人事異動でこの街に来て、バタバタした1ヶ月がすぎた。
仕事内容は同じだが、支店が変わり人間関係も環境も変わっている。でもやっと生活も安定して来た。俺は休日に街に出た。
本屋に入り、雑誌コーナーを探していると、知った顔に出会った。若い頃の小倉優子に似た横顔。
高校の時の元カノだ。1年後輩だった彼女。
いや、本当にそうか?自信がなかった。まだ幼さを残してる俺の中の彼女の記憶。
それに対し、目の前で女性雑誌を読んでいる彼女は、完全に大人の女だ。
立ち姿さえ美しく、ただ立ち読みしているだけなのに、言いようのない色気を醸し出している。
「真衣。じゃない?」
一瞬、警戒する目で雑誌から顔を上げた彼女。俺を認識すると、
「先輩?!」
パッと、顔が明るくなった。さっきまでの謎の色気が消え失せ、彼女は少女みたいに俺の手を取って、その場で小さく飛び跳ねていた。
「ウソ、マジで先輩?!」
俺もつられて小さく飛び跳ねた。
「そうそう、オレオレ!!え、やっぱりマジで真衣なんだ?!」
「そうそう!!私私!!」
「えっ、でも」
俺は一歩下がって、彼女の姿を上から下まで眺めた。
「なんか、変わったね」
「そ、そんなに見ないで」
彼女は恥ずかしそうに目をそらし、俺から顔を背けた。
「そ、それ!その表情!!」
俺は彼女に近づき、その目を覗き込んだ。
彼女はちらりと目を合わせ、すぐに頬を赤らめ目をそらした。
「な、何よ?」
「なんか、すごく、色っぽくなった」
「やめてよ先輩(照)、何も出ないわよ」
彼女も一歩下がって俺を見た。
「先輩も、スーツ、すごく決まってる!!」
「そ、そう?」
「高校時代よりもカッコよくなってる!!」
目の前の色っぽい美女から褒められて、俺はデレデレしてしまった。
俺たちは近くのカフェに入った。
彼女は嬉しそうな、恥ずかしそうな表情で、チラチラと俺を上目遣いで見ている。
高校時代にはなかった表情だ。あの頃の真衣はもっと幼く、それが故にストレートでわかりやすい少女だった。
いま、目の前の彼女は、とても清楚なワンピースを着て、髪も綺麗に整えて、一見するとどこにでもいそうな清潔な大人の女、という感じなのに。
内面から光り輝いている美しさ、というか、女らしさ、
もっと言えば色っぽさ、
さらに言えば、エロさ、
が隠しきれないほど、彼女は魅力的だった。
決して露出が多い服ではなく、髪もキャバ嬢みたいにくるくる巻いてるわけでもなく、メイクも派手なものではないのに、
目の表情、指の表情、そして体全体の表情で、
彼女は輝くような女らしさを放っていた。
俺は思わず聞いてしまった。
「真衣は今、何の仕事してるの?」
彼女はピンク色のバッグから名刺入れを取り出し、俺に渡した。
俺がバッグをチラ見するのを見て、彼女はそっとそのバッグを自分の足元に置いた。
「大学を卒業して、そのままこっちの企業に就職したの」
有名な、化学製品を作るメーカーだった。
「先輩、仕事は前のままですか?地元の企業に入ったって噂を聞きました」
「ああ、あの会社は…。いろいろあって。とっくにやめた」
「いろいろって?」
「いろいろは、いろいろだよ」
「女性問題?」
「う、うるさい」
さすがは元カノだ、俺の過去を見抜いているかのように言い当てる。
確かに目の前でカラフルな飲み物を飲んでいる美女は俺が知ってる真衣なんだけど。
テーブルに肘をつき、手のひらの土手部分にちょこんとアゴを乗せ、
小首を傾げるような位置で頭を固定して、
微笑みを浮かべながらずっと俺を見つめる仕草は…。
俺の過去どころか、俺の心の内側まで見通すようで、
同時に俺は、その可愛らしい仕草に胸をズキュンズキュンと射抜かれていた。
「お名刺。ちょうだいよ」
椅子の上で拗ねたように尻をピョンピョン上下させて彼女が言う。「女」と「少女」が混在してるかのようだ。
「ご、ごめん」
俺は上着の右のポケットから名刺入れを出した。製造メーカーの名刺を渡した。
「チーフディレクターって書いてある。ふーん、先輩って偉いんだぁ」
「雑用係みたいなもんだよ!!」
俺は自分の近況を話した。人事異動で1ヶ月前にこっちの支店に来たこと、引越し作業のバタバタなど。
彼女は手を叩いて笑いながら話を聞いてくれた。徐々に、高校時代に付き合っていた頃の天真爛漫な彼女が顔を出し始めていた。
でも時折…。
ドキっとするほど色っぽい仕草、色っぽい目つき、で俺の心をかき乱した。
彼女も仕事の内容を話してくれた。
「やっぱり理系女子はエロいって思われてて。職場内でセクハラまがいのがけっこう、ひどくて。だから本当は彼氏いないのに、彼氏はいるってことにしてるの」
何と!!
