげる。真っ黒な乳首がツンと立ってる。カワイくてコリコリしてあげた。
あたしイクって、また姉さんがお尻の穴でキュッキュッって話してきた。
「いいよ、そうそう…スゴク上手…そのままね……」
ウンわかったってチンコで言ってあげる。
ああーイグって、今度は姉さん声だした。
姉さんのその瞬間の顔、汗だくで、あ、いいなと思った。
今度はお尻の穴で、もっと突いてってキュッキュッ言ってきた。
ウンわかった。勃起で返事する。さっき教えてもらったローリングしたら、姉さんも気持ちいいだろと、そうしてあげた。
そしたらキュッキュッって、いいよそう、そう上手じゃんってまた喜んでくれた。
いっぱいローリングしてあげる。カナとおんなじアーンアーンってお姉さんが歌いだした。
友達同士、いいもんだなぁ、おんなじ歌。でも今流れてるレゲエにリズム合ってない。
もっとアップテンポなんだよ、オレがリズムとるね、ズンズンズン、こんな感じ。あっあっあっ、そうそう。
リズム合ってきた。
壁に手をついて、姉さんがオレを振り返る。
もうダメって、あっあっあっ、と姉さん言ってる。また気持ち良くなるの?声に出してきいた。
「ウグゥーウン、イっちゃう。」
姉さん、前に倒れた。勃起がギューと引っ張られ抜けそうになった。
姉さんソファーの背もたれに手をついてる。ちょうど四つん這いのイイ感じ。そのまま、またローリングしてあげた。
フンフムウフンって姉さんもうリズム忘れてる。
もういい。オレだけでローリングしてやる。
レゲエがいつのまにか、ダンスナンバーになってる。
セクシーな女の声Ah…Ah…Ahとリフレインしてる。ずっと続いてる。
それに合わせて姉さんの黒光りした、艶々のお尻にファックした。
まだAh…Ah…Ah…Ah…って続いてる。CD?有線?壊れてる。
アッ、アッ、アッ、姉さんもハモってる。
ウッ、ウッ……ダメ……オレ出そう。
「姉さん……イク……出ちゃウッ……イク……」
姉さんに無視された。
でも、姉さんのおしりの中でビュービューとチンコが叫んでる。
オレのお尻の穴の奥の辺りから、そのビュービュー飛び出したのわかった。
チンコの中の管をビュービューが走り抜けていくのも、ハッキリわかった。
いつもならわからないこと、いっぱいわかった。
女の子のお尻の穴がサイコーなのが、イチバンわかった。
喉渇いた。姉さんから勃起抜いた。姉さん動かないでそのまま待ってる。
カナ完璧気持ち良さそうな顔して寝てる。
オレ姉さんのエロ尻見ながらドクターペッパー飲んで、タバコ吸った。
すごく贅沢なプラチナタイムだった。緑の葉っぱのディスプレイもキラキラしてる。
あっ、姉さんが待つのやめて、ソファーに丸くなった。
オレがタバコ吸ったから待てなかったんだ。
でもいつもの30倍くらいメンソールが効いてて美味いんだ、このタバコ。
メンソールの含有量ゼッタイ間違えてる。
オレのチンコ、まだビーンと勃起したまま。先っぽに白いヌルヌルをのせてる。オレの作ったカルピス。苦いよ、っていつかの女が言ってた。誰だっけあれ?
それにしても、ああ、いい気分……。
寒くて目を開けたら、まだふたり寝てた。寒い。エアコン効き過ぎ。
オレの座ってたとこにエアコンの風、直接来てた。どうすりゃいい。立ってリモコン探す。
カウンターの上にそれっぽいのある。温度をピッピッ2つ上げ、風量、弱にした。ティッシュもあったから、チンコ拭いた。パンツ探して履いた。Tシャツもはおる。また椅子に戻り目を閉じた。
次、目を開けたのは、音楽やんで、タバコの匂いしたから。
カナも姉さんも起きて椅子に座ってた。ふたりとも下着付けてる。
「起きた?ハハハ」「超オモシロイ」ふたりが笑ってる。
「……?」
「そこに座ってゼンゼン動かないの……目瞑って……で、ね、そろそろ帰んない?とか聞くと、
コクンって返事すんの」
「あ、起きてんだ、と思って、ね、イコっていってもそのまま動かない」
「で、ふたりで色んな質問したの」
「エッチ気持ちよかった?とかアタシのこと好き?って聞くとコクリっていうの」
「ナニ聞いてもウン、って。意識あるんだろね」
「ゼンゼンわかんない。気持ちよくてフワフワしてた」
ね、帰ろ……アタシんとこで寝ていきな、姉さんの部屋に着いていく。
歩いてすぐだったけど、途中、花火をした後の火薬の燃えカスの匂いがしたことは覚えてる。
目を開けたら、見慣れぬ天井だった。
見渡す。姉さん、壁にピッタリ付いてオレに背を向けてる。壁を抱いてる。オレの寝るスペースを少しでも広くしようとしたのか、オレの気配が眠りに煩わしかったのか。
ドレッドが枕とシーツの上に広がってた。起きてベッドに腰掛けた。下はショーツだけ、脱いだ記憶ない。
オレの履いてた……カーキ色のカーゴ。椅子に掛かってた。そこにいき、サイドポケットを探る。
マルメンあった。ジッポーもあった。1本抜いて火を付ける。あと3本残ってた。