俺がいちばん聞きたかったことを、スルスルと彼女の方から告白してくれた!!
「えっ、えっ、えっ。彼氏、い、い、い、いないの?」
俺は冷静なふりをして聞き返した。
「うん。いない」
「…。ウソだっ!!」
「ウソじゃないよぉ。どうして?」
「だってこんなカワイイのに彼氏がいないわけがない!!」
「またそんなことばかり言って!!」
また彼女は目を伏せ、時間差でちらっと俺を上目遣いで見て。
また目を伏せた。
かっ…。
カワイイ!!
中学生なら、真衣のこの表情だけでイッちゃうんじゃないか、と思うくらいのエロカワイイ仕草だ!!
「…先輩は?」
その仕草のまま彼女が聞いてくる。ダメだ、高校生でも射精しちゃうほどのカワイすぎる上目遣いだ!!
「お、俺も今は誰もいないんだ」
じっと見つめる彼女の表情に、指先がプラスされる。
微妙に曲がった指先で自分の頬を撫で、小指の先は唇の端にかかっている。そんな上目遣いで俺を見つめ続ける。
大学生でもイッちゃう!!
俺が彼女の視線に耐えきれず目をそらした。すると彼女が
「ウソだっ!!」
とさっきの俺の口調を真似して言った。
「う、ウソじゃないって」
「だって目、そらしたじゃん!!」
「そ、そりゃそらすって。そんなに…。魅力的な目に…。見つめられたら…」
「それに先輩はかっこいいもん!!中学の時から、ずっとかっこよかったもん、中学の時から、彼女がいなかったことなんかなかったでしょ?!」
と俺たちは、知らない人が見たらバカみたいに、お互いを臆面もなく褒めあっていた。
「こ、今夜は?真衣、今日は仕事、休みなんだろ?晩メシを一緒に食おうよ」
俺は思い切って誘ってみた。すると初めて…。
彼女は悲しそうな顔をして、下を向いた。
「それが、今夜はダメなの…」
「そ、そうなんだ、そりゃ仕方ない。じゃあ明日は?仕事終わりに飲みに行こう!!」
「明日もダメなの」
「じゃあ、あさって!!」
「あさっても…」
「め、めちゃくちゃ、忙しいんだね」
「そ、そうなの。仕事終わりに、仕事がらみの勉強会に通ってるの。資格、取ろうと思って。あとヨガにも通ってて」
「あるいは、俺が嫌だから体良く断られてるか、のどっちかだな」
ちょっと拗ねて言ってみた。彼女は慌てて、
「違う違う!!本当に、今は勉強会のスケジュールとヨガのスケジュールが重なっちゃって、忙しいだけなの」
俺も大人だ、彼女を困らせることは本意ではなかった。
その日の彼女には、まだ少しだけ時間があった。俺が買い物に同行することを、彼女は許してくれた。
カワイイ帽子があったので、俺が買ってプレゼントをすると、彼女ははしゃいで喜んでくれた。
その帽子をかぶったまま、しばらくの間、俺たちは昔に戻ったように腕を組んで、街を歩いた。
駅で彼女と別れたあと、送ったLINEは、日付が変わったころ既読になり、返信が来た。
彼女のスケジュールはかなりパンパンなようで、食事に誘うのは至難の技だった。
それでも、彼女は時間がない中で、なんとか時間を捻出してくれていた。
3度目のデートは映画を予定していた。例によって映画を観た後は勉強会。あまり時間がなかった。
が、俺が映画のチケットを取るのを忘れてしまって、
彼女と会ってから、慌ててスマホで映画館のサイトにつなぎ、空席状況を確認したが、
人気作品だったので、当日はもう横並びの席が取れない盛況ぶり。
「ごめん、並びの席が取れない」
「どうする?」
「真衣と並んで見れないなら映画はやめだ」
「じゃあどうする?」
「カラオケはどう?」
「賛成!!」
時間があまりないデートプランとしては、カラオケは悪くない選択肢だった。
カラオケボックスも混んでいたが、幸いあまり待つことなく入ることができた。
頼んでいた飲み物と軽食が来て。
店員が出て行った。
そう、さっき映画がダメだった時、俺は何の邪念もなく、ただ2人でよくカラオケに行った思い出から、カラオケを提案したのだが。
ここは、2人っきりになる空間だ。
店員が出て行ったあと、俺たちはしばし…。
2人で見つめあった。
慌てて彼女が目をそらし、
「何歌おうかな!」
と本を手に取った。
俺は彼女の手から本を掴み取って。
彼女を抱き寄せた。
彼女がとっさに顔を背け。
困惑と羞恥の表情で、まつ毛を揺らしている。
顎クイで唇をたぐり寄せると。
濡れた瞳は、困惑、羞恥に加え、
甘い期待、に震えていた。
俺がキスをすると、
彼女の腕は俺の後頭部をかき抱き、
俺の唇を、彼女は自分の唇で噛んだ。
何度も何度も。
彼女の唇が、俺の唇を噛む。
甘い甘い、キスを交わした。
俺が舌を入れると、
彼女の長い舌が、絡みつくように動いて、
互いの舌の粘膜の感触で、
激しく性感が高まった。
興奮している鼻腔の呼吸音を、
彼女はわざと俺の耳に届け、
鼻腔から吐き出されるなま温かい呼気を、
彼女はわざと、俺の頬に浴びせ、
自分が性的に興奮していることを、俺に伝えている。
セーターを押し上げている胸を、ためらいながら俺は揉んだ。
彼女は何のためらいもなく、
俺の股間に手を這わせ。
すでに半勃ち状態のペニスを揉み、
サオの形状に沿って撫で、
亀頭付近を指で押し、
ファスナーに手をかけた。
「覚えてる?昔も、カラオケボックスでフェラしたことあったよね?」
ベルトも外し、ファスナーも下ろし、
トランクスから、もう勃起しているペニスを引き出し。
シコシコ。
シコシコ。
彼女は、ずっと俺を見つめている。
はっ…。
恥ずかしい!!
でも嬉しい!!
「真衣、誰かに見つかるよ」
「じゃあやらなくていいの?」
「…。いいえ、やる方向で」
彼女はまだ俺から視線を外さない。
指で、優しくペニスを触りながら、
ゆっくりと俺の股間に潜っていく。
パクっ。
彼女の口が、ペニスを捉える。
口の中はまるで、
セックスをする時の彼女の膣のように、
粘液で溢れている。
大量の唾液で満たされた口の中で、
彼女は俺のペニスを吸い、
裏スジを舐め上げ。
玉を優しく揉みながら
手でシコシコを加え、
亀頭を優しく吸引している。
俺の目を見ながら、
ときおり、髪を耳に搔き上げるその仕草さえ、
たまらなく性感を刺激した。
し、信じられない…。
一分の隙もないフェラチオだ…。
俺はアッと言う間に追い込まれた。
「ちょ、真衣、えっ、ヤバい、ヤバいよこのフェラ」
シコシコが強まり、
亀頭のバキュームも強まり、
「はぁはぁ、イキそう」
ピタッ。
手も唇も止まる。
「ま、真衣、イカせて。イキたい」
「もうちょっと我慢して、もっと素敵な射精を楽しんで」
「ダメだって、モニターに映って、店員が来ちゃうから」
「仕方ないなあ」
天国のフェラが再開された。
「ああ、ヤバいって。ヤバいって。もうイキそう。口に出していいの?」
真衣はずっと俺の目を見ながらペニスを吸っている。彼女は目で頷いた。
「ああ、イクッ」
大量の精液が、サオを脈打たせながら亀頭から噴出した!!