椅子はその1つだけ。おしゃれなデザイン。映画のダイナーのカウンターにあるようなヤツ。なんか見たことあると思ったら、姉さんの店のカウンターにあるヤツだ。
オレが腰下ろしてるとこには、厚手のラグ敷いてあり、ラスタカラーのクッションが置かれてる。ガラステーブルの上には灰皿と姉さんの編み込みバッグ。
フツーのガラス灰皿に灰を落とした。使ってないキレーなヤツ。
後ろ見ると、カラーボックスふたつ並べてある。本の背表紙を追った。洋書も半分あった。
ペパーバックは、全部、英語のタイトルだった。
日本語のタイトル、その本はオレも持ってる。「ソウルミュージック・ラバーズ・オンリー」同じ本に親近感わいた。
1冊大きいサイズの背表紙、取り出してみた。写真集だった。全部モノクロの風景写真。
どこかわからぬ地の荒れ果てた家や、スゴイうねった太い木とか、1枚1枚インパクトあった。
姉さん、モゾモゾして起きた。何時?姉さんが物憂げに聞いた。何時だろう。
「わかんない、おはよ」とオレは言った。ちっとも暑くないのは、エアコンが効いてるからだった。
テレビつけよ、と思ったらテレビ見当たらない。
「あのね、電話して、そこのうえ……あるから、イイナって」
電話はあった、イイナって?あ117か。姉さんとこ、テレビも時計もないんだ。
プッシュホン取る。久しぶりにこの声聞いた。時間わかったけどしばらく聞いてた。これって録音だろうけど、いつ交代するんだろ。そう思って受話器おいた。プッシュホンのデザインが見たことないアメリカぽいモノだった。
「午後1時35分20秒だった」
「……ありがと」
姉さんがようやくベッドから出た。Tシャツの下、紫のTバック。昨日黒だった。オレの前、テーブルの脇を通り過ぎていく。プリプリと揺れるお尻に紫の紐が食い込んでいた。ヤバ、ムラっときた。昨日すんげ気持ちよかったけど、お尻見せられて、もうムラムラしてる。
姉さんは、隣のキッチンで何かしてる。お湯沸かすレンジの音がした。
後ろのカラーボックスの上にラジオがあった。
テレビも時計もないのにラジオだけあるんだ。スゴイたくさんスイッチがあるカッコイイ、ラジオ。そのONの表示うえに上げる。
FEN?短い音楽フレーズ女の歌声。そのあと英語のニュース、早口で、どこかの街が干上がっちまったぜって言ってる。
音量のレベル上げる。男のアナウンサー、リズミカルにニュースまくしたててる。
ここにチューニングされてたから、姉さん、いつもこれ聞いてるんだ。
しばらくして姉さんがトレイに何か載せてきた。昨夜も姉さんのは、トレイに色んなモノを載せてきた。
白い大きめのガラスボウル、同じの2つ。白い液体、牛乳かな、お粥みたい。薄茶の粒がいっぱい浸ってる。
メイプルシロップのボトルもあった。それに丸のままのトマトも2個水滴付いてる。オレンジジュースのパックとグラス。
白いボウルが気になる。
「さ、なにもなかったけど、外暑そうだから出るのヤでしょ。ここで食べよ」
「……これナニ?」
「食べたことない?……オートミール……麦だよ、オーツ麦、これかけて食べて」
メイプルシロップをオレの前に置いて、スプーンですくってる。一口食べてメイプルシロップかけてた。オレもマネしてシロップ少しかけて口にする。
お粥よりずっと食べやすい。ホットミルクにメイプルシロップの甘さ、麦の香ばしさと食感。
「美味い、お粥よりずっと美味しい、姉さん」
「よかった、アタシ、朝コレ食べて育ったから習慣なの……それと、その姉さんってのやめてくんない……年違わないんだから……サトミって呼んで」
もう少しメイプルを足した。トマト冷たくて歯にしみる。オレンジジュースもふたりで飲んだらカラになった。
FENがスローなレゲエを流してる。食べ終えてサトミが食器をキッチンに運んだ。
トレイを持った後ろ姿、また黒い尻に紫の紐食い込ませてる。
サトミ戻ってきた。オレに尻を向けて電話の脇の化粧品の瓶取ってる。
また、至近距離でサトミのお尻見せられた。
「ね、どうする……これから……店休みだから、アタシ、今日ヒマだけど……」
「オレここにいていい?」帰るのがイヤだった。
「うん……いていいよ……って……なんで大きくしてんの?ハハハ」
サトミに気づかれた。あんな風にお尻見せられたら、大きくなるさ。
「サトミが、お尻見せるから……」サトミってすぐ呼べた。
「おいで…….昨日の続き……しよ」
サトミは全てを脱いでベッドに戻る。
オレも全裸になりサトミの傍に潜り込む。
「もう……昼間から……また……」
「昨日、オレと色んな話しただろ?言葉出さずに」
「……なんかそんな気もするかなぁ……おぼえてないけど」
「……あんな話したのに」
「キメてたらナンでもできそうだけど、ナニもできないんだよ」
秘密の通信ができてたように思えた。
「じゃ夢みたいなもの……オレみてたのか?」
「……たぶんね、でも……たしかなのは、今、ここにふたりでいること」
「それしかないの?」
「それで充分でしょ……それだけちゃんとわかってたら……」