彼女の口の中に濁流のように流れ込む精液を、彼女はゴクゴクと喉をならせて飲み込んでいる。
飲み込みながらもサオをこする手は休まず、
亀頭を舐める舌も休めない。
俺は射精しながら、次の射精の脈動も得て、
さらに大きな精子のカタマリを、彼女の口にぶち込んだ。
し、死ぬ…。
死ぬほど気持ちいいっ!!
射精の間も、ずっと見つめあっていた俺と真衣。
目を逸らせば負けだと思っていたが、
この裏スジが痙攣するかのような射精の快感を前に、
ついに俺は目を閉じ体をそらして、強烈な性感に打ち震えた。
「ま、真衣、すごいな、お前、そんなにフェラ、上手だったっけ?」
「先輩のイクポイントを覚えていただけだよ」
真衣は舌で俺のを綺麗にしてくれたあと、トイレに行ってうがいをしていた。
彼女をイカせていない。しかしここはカラオケボックスだ、これ以上の性行為をしているとさすがにモニターで店員にバレ、退店させられてしまう。
だが俺には奥の手があった。
トイレから戻った真衣は、今度こそ何を歌うか決めて、入力している。
俺は密着するように彼女の横に座り、
乳揉みを再開した。
嫌がるそぶりではないものの、彼女は肘で俺の乳揉みを妨害した。
歌ってる彼女にキスしようとしても、彼女は笑いながら顔を背けた。
いよいよ奥の手だ。
曲がサビに差し掛かったころ。
俺はソファから滑り降り。
床の上に寝転ぶと、
彼女の黒いハイヒールを脱がした。
パンストの上から、彼女の足裏を舐め始めた。
「あっ先輩!!それダメだって!!」
マイクを通した真衣の声が、エコーがかって大音響で響く。
俺は靴下フェチで、足指フェチだ。本当は白いソックスが一番好きなのだが、ないものは仕方ない。
ストッキングの上から彼女の足裏、足指を咥えて舐め続けた。
「やめてって。それ、汚いから。恥ずかしすぎるから」
もうマイクをオフにして、彼女はソファの上で悶えている。
「これなら店員も、床に寝転んだ男が、ふざけてるみたいにしか見えないから。真衣、何か歌っておいて」
パンストの上から足指を一本ずつ、舌で舐めあげる。
「む、無理だって…やめて」
俺はパンストの先を破って、指を露出させた。
「ダメだよ!パンスト破っちゃダメ。ああっ…」
さんざんパンストの上から舐められた足指を、直接口に含んで舐め回す。
さっきやられたフェラチオの、足指バージョンだ。
真衣は左足の親指が弱い。親指と人差し指の股を粘着して舐めると、イク。
俺は右足から左足にチェンジし、パンストの先を歯で裂いて破り。
指を露出させ。
小指、薬指、の順番で、
指をフェラチオし。
指股に舌を差し込み、舐め回し。
彼女の喘ぎ声を楽しみながら。
ついに親指を、フェラチオした。
口の中で真衣の親指を
ジュポジュポ、ジュポジュポ、
音を立てて吸引しながらピストンで出し入れし、
さっきの彼女のように、彼女の目を見つめる。
彼女は恥ずかしさと気持ちよさで真っ赤になって、
抑えられない不意の喘ぎ声を防ぐため、
4本の指で口を強く覆っている。
表情は性感のあまり蕩けている。
「先輩、キタナイから。もうやめて?」
俺はすべての指股に舌を差し込み。
何度も何度も舐めあげる。
彼女はスカートの上から自分の股間を、
おそらくはクリトリスを、
自分で撫で回している。
今度は、俺を見つめていた彼女が目をそらし。
上体を反らした。
「イクッ!!」
ビクンビクン!!ビクンビクン!!
彼女はイキの痙攣に震えていた。俺はソファに戻り、まだ小さく震えている彼女を抱きしめた。
結局、歌は2〜3曲しか歌えなかった。俺たちはカラオケボックスを出ると、駅に向かった。
彼女が5時からの勉強会に出席するためだ。
「今日ぐらい、休めないの?勉強会」
「ごめんね先輩。でも私が休むとみんなに迷惑がかかるから」
「なあ真衣、疑ってるわけじゃないけど」
「な、何?」
「本当に、勉強会なのか?」
「そ、そうよ、資格を取りたいから一生懸命勉強してるの」
「本当に、誰も付き合ってるやつ、いないのか?」
「ほ、本当よ!!」
「じゃあ今日ぐらい休んでもいいだろう!!俺は今日、お前と、お前と…」
「な、なあに?」
「い、いや。別に」
「体が目当てなの?」
「な、なんだと?!」
「けっきょく先輩も、私とただエッチがしたいってだけなの?!ちょっとフェラしてあげたからって、今日ならエッチできるって思ってるの?」
「そ、そうじゃない!!」と言ったがこれは結構図星だった。
「じゃあ私の自己研磨の勉強会やヨガとか、応援してくれたっていいじゃない!!」
「応援はしてるよ!!」
「してない、いちいち嫌そうな顔してる!!」
「真衣、好きなんだ、ちゃんと、付き合いたいんだ!!」
俺は彼女の肩を掴んで言った。
真衣はこの言葉に虚を突かれ。
怒りの勢いを失った。
「付き合ってるのか付き合ってないのか、こんな中途半端な状態は嫌なんだ。お前を愛してる」
俺はまっすぐ彼女を見つめたが、彼女は顔を背けた。
でもそれは、今までのように、男心をもてあそぶために習得したかのような、
媚を含み、しなを作ったような目の背け方ではなく、
真に困惑している目の背け方だった。
「ず、ずるいわ、今、そんなこと言われても」
「結婚も。考えてるんだ」
彼女が驚いた目で俺を見た。
そしてすぐ目をそらした。
「そんな…。きゅ、急すぎる」
「俺さ、ずっと。ずっと、お前を探してた気がするんだ。覚えてる?お前、痔なのに俺がアナルに入れたいって言ったら、先っぽだけ入れさせてくれたじゃん。俺を喜ばせるために、お前はいつも体を張ってくれてた」
「俺が卒業していつの間にか俺たち、別れちゃったけど。その時は俺はなんとも思ってなかった。いろんな女と付き合って、いろんなセックスしようって思ってた。」
「女はみんな、お前と一緒だって思ってた。俺のために、体を張ってくれるって」
「でも何人かと付き合ってわかった。そこまで俺のために一生懸命になってくれる女は、俺を喜ばせるために体を張ってくれる女は、お前しかいなかったんだ」
「これは何も、エッチに限った話じゃない。ようは、それほど俺を深く愛してくれた女は、お前しかいないってことなんだ」
「付き合った全ての女を、お前と比べていた。お前ならこうしたのに、お前ならこう笑ったのにって」
「でももう後の祭りだった。お前は遠くの大学に行っちゃったって。俺と同級のNから聞いた」
「俺はずっと、お前を探していたんだ。お前本人を、って意味じゃない、お前の代わりになってくれる女を。だけどそんな女はどこにもいなかった。でも奇跡的に今、お前と再会できたなら。今度はしっかりと、お前と付き合いたいんだ」
「そ、そんなこと言われても」
「俺じゃダメなのか?」
「ダメじゃないけど」
「じゃあ行かないでくれ、今日はもっと話し合いたい」
彼女は改札の前で、ぎゅっと目を閉じ。
悩んで、悩み抜いている。
「俺に、何か隠してるのか?」
この言葉に彼女がビクッと反応した。
「隠し事が…。秘密があるのか?」
彼女の目が泳いでいる。
「隠し事はナシ!!が俺たちのルールだったじゃないか」
彼女は何かを言いたそうに口をあけ、
結局、言葉を飲み込んだ。
しばらく、また目を閉じ。
でも首を振ると、
改札を通った。
「違うの、先輩が嫌いなわけじゃない、大好きよ。それに告白してくれて嬉しかった。私も、真剣に考えてみるから。でも今は許して。今日は、行かないといけないの。わかって」
彼女はそういうと、発車の音楽が鳴っている電車に向かって小走りに駆けて行った。
電車の扉の前で彼女は振り返り、
俺を見て、
大きく手を振った。
俺は、彼女ほど、大きく手を振ることはできなかった。
なぜなら。
俺も、彼女に、大きな秘密を隠していたから。